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両親の判断で切除手術も小学生で違和感
1年目から出場機会をつかむ高吉(ギラヴァンツ北九州提供)

​ スマートフォンの振動は一日中、鳴りやむことはなかった。今季からサッカーJ3・ギラヴァンツ北九州に加入した高吉正真(22)はリーグ開幕直前の3月2日、意を決して自身のツイッターを更新した。


 「私は先天性多合趾症(センテンセイタゴウシショウ)という生まれつき、足の指が6本ありました」(原文まま)

 その影響でスパイクが合わず、痛みを抱えてプレーしていることも記した。もしかしたら誰も反応してくれないかも―。そんな心配は杞憂(きゆう)に終わり、すぐにメッセージが相次いだ。「いいスパイクを紹介します」「骨格を変えてみては」「力にはなれないけど、拡散させてもらいます」。50万を超える閲覧が記録され、大きな反響を呼んだ。

 「こんなに助けてくれるんだ。日本人ってなんて温かいんだろう」

 高吉の胸はじんわりと熱くなった。

 出生時、両足の薬指の根元から小指の間にかけて指が生えていた。両親の判断で切除する手術を受けた。高吉がそのことを知ったのは思春期を迎えてからだった。幼稚園の年中からサッカーを始め、楽しくボールを追いかけた。

 最初の違和感は小学生の頃だった。親指が少し膨れ、小指がやや外向きに「く」の字のように曲がっていることもあり、市販の靴が合わない。スポーツメーカーの先端が細くてかっこいいモデルのスパイクは履けなかった。たとえ履いても破れるため、試合では相手選手に足元を見られて驚かれた。指がフィットしないと痛みを感じることもあり、サイズの大きなスパイクを履いた。5本指や足袋型の靴下も試した。

 試行錯誤しながらも、J1川崎の下部組織から桐蔭横浜大で活躍し、力強いボール奪取力などが評価されて北九州へ加入した。プロになった今こそ、スパイクの悩みを解決してプレーに集中したいとの思いからSNSを活用した。「アマ時代に発信しても、誰にも伝わらないと思った。プロになったらやろうと決めていた」。覚悟を持って公表した。

「自分は足の指の本数が多かっただけ」

 数え切れないメッセージの中に、川崎の下部組織時代の先輩から連絡があった。紹介されたのは、スポーツ選手のシューズやインソールを製造するメーカー「BMZ」の担当者だった。積年の悩みを打ち明けると、特注品の製造を提案された。オフを利用し、群馬県内の同社を訪れ、足型を取った。足の構造も細かく説明し、データで分析したうえで、オーダーメードのスパイクを製作することが決まった。完成品は、まもなく手に届く。

 ルーキーながら開幕戦でスタメンの座を勝ち取り、ここまでリーグ戦9試合に出場した(5月26日現在)。その姿を家族も喜んでいる。北九州とは離れた神奈川県出身ながら、試合を見た両親からはLINE(ライン)でメッセージが届く。祖母は、Jリーグの試合を放映するDAZN(ダゾーン)に今年から加入。毎試合、高吉のプレーを楽しみにしているという。

 「丈夫な体に産んでくれた両親には感謝している。自分は足の指の本数が多かっただけ。もしかしたら周囲にはハンディと思われるかもしれないけど、プロになりたい気持ちは強かった。スパイクや普段の靴を選ぶ時も、家族が相談に乗ってくれた。これからも頑張っているところを見てもらいたい」

 北九州でさらなる成長を目指す高吉は、将来は日本代表の遠藤航(ドイツ・シュツットガルト)のような攻守に力強いボランチとなり、W杯で活躍することが目標だ。もう一つの夢は、同じように足の悩みを抱えて苦しむ人を助けるスパイクづくりに携わること。「まだまだ先の話ですけど」。勇気を持って投じた一石に対する大きな反響への感謝とともに、22歳のサッカー人生は始まったばかりだ。(松田達也)

西日本スポーツ



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