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◆明治安田生命J1リーグ▽第9節 横浜FM 3―2 神戸(22日・ノエビアスタジアム神戸)

 【神戸担当・種村 亮】首位の神戸はホームで横浜FMに2―3で逆転負け。今季2敗目を喫した。

 目当ての人物は、ミックスゾーンの外で昨季まで同僚だった神戸の選手たちと和やかに会話を交わしていた。飯倉大樹。2019年夏に横浜FMから神戸に完全移籍で加入し、正守護神としてクラブ初タイトルとなった同年度の天皇杯制覇にも貢献した。

 昨季限りで契約満了となったベテランGKは、個人的には思い入れが強い選手の1人だ。足元の技術が高く、スペースがあれば果敢にドリブルでボールを運ぼうとするプレーは「飯倉チャレンジ」としてサポーターからも愛された。何より魅力だと感じたのは、クラブの将来を思うがため歯に衣(きぬ)着せぬ発言で問題提起を続ける姿勢。在籍時、取材の場での飾らない言葉に何度もうなずいた。

 退団が決定した際のリリース。クラブを通じ「僕は勝っても負けてもこれがヴィッセルだ、と言える『スタイル』をつくりたかった」「誰かが言わないと変わらないし、きっかけにもならない。だから僕は言い続けてきました。親父の小言はここまでです」などとコメントした。飯倉が指す『スタイル』とは、「バルサ化」の名のもとにクラブが18年から取り組んできたパスサッカーだが、チームは昨季から大きく戦い方を変更。前線からのハイプレスやロングボールを用い、元日本代表FW大迫勇也や同FW武藤嘉紀といった個の力を生かしたサッカーでJ1残留争いから抜け出し、今季は開幕から好調を維持している。今のスタイルをどう見ているのか。声をかけると、去年までと同じ飾らない言葉で胸の内を語ってくれた。

 「サコ(大迫)やよっち(武藤)とか強くて速くて収まる選手がいて、ある程度中盤を省略して勝っているサッカーも一つだと思う。ただ、今のサッカーは属人的というか…。個人が強くて勝っているけど、組織があって個人が強いというのが理想だなと思う。これだけ良い選手がいてお金もかけているからこそ、もっと色んなチャレンジをしてほしい。(クラブには)日本を引っ張っていけるポテンシャルはあるんだから」

 飯倉は下部組織を過ごし、今季4年ぶりに復帰した横浜FMを例に挙げた。「マリノスも(前監督の)ポステコグルーの時とは同じやり方ではないけど、(パスを)つなぐというフィロソフィー(哲学)はある。信念というか、皆が向かうベクトルというのは大事」。この日の試合では、パスをつなごうとする横浜FMに対して神戸が前線から激しくプレス。先制点や、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)で取り消された3点目も相手のミスからだった。それでも昨季王者は自分たちの戦術を崩すことなく、終盤に逆転勝ち。指摘には説得力があった。

 他チームの勝敗を受け、神戸は今節も首位の座を守った。結果が出ている要因はピッチにいる選手たちが今の戦い方に自信を持ち、迷いなく試合に臨めているからだと考えている。これも一つのスタイルであることには違いない。ただ飯倉が言いたかったことは、それが長期的なスパンで決められたものなのかどうか、だ。

 この日は出場機会はなし。かつての本拠地に立ち「ここ(神戸)でもうちょいやりたかったな、という気持ちもある。俺、お互いのチームが好きだし、選手も好きだし。勝ってすげえ嬉しいけど、神戸の選手の悲しい顔を見るのはつらい」と困ったように笑った。敵となっても愛情あふれる「親父の小言」は、耳を傾けるべき提言だと強く感じた。

報知新聞社



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