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 女子ワールドカップ開幕まで、100日を切った。女子日本代表が目指すのは世界タイトル奪還だ。そのため、今月にはヨーロッパへ遠征し、2試合を戦った。なでしこジャパンの本大会前最後の海外遠征を、サッカージャーナリスト・後藤健生が検証する。


■逆転を生んだ連係
 守備面では課題ばかりが目についたが、攻撃面ではスリーバック(3-4-3)は機能するようになってきている。

 左サイドではウィングバックで起用された杉田妃和がパス出しの起点となって、シャドーの猶本光とのコンビネーションで攻撃の形を作り、右サイドではウィングバックの清水梨紗がシャドーの藤野あおばを走らせた。

 藤野は、1対1の場面で積極的にドリブルをしかけ、9分にはスピードのあるクロスを入れた。左から詰めた杉田のヘディングシュートはGKのイニェス・ペレイラに弾かれたが、これが日本の最初の決定機。藤野は77分までプレーして何度かチャンスを生み出していた。また、デンマーク戦でも後述のように攻守に貢献しており、今回の遠征を通してのベストプレーヤーと言っていいだろう。

 同点ゴールは左サイドから生まれた。

 杉田が切り返しで相手DFを外してペナルティーエリア内の深い位置、いわゆる「ポケット」に走り込んだ田中美南にスルーパスを送り、田中の折り返しをゴール前に走り込んだ長谷川唯が決めたもの。杉田のキープによって田中がDFの裏を取り、長谷川がゴール前に顔を出す時間が生まれた。

 いずれにしても、両サイドのウィングバックとシャドーの動きから多くのチャンスが生まれており、スリーバックは攻撃面ではよく機能していた。

 53分の逆転ゴールは長谷川からのロングボールを追った田中が右足のアウトサイドでコントロール。出てきた相手GKの動きを見て、今度は左足のアウトサイドで浮かせて決めたもの。シュート技術の高い田中らしいゴールだった。

 このゴールの直前にも清水からのロングボールに田中が抜け出すシーンもあった。つなぐだけでなく、トップが裏に走ってそこにロングボールを入れる形も意識的に使えていた。

■システム変更後のぎこちなさ
 こうして日本が逆転に成功した後、1点を追うポルトガルがFWの枚数を増やしてロングボールを多用してきたのを見た池田太監督はメンバー交代を使ってフォーバックに切りかえた。

 しかし、フォーバックになってからは攻撃の形は作れず、なんとか逃げ切ったというのが現実。久しぶりのフォーバックで立ち位置を確認する方に意識が向いてしまい、守備の出足が悪くなったのが苦戦の原因。本来はセンターバックの南萌華が左サイドバックに入り、サイドバックが本職の清水がセンターバックに入るなど最終ラインの構成がアンバランスだったことも苦戦の原因だったかもしれない。

 従来の基本布陣であるフォーバックと現在取り組んでいるスリーバックを併用するというのが池田監督の考えらしいが、スムーズに切り替えることは難しそうだ。

 もっとも、森保一監督が率いる男子の日本代表もワールドカップ直前までスリーバックを機能させられなかったが、2022年9月のアメリカ戦をきっかけにスリーバックを使えるようになって本大会では2つのシステムを駆使してドイツ、スペインに勝利した。

 女子代表も、7月の強化合宿と最終段階でのテストマッチを通じて両システムの併用が可能になるのか、あるいは併用を諦めるのかを見極めていく必要があるだろう。

■熊谷らが登場したデンマーク戦
 ポルトガル戦から移動を含めて中3日で行われたデンマーク戦は気温10度という寒さの中の試合となった。

 ちなみに、ワールドカップが開かれる7月から8月は南半球にあるニュージーランドとオーストラリアは冬の真っ盛り。日本の第2戦が行われるダニーデンはニュージーランドの南島にあり、緯度が高いためかなり寒い環境での試合となる(もっとも、対戦相手のコスタリカは寒さに強いとは思えないが)。

 日本代表はデンマーク戦では熊谷紗希をスリーバックのセンターで起用するなど、現時点でのベストに近い布陣で戦った。暑さによる制約もなく、スリーバックをうまく機能させたかったが、対戦相手のデンマークがスリーバック対策を打ってきたことで前半の立ち上がりから受け身になってしまった。

後藤健生



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