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 2003-04シーズン以来となる19年ぶりのプレミアリーグ制覇に邁進していたアーセナルだが、ここにきて3試合連続ドローと急失速。シーズン佳境を迎え、ノースロンドンには暗雲が垂れ込めている。

 アーセナルは今月21日に行われたプレミアリーグ第32節のサウサンプトン戦で立ち上がりに失点を喫すると、反撃を試みたがその後も失点を重ねることに。終了間際の2ゴールで何とか追いついたが3-3のドロー決着。最下位のチームを相手にホームで勝ち点を取りこぼすことになった。それ以前の2試合では2点のリードを奪いながら追いつかれており、これで3試合連続の引き分け。3試合で勝ち点3しか積み重ねることができず、2位マンチェスター・Cとの差は「5ポイント」まで縮まった。マンチェスター・Cの方が2試合消化少ないことを考えると、立場的は逆転したとさえ言えるだろう。

 果たして、今季ここまであれほど順調だったアーセナルに何が起きてしまったのだろうか?

■守備の亀裂
 失速の最大の原因は守備の脆さにあるだろう。リーグ戦最近3試合で「7得点・7失点」。勝ち切れていない原因は失点の多さにあるのだ。今月9日のアンフィールドでのリヴァプール戦では早々に2点をリードしながら最終的に追いつかれた。苦手とするアンフィールドで強力なリヴァプールの攻撃陣を相手に2失点を喫するのは仕方ないのかもしれない。しかし、その後の2試合は下位に低迷するチームに複数失点を喫しているのだ。

 今月16日のウェストハム戦でも前半10分で2点のリードを奪いながら、それまで今季6回しか複数得点のなかったウェストハムに2ゴールを許した。そして前述のサウサンプトン戦では3失点。土壇場で何とか追いついたが、サウサンプトンを相手にホームでのリーグ戦であわや36年ぶりの敗戦を喫しかけたのだ。ちなみに、最下位のチーム(サウサンプトン)が首位(アーセナル)を相手に3得点するのはプレミアリーグ史上初の番狂わせだったという。

 思い返せば、1月15日の時点でアーセナルはマンチェスター・Cに8ポイントの差をつけて首位を独走しかけていた。当時は開幕18試合を終えて1試合平均「0.78失点」。半分の9試合でクリーンシートを達成し、ニューカッスルに次いでリーグ2番目の堅守を誇っていた。だがそれ以降の直近14試合では失点数が平均「1.43失点」まで増えており、クリーンシートもわずかに3回しかないのだ。1試合の被シュート数は大幅に変わっていないことを考えると“ミス”が原因なのかもしれない。

 ミケル・アルテタ監督もサウサンプトン戦に3-3で引き分けたあと「我々のように不用意な形で3失点もすれば勝つのは難しい」と失点を悔やんだ。

■個のミス
 やはり気になるのは個のミスだ。サウサンプトン戦では、開始直後にGKアーロン・ラムズデールが味方にパスを通そうとしてカットされ、そのまま失点を喫した。開始27秒の悪夢だった。前日のヨーロッパリーグでの試合でマンチェスター・UのGKダビド・デ・ヘアが似たような形で失点していたため、英放送局『スカイスポーツ』の解説者であるギャリー・ネヴィルは「昨晩のデ・ヘアとハリー・マグワイアがフラッシュバックした」と指摘。あまりにも痛い失点だった。

 ウェストハム戦では、MFトーマス・パルティが自陣でボールを浮かせて相手のプレスを回避しようとし、MFデクラン・ライスに奪われて持ち込まれた。最終的にはDFガブリエウ・マガリャンイスがMFルーカス・パケタを倒してPKを献上し、1点を返されて試合の流れが変わってしまったのだ。当然、ウェストハム戦でのターニングポイントはFWブカヨ・サカのPK失敗なのだが、ロンドン紙『イヴニング・スタンダード』はトーマスにチーム最低の「4点」という採点を付けた。

