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今や日本人選手の欧州移籍は一流選手になるための通過儀礼となっている。2022/23シーズンも、実に多くのサムライが海外への初移籍を決断した。今回は、そんな欧州移籍1年目となった主な日本人選手10人をピックアップし、パフォーマンスをA〜Cの3段階で査定していく。(セカンドチーム登録選手は対象外。成績は『transfermarkt』を参照)

MF:三竿健斗(みさお・けんと)

生年月日:1996年4月16日
所属クラブ:サンタ・クララ(ポルトガル)
22/23リーグ戦成績:17試合0得点0アシスト
シーズン評価:C

 東京ヴェルディの下部組織出身である三竿健斗は、2016年に加入した鹿島アントラーズで大きく成長。その翌年にヴァヒド・ハリルホジッチ監督の元で日本代表デビューを果たし、2020年には伝統ある鹿島において史上最年少でキャプテンを託されている。まさに“常勝軍団の顔”となった。

 そんな三竿は今年の冬、約7年間を過ごしたクラブを離れ、守田英正の抜けたサンタ・クララに移籍することになった。昨季の鹿島ではセンターバック起用がメインだったが、ポルトガルでは本職のボランチで出場機会を確保。途中で監督交代がありながらも、新天地デビューとなった第16節のポルティモネンセ戦から第27節のヴィゼラ戦まで、先発を外れたのはわずか1回だった。

 しかし、三竿は先発したリーグ戦でたったの1度も勝利に貢献することができず。それも影響したのか、残留に向けて重要な最後の7試合は全て先発外となり、残酷なことにチームはその間に2勝を挙げている。結果的にサンタ・クララは最下位での2部降格が決まるなど、三竿は新戦力としてチームに多くのものを与えられなかった。

MF:相馬勇紀(そうま・ゆうき)

生年月日:1997年2月25日
所属クラブ:カーザ・ピア(ポルトガル)
22/23リーグ戦成績:18試合2得点1アシスト
シーズン評価:B
 
 東京五輪(東京オリンピック)、カタールワールドカップと、相馬勇紀は森保一監督の元で2つの大舞台に出場し、世界を経験した。それが刺激になったか、カタールW杯後に初の海外移籍を決断。今季が1部昇格1年目だったポルトガルのカーザ・ピアが新天地となった。

 相馬はデビュー2試合目で1得点1アシストをマークとこれ以上ないスタートを切った。その後はゴールとアシストともに伸びなかったが、自慢の走力と運動量を武器に、主に右サイドのレギュラーとして奮闘。1試合あたりのキーパス数(1.1本)でチームトップに立ち、平均レーティングでは同3位につける(いずれもデータサイト『Sofa Score』を参照)など、クラブの残留に大きく貢献した。

 カーザ・ピアを率いるフィリペ・マルティンス監督からもかなり高く評価されている。ポルトガルメディア『Record』によると、同指揮官は最終節のジル・ヴィセンテ戦を前にして「何も起こらない限り、彼はカーザ・ピアの来季の計画の一部である」とコメントを残していたとのこと。さらに「嬉しい驚きだった」「来季も彼を頼りにしたい」とも話すなど、信頼の厚さは絶大のようだ。

DF:小林友希(こばやし・ゆうき)

生年月日:2000年7月18日
所属クラブ:セルティック(スコットランド)
22/23リーグ戦成績:5試合0得点0アシスト
シーズン評価:C
 
 若きセンターバックの小林友希は、今年1月にヴィッセル神戸からスコットランドの名門セルティックに活躍の場を移している。しかし、1年目は我慢の年となった。Jリーグで指揮を執ったこともあって日本人選手を高く評価しているアンジェ・ポステコグルー監督の元、全体的にはあまり試合に絡むことができなかった。

 チームが早々に優勝を決めたことで、リーグ終盤戦は出場のチャンスを得ていたが、第35節レンジャーズ戦では3失点、第37節ハイバーニアン戦では4失点と、全てが個人の責任でないとはいえ、DFとしては屈辱的な結果を味わっている。とくに、セルティックの宿敵であるレンジャーズ戦でのパフォーマンスは多くの現地メディアから酷評されてしまった。

 小林は格下相手には安定したプレーを披露していたものの、レンジャーズ等、少しでも力のあるチームとマッチアップした際に独特なフィジカルに苦戦し、消極的な対応を見せてしまうことが多かった。しかし、まだ欧州に飛んでから半年。この経験を来季以降の成長へと活かしてほしいところだ。

MF:松尾佑介(まつお・ゆうすけ)

