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7月に開催されるサッカー女子W杯豪州・NZ共催大会への想い

なでしこジャパン岩渕真奈に4度目となる夢舞台への想い、海外で挑戦し続ける信念について聞いた【写真:Getty Images】

 サッカーの女子ワールドカップ(W杯)が7月にオーストラリア・ニュージーランド共催で行われる。3大会ぶり世界一をかけて挑む日本代表・なでしこジャパン。選手たちは並々ならぬ闘志を燃やしている。12年前で優勝メンバー、FW岩渕真奈もその一人だ。18歳で世界一を経験したストライカーは今年1月、30歳を迎える勝負の年にアーセナルからトッテナムに移籍を決断。自身4度目となる夢舞台への想い、海外で挑戦し続ける信念について「BEYOND(~超えて)」をテーマに聞いた。(取材・文=藤井 雅彦)

 ◇ ◇ ◇

 2011年7月17日。この日付けは日本女子サッカーの歴史が塗り替えられた日として、サッカーファンのみならず多くの国民の記憶に刻まれている。

 なでしこジャパンはPK戦の末にアメリカを破り、W杯を初めて制して世界の頂点に立った。当時のFIFA女子ランキングは日本が4位なのに対して、アメリカは1位。下馬評を覆す日本の勝利に、世界中が驚きに包まれた。

 優勝メンバーの一人に、岩渕真奈がいる。決勝では延長後半途中から出場し、優勝の瞬間をピッチ上で体感した。当時は、まだあどけなさの残るチーム最年少18歳。それでも決勝以外にグループリーグ3試合と準々決勝のドイツ戦にも出場したように、早くから才能を高く評価されていた。

 名前と、顔と、もちろんプレーで日本の女子サッカーを牽引してきた一人である。W杯には2011年だけでなく2015年、2019年と3大会連続で出場し、五輪にも2012年ロンドン大会と2021年東京大会に出場した。度重なる負傷に苦しみながらも、常になでしこジャパンの中心として戦ってきた事実は色褪せない。

「W杯という舞台の大きさはどの大会でも変わりません。勝利を目指して本気で戦う場所です。でも、自分が置かれている立場は少なからず変化しました。言葉を選ばず言えば、最年少だった2011年はラクでした。今はいろいろなことを経験させてもらってきた中で、立ち位置が違います。多少なりとも自覚と責任を持っているつもりですし、やらなければいけないという気持ちもあります」

トッテナムへの期限付き移籍、海外でプレーする理由とは
 今年1月、岩渕はアーセナルからトッテナムへ期限付き移籍した。同じロンドン北部に拠点を置くチームで、住まいなど生活環境に大きな変化はない。聞けば「アーセナルの練習場まで10~15分、トッテナムの練習場まで30分」だという。だから、コーヒーを飲んでひと息つく馴染みのカフェも変わらない。

 移籍の理由は、至ってシンプルだ。

「W杯を目指す上での決断です。年齢も年齢なので、自分の中では最後のW杯だと思っているし、その舞台に必ず立ちたい」

 今年7月下旬からオーストラリアとニュージーランドで共催されるW杯に出場する。そのために所属クラブでの出場機会を増やし、プレーヤーとしてさらなる高みを目指す。もちろん簡単な決断ではなかったが、進むべき道が明確だからこそ自然と次への一歩を踏み出せた。

 海外ではドイツで2クラブ、イングランドで3クラブと、合計で5クラブに所属したことになる。文化も言語も異なる国でのプレーに、どのような価値を見出しているのか。

「日本で体感できないことがたくさんあります。例えば、海外の選手はとにかく我が強い。それがすべての場面で良いとは言い切れないけれど、自分の意見を持つ、言うことの大切さも間違いなくあります。若い時にドイツでそういった環境に初めて身を置いて、自分の考えを言い合える環境がとても魅力的でした。自分自身を成長させられるし、サッカー選手ではない自分の人間の在り方も海外で感じる部分があります。海外でプレーすることにこだわりがあるのではなく、自分にとってのベストを選んでいる結果なんです」

 厳しい環境で研鑚を積み、さらにサッカーを楽しむ。選手としても、人間としても、もっともっと大きくなれる理由が、日本を離れた海の外にあるのだろう。

「やるからには上を目指したいし、挑み続けたい」
 3月18日に30歳の誕生日を迎えた。いわゆる節目の年齢にも「若ければ若いほうがいいけど、ただの数字です」と意に介さない。ただ、気がつけば代表活動でも周りには年下ばかり。当然、ついていく側から引っ張っていく側へと立場は変わった。心境の違いを、静かに言葉で紡いでいく。

「若い時に感じられなかったものを感じられるようになったのは成長だと思っています。同時に責任も大きくなりますが、今の状況で何ができるかを試されているのはネガティブな感情ではなく、むしろポジティブなこと。これまでの積み重ねがあるからこそ今があるんです」

 W杯4大会連続出場を目指し、今のベストを尽くす。日々のトレーニングも、次にやってくる試合も「やるからには上を目指す」のが信念だ。これからのキャリアがどれだけ続くのか、どんな道が待っているのか、すべては自分次第。

「自分の中でのベストを更新できなくなったら、サッカー選手として終わる時かなと思っています。今は目前に迫っているW杯が大きな目標だけど、もっと突き詰めれば楽しくサッカーをやりたいという気持ち。そして、やるからには上を目指したいし、挑み続けたい」

 今も、これからも、岩渕真奈は走り続ける。


■岩渕真奈 / Mana Iwabuchi

1993年3月18日生まれ、東京都出身。2007年、14歳で日テレ・ベレーザ(現 日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の一員としてなでしこリーグに初出場。16歳でA代表デビューを飾り、11年のFIFA女子W杯ではチーム最年少18歳で優勝に貢献した。2012年にドイツのTSG1899ホッフェンハイムへ移籍。その後、FCバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)―INAC神戸レオネッサ(日本)―アストン・ヴィラLFC(イングランド)―アーセナル・ウィメンFCを経て、23年1月にトッテナム・ホットスパーFCウィメンに期限付き移籍。日本代表として、FIFA女子W杯は2011年、2015年、2019年大会、五輪は2012年ロンドン大会、2021年東京大会に出場。

藤井雅彦 / Masahiko Fujii



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