1: 名無しさん 2016/09/10(土) 09:30:16.33 ID:CAP_USER9
ロシアW杯アジア最終予選が幕を開けた。日本は攻め立てながら、思うように得点が奪えていない。清武弘嗣、本田圭佑、香川真司らが空振りしたことが大きな話題になった。シュートは打っても枠に入らず、もしくはGKの正面でブロックされてしまう。
「決定力不足」
言い古されてきたフレーズが、またしても浮かび上がる。
では、日本サッカーにはストライカーがいないのか?
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、Jリーグで最も得点を取っている大久保嘉人、豊田陽平の二人を招集していない。それどころか、プレミアリーグ王者レスター・シティのFWである岡崎慎司をタイ戦では外している。
つまり、コンスタントに得点を叩きだしているFWを、使っていない、もしくは使い切れていない。
「ストライカー受難」
それが清武、本田、香川の身に災難として降り注ぎ、決定力不足という結論に達しているとすれば――。
ストライカーは腐った牛乳
ストライカーとは異質な存在である。ピッチ上ではどこかふてぶてしい。さもなければ、ゴールを仕留める行為は成し遂げられない、と腹を据えているようにも映る。その資質に、こんな表現が用いられる。
「Mala Leche」
スペイン語で腐った牛乳という意味だが、転じて「感じの悪い、嫌な人」という意味で使われる。私生活で付き合うとほとほと疲れるが、いわゆる“戦時”においては頼もしい味方となる。ピッチは戦場に近く、平時の状況ではない。相手が人生を懸けて必死に守る堅陣を崩せるか。そこでのせめぎ合いは熾烈で、相手を呑み込む意気の選手が求められるのだ。
「言動からなにからズケズケと厚かましいが、その分、厳しい試合では必ずやってくれると期待していた」
そう周りから言われることが多いのがズラタン・イブラヒモビッチで、Mala Lecheの典型だろう。イブラはチームメイトに呆れられても、愛される。その決定力がチームを救うからだ。また、チーム内に“悪人”がいることで、仲良し集団になることなく、ぴりっとした緊張感を保てる。その効果は覿面。イブラは過去に所属したアヤックス、インテル、バルサ、そしてパリSGと、5ヶ国のクラブでリーグタイトルを取っている。
ストライカーに属する選手たちは、"生来的な殺し屋"にも喩えられる。相手がどう思うか、味方がどう思うか、周りがどう思うか。そんな意識はない。ゴールを仕留める、それだけに集中して"残虐"に引き金を引ける。だから「冷静に蹴り込め!」そんな指導は役に立たない。ストライカーはストライカーとして生まれ、その才能を磨くしかないのである。
逆説すれば、ストライカーとして生まれていない者はストライカーになれない。得点そのものは、ストライカーでなくとも取れる。しかしゴールを託されて挑む、純粋戦士にはなれないのだ。
異質であるストライカーは、集団の中では浮いた存在にもなる。連係面でズレが出る。ボールスキルだけを考えれば、不器用な場合も少なくない。しかし彼らは、ゴールのためのパスコースを適切なタイミングでのランニングで見つけ創り出せ、なにより足下に入ったボールをネットに叩き込める。それは彼らだけの特異な才能なのだ。
「ゼロトップは一つのトレンドだろう。でも自分はトップ下のパサーとして、ストライカーがいてくれる方がありがたかった。彼らはパスの選択肢を与えてくれるし、それをゴールに入れてもくれる。センターバックと駆け引きし、緊張を与え、疲弊させられるし」
そう語っていたのは、昨シーズンで引退した元スペイン代表ファンタジスタ、ファン・カルロス・バレロンである。バレロンはスーペル・デポル時代にリーガエスパニョーラ王者に輝き、欧州チャンピオンズリーグではマンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、ユベントス、ACミラン、バイエルンなど欧州の強豪を撃破する立役者になった。そこで頼りにしたのはマカイ、トリスタンというMala Lecheの権化のようなFWだったという。
偏屈なストライカーほど、頼りになるということか。
つづく
小宮良之 | スポーツライター2016年9月8日 11時52分配信
http://bylines.news.yahoo.co.jp/komiyayoshiyuki/20160908-00061978/
「決定力不足」
言い古されてきたフレーズが、またしても浮かび上がる。
では、日本サッカーにはストライカーがいないのか?