生年月日:1997年7月23日
所属クラブ:ウェステルロー(ベルギー)
22/23リーグ戦成績:14試合0得点2アシスト
シーズン評価:B
 
 昨年にアカデミー時代を過ごした浦和レッズへ復帰した松尾佑介は、チームの中心的存在だった。J1リーグでは25試合で4得点4アシスト、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)では9試合で6得点とコンスタントに結果を残した。そんな活躍が評価され、今年1月にベルギーのウェステルローに移籍。同時期にバーンリーに引き抜かれた点取り屋、ライル・フォスターの穴を埋める活躍を期待された。

 ヨーロッパでのスタートは決して順調ではなかった。第26節シント=トロイデン戦で相手が退場となり、押し込む時間が大半といった中でもピッチに立つチャンスを貰えないなど、加入当初はベンチスタートがほとんど。途中から出場したとしても、プレータイムは20分にも満たなかった。

 それでも、第30節オーステンデ戦で移籍後初先発を飾ると、以降はスタメンに定着。最終的にゴールを奪うことができず、アシストも2つに留まったが、左右両サイドや2トップの一角など、様々なポジションで指揮官の期待に応えるべく奮闘していた。周囲を驚かせたわけではないが、来季以降に繋がるようなシーズンになったと言えるのではないか。

FW:上田綺世(うえだ・あやせ)

生年月日:1998年8月28日
所属クラブ:セルクル・ブルッヘ(ベルギー)
22/23リーグ戦成績:40試合22得点2アシスト
シーズン評価:A
 
 今季、欧州初挑戦を果たした日本人選手の中で最も輝きを放ったのは上田綺世だろう。昨年夏に鹿島アントラーズからセルクル・ブルッヘに渡って以降しばらくは結果を残せずに苦しんでいたが、とくに年明けから一気にギアを上げ、最後にはヨーロッパ中にその名を轟かせることになった。

 上田にとって大きな転機となったのが、ドミニク・タールハンマーからミロン・ムスリッチに指揮官が交代したことだ。前者の元ではわずか2得点だったが、後者の元ではCFより一列後ろのポジションが一時メインになったことも功を奏して、天性の得点力が開花した。終盤には最前線に戻ったものの、自信を深め、チームメイトとの連係も確立していた上田は得点ペースを落とすことがなかった。

 最終的に上田はリーグ戦22ゴールをゲット。ウーゴ・カイパース(ヘント/27得点)に敗れ、得点王には届かなかったものの、ベルギーリーグにおける1シーズンの日本人最多得点記録を塗り替えた。何より凄いのは欧州1年目、それも強豪ではないS・ブルッヘでこれだけの数字を残したということ。シーズン評価は文句なしのAだ。

MF:田中聡(たなか・さとし)

生年月日:2002年8月13日
所属クラブ:コルトレイク(ベルギー)
22/23リーグ戦成績:15試合0得点0アシスト
シーズン評価:C
 
 湘南ベルマーレ下部組織出身の田中聡は、2種登録選手ながら2020シーズンのJ1で17試合に出場。その翌年にトップチーム昇格を果たし、不動のレギュラーとなった。同じ湘南出身、またデュエルに強くボランチと3バックの一角でプレー可能というスタイルもあって、遠藤航の「後継者」とも称されるようになった。

 その田中は更なる成長を求め、昨年夏にベルギーのコルトレイクに渡った。加入後すぐに定位置を掴むなどスタートは順調かに思われたが、第17節のヘント戦で0-4と大敗し、田中を重用していたアドナン・クストビッチ監督が解任されると状況が暗転。後任のベルント・シュトルク監督の元で序列が大幅に下がり、先発起用はわずか2回に留まってしまった。

 また、今季は細かな怪我にも泣かされるなど、リーグ戦出場は15試合でストップ。すでに期限付き移籍期間の満了により、湘南に復帰することが発表されている。初の欧州挑戦が苦い結末となってしまった田中だが、再び日本で輝きを取り戻すことができるだろうか。

DF:岩田智輝(いわた・ともき)

生年月日:1997年4月7日
所属クラブ:セルティック(スコットランド)
22/23リーグ戦成績:13試合0得点1アシスト
シーズン評価:C
 
 2022シーズン、横浜F・マリノスのJ1優勝に大きく貢献した岩田智輝は、JリーグMVPに選出された。その後、マリノス1年目に指導を受けていたアンジェ・ポステコグルー監督率いるスコットランドの名門セルティックに満を持して移籍を果たしている。

 岩田は加入当初こそ出場機会に恵まれなかったが、終盤戦ではコンスタントにピッチに立った。マリノス時代同様、ボランチとセンターバックで併用されている。しかし、パフォーマンス自体には賛否両論あり、前者での出場時はアシストという結果を残すこともあったが、カラム・マクレガーなどの主力からポジションを奪うほどのインパクトまではなかった。

