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【J番記者コラム】長期間になったACL、チーム変化の過程でつながれた各々の思い
3回目のアジア制覇を成し遂げた浦和【写真:徳原隆元】

 浦和レッズは5月6日にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝第2戦、アル・ヒラル(サウジアラビア)との決戦に1-0で勝利し、3回目のアジア制覇を成し遂げた。異例の長期間になった大会は、さまざまな思いをつなぐ結果になった。


 今大会は新型コロナウイルスの影響もあり、グループステージと決勝トーナメントはそれぞれ集中開催だった。さらに、アジアサッカー連盟(AFC)が全体的にクラブチームの大会方式やシーズン制を見直していくなかで、ACLは23年からは秋春制になる。そのため、この22年大会はそのつなぎ目の大会として、春秋制のJリーグクラブにとっては2シーズンにまたがって開催される大会になった。

 すべて中2日で6試合を行うグループステージのためにタイのブリーラムに乗り込んだ浦和の初戦は昨年4月15日のライオンシティ・セーラーズ(シンガポール)戦。4-1で勝利した試合だが、得点者の名前はFWキャスパー・ユンカー、FW江坂任、MFダヴィド・モーベルグ、MF松尾佑介というもの。今季のチームに残っているのはモーベルグのみで、彼もまた外国人枠の関係もあり決勝は2試合ともメンバー外だった。2シーズンにまたがって1年を越えた大会は、こんなことも巻き起こした。それこそ、優勝時のトロフィーリフトをGK西川周作とDF酒井宏樹が2人で行ったのも、昨季のキャプテンが西川で今季は酒井だからだ。

 8月に埼玉で行われた決勝トーナメントでは、松尾とモーベルグはスタメンとしてチームを牽引。ユンカーや江坂は途中出場の切り札としてチームを支えた。準決勝の全北現代(韓国)戦では、延長後半残り4分で勝ち越しゴールを許す非常事態だったが、終了間際にユンカーがゴール前のこぼれ球を蹴り込んだことで可能性がつながった。浦和はPK戦で突破を決めるが、最後にキックを成功させて勝利を決めたのは江坂だった。

 そもそも、このACLに出場できたのは21年の天皇杯優勝によるものだった。その初戦は21年6月だったので、もう2年近く前のことになる。決勝戦では江坂が先制ゴールを奪ったが追い付かれる。しかし終了間際、そのシーズンでの退団が決まっていたDF槙野智章が決勝ゴールを奪った。そして、長年チームを支えたMF阿部勇樹は引退した。

 これだけ長く続いた戦いは、選手たちにとっても簡単ではなかった。21年にFC琉球から加入して今や中心選手に成長したMF小泉佳穂は「本当に天皇杯からで、とにかくACLは、すごく長くて。道中はゴールが見えない戦いだったので、テンションを保ちながら戦うのはすごく難しかった」と、その心境を吐露した。それでも「浦和のサポーターの方たちと、浦和に長年いる(西川)周作さん、(興梠)慎三さん、ユースで育っている関根(貴大)くんとか(伊藤)敦樹とか、そういう長い間で浦和を背負ってきて、すごくこのタイトルに懸ける思いが人一倍強い人たちのエネルギーに全員が巻きこまれて戦えた」と、このアジアの戦いにこだわりを持って戦ってきた浦和を知る人々の存在の大きさを話した。

ベテラン興梠がアジア制覇に感慨「2019年で悔しい思いをしてるので…」
 興梠は、リカルド・ロドリゲス監督の就任初年度だった21年は前年の最終盤に負傷したこともあり出場機会を減らした。エースと呼ばれてきた男が、タイトルの懸かった天皇杯決勝でメンバー外だった。さらに、昨季は北海道コンサドーレ札幌へと期限付き移籍。そのため、このACL優勝は決勝だけ戻ってきたような感覚があるのを隠さず、だからこそつながれた思いと仲間に感謝していた。

「槙野が天皇杯でゴールをしてACL出場権を取って、去年いた(江坂)任、ユンカーが予選で活躍をして、決勝まで導いてくれた。それで、監督がリカルドで。いろんな人の気持ちを背負った。会場に槙野も阿部ちゃんもいたので、その仲間たちは2019年で悔しい思いをしてるので、その人のためにもリベンジしたかった」

 槙野氏は昨季限りで引退し、決勝戦(第2戦)にはスポーツチャンネル「DAZN」の中継解説として来場していた。現在は浦和ユースチームのコーチを務める阿部氏は、試合前にトロフィーを場内にお披露目するエスコート役を務めた。彼らとは、長らく浦和で共闘しただけでなく19年決勝でアル・ヒラルに完敗した悔しさも共有していた。そして、ロドリゲス前監督は自身のSNSでこの試合の観戦に訪れていたことを投稿し、喜びのメッセージを寄せた。今は同じJ1のライバルである名古屋グランパスに期限付き移籍中のユンカーも、浦和の優勝を祝福した。

 プロのサッカークラブである以上、選手は絶え間なく入れ替わっていくものだ。それでも、同じ時間を共有して目の前の試合に全力を尽くした絆は特別なもの。異例のシーズンまたぎとなった大会だが、だからこそ思いがつながる尊さも感じられる優勝になった。

轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada



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