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 常にチームの強さを維持することは容易ではなく、ほんの数シーズン前までタイトル争いに絡んでいた名門クラブでも時には失速する。今回は、今季さまざまな要因があってどん底に沈む名門クラブを紹介する(リーグ順位、成績は2023年5月30日現在)。

バレンシア(スペイン)

リーグ順位:15位
今季リーグ成績:11勝8分け18敗

 1999/2000シーズンから2年連続でチャンピオンズリーグ(CL)決勝を戦ったバレンシアだが、今は2部降格の危機に瀕している。ラ・リーガ6度優勝の名門は、厳しい状態にある。

 バレンシアの転落は今に始まったことではなく、財政難の影響でしばらく低迷が続いている。2014年にシンガポールの実業家であるピーター・リム氏がクラブを買収してからは迷走が続き、理不尽ともとれる監督交代や一貫性のない選手補強が繰り返され、今季はいよいよ降格の危機というところまで達した。

 現在のチーム力は、ラ・リーガで残留を争うようなものではない。実際、DFホセ・ガヤやFWエディンソン・カバーニといった有力選手が在籍しており、『transfermarkt』のチーム全体の総市場価値はリーグで8番目。あくまで一つの指標でしかないとしても、残留争いをするような戦力でないことは明らかだ。

 近年はバレンシア買収の話が何度か持ち上がっているものの、いずれも立ち消えとなっている。それだけ再建が難しい状態なのかもしれない。一貫性のないプロジェクトで結果が出ず、ヨーロッパカップ戦出場権を逃した経済的な損失を補填するために主力を手放すことの繰り返し。負のサイクルをなんとか止めたいところだ。

アンデルレヒト(ベルギー)

リーグ順位:11位
今季リーグ成績:13勝7分け14敗
 
 ベルギーリーグ34回の優勝を誇るアンデルレヒトは同国きっての名門クラブで、チャンピオンズリーグの常連。ヴァンサン・コンパニやロメル・ルカクといった、世界的な選手も輩出してきた。しかし、今季は11位でレギュラーシーズンを終えた。常にベルギーのサッカーをリードしてきたアンデルレヒトが、最後にリーグ戦を2ケタ順位で終えたのは1936/37シーズンのことであり、86年ぶりの異常事態だ。

 2017/18シーズン以降はタイトルを獲れてないアンデルレヒト。少し前から苦しんでいたのは確かだとしても、過去2シーズンは3位で、優勝から遠く離れていたわけではない。

 だが、今季は序盤から低迷した。戦力としてはリーグ最強とは言えないまでも上位に入るだけの力はそろっていたが、ヴァンサン・コンパニ監督のあとを引き継いだフェリス・マッズ監督のもとでスタートダッシュに失敗。開幕4試合までに3勝したところまでは良かったものの、その後はなかなか勝てず、第14節終了後に解任となった。その後、ブライアン・リーマー監督がやってきたものの、最後までかみ合わず、苦しいシーズンを過ごしている。

 シーズンを象徴しているのが、マッズ監督が最後に指揮を執った第14節のスタンダール・リエージュ戦だ。不振にごうを煮やしたサポーターが発煙筒を投げ込むなど大暴れし、試合は後半途中で中断。後日、0-5でアンデルレヒトの敗戦扱いになることが決まっている。

 優勝を義務づけられたクラブでは、少しの不振が過度な緊張を生み、大きな問題に発展することも。まずは狂った歯車を戻すことが大事になりそうだ。

レスター・シティ(イングランド)

リーグ順位:18位
今季リーグ成績:9勝7分け22敗
 
 2015/16シーズンの奇跡のプレミアリーグ制覇から7年。レスター・シティは2部降格が決まった。

 元サッカー日本代表のFW岡崎慎司らを擁したレスターは、2部からプレミアリーグに昇格した2シーズン目にミラクルを起こした。MFエンゴロ・カンテやFWリヤド・マフレズといった主力は引き抜かれる運命にあったが、それでも的確な補強で反動を抑えることに成功。優勝した翌シーズンは、不慣れなチャンピオンズリーグ出場による負担も重く12位でシーズンを終えたが、2019/20シーズンから2年連続でプレミアリーグ5位フィニッシュ。2021年はFAカップで、2022年はリーグカップでそれぞれ優勝し、クラブとしての格を着々と高めている印象だった。

 だが、昨年夏の移籍市場はまずかった。ベテランGKカスパー・シュマイケルが去り、DFウェズレイ・フォファナがチェルシーへ移籍。守備の要だった2人を手放したのにもかかわらず、その代役を連れてこられなかった。結果論だとしても、これが一気にクラブの崩壊につながった感は否めない。

 もちろん、降格に至るまでにはその他の要因も絡んでいるが、一度歯車が狂うと立て直しは難しいものだ。

ヘルタ・ベルリン(ドイツ)

リーグ順位:18位
今季リーグ成績:7勝8分け19敗
 
 1930年代に2度のリーグ優勝を果たしたヘルタ・ベルリンは、今季のブンデスリーガを最下位で終え、再び2部に戻ることになった。

 古豪ヘルタは、2012/13シーズンに2部で優勝して1部に昇格。2019年にドイツの有名な起業家であるラース・ウィンドホルスト氏がオーナーとなり、2022年までに3億7400万ユーロ(約527億円)をクラブに投入して復権を目指した。古豪をヨーロッパの大会に挑むようなクラブに変えようと意欲的だったが、ヘルタは2ケタ順位に低迷を続け、今季はいよいよ最下位でシーズンを終えている。

 ヘルタの問題として話題になっていたのは、内部のトラブル。オーナー側とクラブ幹部で意見が合わないことは多かったという。2019年11月末に招へいしたユルゲン・クリンスマン監督は翌年2月に辞任するなど、方向性の違いは明らかだったという。

 今季のヘルタも11ゴールを挙げたFWドディ・ルケバキオというタレントはいるものの、どう活かすのかがはっきりせず、最後までチームとしてのスタイルが確立できなかった印象。クラブとしても、チームとしても、どこへ向かうかが定まっていない様子だった。

 今年3月にウィンドホルスト氏は777パートナーズという会社に株式を譲渡。再建に動き出したところ。改めて名門復活に向けてゼロからリスタートすることになった。

チェルシー(イングランド)

リーグ順位:12位
今季リーグ成績:11勝11分け16敗
 
 トッド・ベーリー新オーナーの下で新たなスタートを切ったチェルシーは、悲惨な状態に陥っている。

 開幕早々トーマス・トゥヘル監督を解任したチェルシーは、グレアム・ポッター監督も4月に解任。暫定監督としてレジェンドのフランク・ランパードにシーズン最後までの処理を任せる形でプレミアリーグを12位で終えている。

 補強は積極的だった。昨年夏にDFウェズレイ・フォファナ、マルク・ククレジャ、カリドゥ・クリバリ、FWラヒーム・スターリング、ピエール=エメリク・オーバメヤンといった選手を獲得すると、冬にはMFエンソ・フェルナンデス、FWミハイロ・ムドリク、ジョアン・フェリックスらを獲得。総額6億1149万ユーロ(約856億円/『transfermarkt』)を投じたが、全く結果が出なかった。

 何が悪かったのかと問われれば、何もかも悪かったと言うしかない今季のチェルシー。どれほど豪華なメンバーがそろっていても、チームとして成立するかは別問題であることを全世界に証明してしまった。

 新シーズンからマウリシオ・ポチェッティーノ監督が指揮を執ることが決まったが、うまく立て直せるだろうか。



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