 CBでの出場時は厳しい意見が多かった。身長176cmと大柄ではない岩田は、Jリーグとはまた一味違ったフィジカル強度やプレーの荒さに少し苦労している。実際に現地の記者も「早急に成長する必要がある」と岩田がCBをこなすにはまだまだ不十分と説明していた。まだヨーロッパ挑戦は始まったばかりで、試行錯誤の1年目になったと言えるかもしれない。

DF:小川諒也(おがわ・りょうや)

生年月日:1996年11月24日
所属クラブ:ヴィトーリア・ギマランイス(ポルトガル)
22/23リーグ戦成績:6試合0得点0アシスト
シーズン評価:C
 
 FC東京で頭角を現した小川諒也は、一昨年に日本代表デビュー。同じFC東京出身である長友佑都の後継者として期待されていた。しかし、今やその期待は薄れたと言わざるを得ない。昨年夏にレンタルで加入したヴィトーリア・ギマランイスで過ごした今季は、最低最悪なものとなった。

 小川は今季リーグ開幕前に行われたヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)予選の3試合でスタメン出場を果たすも、ノーインパクト。そしてリーグ開幕3試合でベンチスタートを余儀なくされると、その後に与えられたわずかな出場機会も無駄にしてしまい、気づけばアフォンソ・フレイタス、エルデル・サの年下2人に劣る形で、左サイドの3番手となってしまった。

 冬には早くも放出候補に挙がった小川。結局残留となったものの、12月〜1月にかけてはBチームでのプレーを強いられており、年明け以降はトップチームでの公式戦出場が「0」と、まさに“飼い殺し状態”となっていた。ポルトガルメディアによると、当然ながらヴィトーリアは買い取りオプションの行使を考えていないようで、小川は日本に戻ってくることになりそうだ。

FW:小田裕太郎(おだ・ゆうたろう)

生年月日:2001年8月12日
所属クラブ:ハーツ(スコットランド)
22/23リーグ戦成績:12試合1得点0アシスト
シーズン評価:B
 
 パリ五輪(パリ・オリンピック)世代の小田裕太郎は、2020年にヴィッセル神戸のトップチームに昇格。絶対的なレギュラーだったわけではないが、公式戦60試合に出場した。そして今年1月、更なるレベルアップを求めてスコットランドのハーツに完全移籍で加入している。

 爆発的なスピードが特徴で「和製エムバペ」とも称される小田は当初、異国の地で苦労した。デビュー2戦目で初先発を飾るも屈辱的な45分間での交代となり、その後は怪我も負ってしまった。第22節のアバディーン戦から第32節ハイバーニアン戦までの12試合でスタメンに名を連ねたのはわずか1回で、途中出場してもほとんどが10分程度と、存在感は希薄だった。

 それでも第33節ロス・カウンティ戦で移籍後初のフル出場を果たすと、その後のリーグ戦5試合すべてで先発入り。最終節のハイバーニアン戦では移籍後初ゴールを叩き込んでチームに貴重な勝ち点1をもたらし、来季のヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)予選2回戦出場へと導くなど、最後の最後で大仕事を果たしてみせた。

MF:鈴木唯人(すずき・ゆいと)

生年月日:2001年10月25日
所属クラブ:ストラスブール(フランス)
22/23リーグ戦成績:3試合1得点0アシスト
シーズン評価:C
 
 欧州5大リーグの1つであるフランスリーグへの挑戦は、時期尚早だったのかもしれない。清水エスパルスが生んだ逸材で、パリ五輪(パリオリンピック)世代の中心的存在でもある鈴木唯人は、今年の1月に川島永嗣が所属するストラスブールにレンタル加入したが、不完全燃焼となった。

 鈴木は移籍直後に行われたリーグ・アン第21節、スタッド・レンヌ戦でさっそくベンチ入りを果たしたが、そこから新天地デビューを飾るまでに2ヶ月以上も待たなければならなかった。それでも、念願のリーグ初出場となった第31節のアジャクシオ戦では、華麗なドリブルから思い切り左足を振り抜いてゴール。限られた時間の中でインパクトを残した。

 しかし、その衝撃弾で立場に変化が芽生えることはなかった。アジャクシオ戦後に出場したのは第33節のリヨン戦と最終節のロリアン戦のみで、いずれも15分未満のプレータイム。結果、鈴木の1年目の成績は3試合出場、合計プレー時間はわずか33分に留まっている。フランスメディアによると、ストラスブールが買い取りオプションを行使する可能性は低いとのことだ。



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