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、Jリーグで最も得点を取っている大久保嘉人、豊田陽平の二人を招集していない。それどころか、プレミアリーグ王者レスター・シティのFWである岡崎慎司をタイ戦では外している。
つまり、コンスタントに得点を叩きだしているFWを、使っていない、もしくは使い切れていない。
「ストライカー受難」
それが清武、本田、香川の身に災難として降り注ぎ、決定力不足という結論に達しているとすれば――。
ストライカーは腐った牛乳
ストライカーとは異質な存在である。ピッチ上ではどこかふてぶてしい。さもなければ、ゴールを仕留める行為は成し遂げられない、と腹を据えているようにも映る。その資質に、こんな表現が用いられる。
「Mala Leche」
スペイン語で腐った牛乳という意味だが、転じて「感じの悪い、嫌な人」という意味で使われる。私生活で付き合うとほとほと疲れるが、いわゆる“戦時”においては頼もしい味方となる。ピッチは戦場に近く、平時の状況ではない。相手が人生を懸けて必死に守る堅陣を崩せるか。そこでのせめぎ合いは熾烈で、相手を呑み込む意気の選手が求められるのだ。
「言動からなにからズケズケと厚かましいが、その分、厳しい試合では必ずやってくれると期待していた」
そう周りから言われることが多いのがズラタン・イブラヒモビッチで、Mala Lecheの典型だろう。イブラはチームメイトに呆れられても、愛される。その決定力がチームを救うからだ。また、チーム内に“悪人”がいることで、仲良し集団になることなく、ぴりっとした緊張感を保てる。その効果は覿面。イブラは過去に所属したアヤックス、インテル、バルサ、そしてパリSGと、5ヶ国のクラブでリーグタイトルを取っている。
ストライカーに属する選手たちは、"生来的な殺し屋"にも喩えられる。相手がどう思うか、味方がどう思うか、周りがどう思うか。そんな意識はない。ゴールを仕留める、それだけに集中して"残虐"に引き金を引ける。だから「冷静に蹴り込め!」そんな指導は役に立たない。ストライカーはストライカーとして生まれ、その才能を磨くしかないのである。
逆説すれば、ストライカーとして生まれていない者はストライカーになれない。得点そのものは、ストライカーでなくとも取れる。しかしゴールを託されて挑む、純粋戦士にはなれないのだ。
異質であるストライカーは、集団の中では浮いた存在にもなる。連係面でズレが出る。ボールスキルだけを考えれば、不器用な場合も少なくない。しかし彼らは、ゴールのためのパスコースを適切なタイミングでのランニングで見つけ創り出せ、なにより足下に入ったボールをネットに叩き込める。それは彼らだけの特異な才能なのだ。
「ゼロトップは一つのトレンドだろう。でも自分はトップ下のパサーとして、ストライカーがいてくれる方がありがたかった。彼らはパスの選択肢を与えてくれるし、それをゴールに入れてもくれる。センターバックと駆け引きし、緊張を与え、疲弊させられるし」
そう語っていたのは、昨シーズンで引退した元スペイン代表ファンタジスタ、ファン・カルロス・バレロンである。バレロンはスーペル・デポル時代にリーガエスパニョーラ王者に輝き、欧州チャンピオンズリーグではマンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、ユベントス、ACミラン、バイエルンなど欧州の強豪を撃破する立役者になった。そこで頼りにしたのはマカイ、トリスタンというMala Lecheの権化のようなFWだったという。
偏屈なストライカーほど、頼りになるということか。
つづく
小宮良之 | スポーツライター2016年9月8日 11時52分配信
http://bylines.news.yahoo.co.jp/komiyayoshiyuki/20160908-00061978/