 2月中旬のマンチェスター・Cとの大一番では、日本代表DF冨安健洋がバックパスをケヴィン・デ・ブライネに奪われて、華麗なループシュートを決められてしまった。ミスを犯した3選手とも今季の貢献度を考えると“許されるべきミス”と擁護できるが、重要な場面での致命的なミスはチームの勢いを削ぐことになるのだ。

 データサイト『FBref』によると、今季プレミアリーグでマンチェスター・Cは「相手のシュートにつながったミス」がわずかに6回。リーグで3番目に少ない数字を誇っている。リーグ最高のポゼッション率(65%)を保ちながら、これだけ致命的なミスを制限できるのは7シーズン目を迎えたジョゼップ・グアルディオラ体制の高い完成度のおかげだろう。

 一方、アーセナルはマンチェスター・Cに次ぐリーグ2位のポゼッション率を誇っている。自分たちでボールを持つ機会が多いためにミスが増えるのは仕方ないが、それにしても危ないミスが多すぎる。「相手のシュートにつながったミス」は19回。なんと今季プレミアリーグで最も多い数字となっているのだ…。

■サリバの不在
 フランスでの武者修行を終えて今季から本格的にアーセナルでのキャリアをスタートさせたDFウィリアン・サリバ(22歳)は、シーズン前半戦のMVP候補の一人だった。抜群の身体能力と冷静なプレースタイルで、プレミアリーグ史上最高のDFにも挙げられる元イングランド代表DFリオ・ファーディナンドと比較されるほどの存在感を示した。それだけではなく、敵陣ゴール前で股抜きを狙うなど、センターバックとは思えないほどの足技まで披露した。

 今季のアーセナルはサリバとDFガブリエウが堅守を築いていたのだが、先月のヨーロッパリーグのスポルティング戦でサリバが腰を痛めて離脱した。彼の不在が最終ラインに大きな穴を開けてしまったのだろう。『BBC』のハイライト番組でも元イングランド代表FWギャリー・リネカーは「サリバの不在と今の結果が偶然とは思わない」と主張した。

 サリバは、ケガで離脱するまで今季プレミアで全試合にフル出場していた。彼が出場した27試合でアーセナルは1試合平均「0.9失点」。それが、サリバが欠場した最近5試合では倍の「1.8失点」まで跳ね上がっている。1試合の被シュート数も「8.3本」から「12.2本」に増え、敵に与える決定機も「1.5回」から「3回」に倍増しているのだ。

 その結果、サリバが出場した27試合では勝率77.8%で「平均2.4ポイント」を稼いでいたチームが、最近5試合では勝率40%で「平均1.8ポイント」まで落ち込んでいるのだ。代役を任されているDFロブ・ホールディングも健闘はしているが、元ウェールズ代表DFアシュリー・ウィリアムスは「サリバが不在だと同じチームには思えない」と『BBC』の番組で言い切った。

 サリバの不在、さらにはひざのケガで長期離脱の冨安健洋の不在が最終ラインに大きな影響を与えているのは明らかだ。

■自滅したのか?
 最近の結果を見るとアーセナルは自滅してしまったように映る。そのため現地メディアでは「アーセナルは“bottle(臆病風に吹かれる)”したのか?」という議論が巻き起こっている。

 現役時代にマンチェスター・Uで8度のリーグ優勝を経験しているギャリー・ネヴィルは「感情的になり過ぎたり、プレーを急ぎ過ぎたりするのは、その証拠だ。シンプルなミスもそうだ」として、アーセナルがプレッシャーに飲まれたことをSNSで主張した。その一方で、アーセナルにも希望はあるという。

「今回のアーセナルのように、十分に早い段階で“bottle”したチームは『失うものなどない』と開き直ることもある」とマンチェスター・Uの元キャプテンは説明する。

 残りは6試合。そのうち1試合は、26日に行われるマンチェスター・Cとの運命の大一番だ。果たしてアーセナルは開き直ることができるのだろうか?

(記事/Footmedia)

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