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収穫は守備陣の安定感

日本はウルグアイと1-1ドロー。三笘は縦への仕掛けを封じられた印象だ。写真:サッカーダイジェスト/JMPA代表撮影

[キリンチャレンジカップ]日本 1-1 ウルグアイ/3月24日/国立競技場

 森保一監督が何度も繰り返したように、メンバー選考からして3年後を如実に意識したスタートとなった。そういう意味で今後は、指揮官の選手を見極める眼が試されていくことになる。


 まず収穫を挙げれば、GKシュミット・ダニエルを含めて人選を刷新し、あるいは組み替えて送り出した守備陣の安定ぶりだ。特に右SBの菅原由勢は、どちらかと言えば懸念材料だった守備面での対応も問題なく、攻撃では何度かワンタッチでの鋭いパスで局面を好転させ、特性を発揮した。板倉滉とCBでコンビを組んだ瀬古歩夢も、難敵を相手に終始落ち着いた対応を見せ、大過なく終えた。

 一方、シュミットは、期待値の高かったフィードでは味方との連係で課題を残し、後半は不安定さも露呈した。まだウルグアイの守護神ロシェの精度に比べてしまうと見劣りは否めないが、それでもハイボールへの対応などでは一応、存在感は示した。

 当然GKは今回招集されていない選手たちも含めて競争が激化していくはずだが、とりあえずこの日のシュミットのパフォーマンスがひとつの基準となりそうだ。
 
 森保監督も「強い相手に先制され、かなりバタつくことも想像したが素晴らしかった」と収穫を口にしており、中核として期待されていた冨安健洋が故障のスパイラルに陥っている状況を考えても、しばらくはウルグアイ戦のラインナップが軸になっていくはずだ。

 ただし、まだワールドカップを終えて4か月程度である。今更ながら、菅原や瀬古に早々と見切りをつけた判断は悔やまれる。

 一方で攻守両面の安定を担保したのはキャプテンマークを託した遠藤航で、相変わらず不可欠の存在として際立っていた。同じくボランチの守田英正が故障明けの影響か、珍しく前半から致命傷になりかねないミスが続き、後半から途中出場した田中碧も精彩を欠いたので、逆にこのポジションは新しい構想が割って入る余地を残した。

ウルグアイの試合巧者ぶりが光る

 また代表強化では、常に課題としてクローズアップされる「個の底上げ」だが、やはりレアル・マドリーでレギュラーとして活躍するバルベルデには格の違いを見せつけられた。攻守両面で大事な局面には必ず顔を出し、ボールに触れれば落ち着きをもたらして展開を好転させ、それでいて身体を張って危険な芽を摘む。森保監督のように裁量を選手に託すタイプには垂涎(すいぜん)の的だろう。

 それに対しW杯以降、一気に脚光を浴びた三笘薫は、対面するゴンサレスの厳しい対応で完全に縦への仕掛けを封じられた。それでも長いドリブルやカットインからの仕掛けで何度か見せ場は作ったが、ウルグアイの守備が大きな破綻を見せなかった要因でもある。

 どうもチーム内で三笘への期待は依存傾向へと変わりつつあり、長駆ドリブルの際にはフォローが遅れ、あまりに単調な裏狙いのパスも目立った。切り札をグループとしてどう活用していくのか。これまで出場時間が短かったこともあり、検討の余地は少なくない。
 
 そして、率直に現状の1トップ型の布陣では、縦パスが入り難く、ビルドアップが滞り後ろ向きになりがちで、トップ下の鎌田大地までがなかなかゲームに絡めない。結局、後半途中からジョーカー(伊東純也)を送り込んで活路を見出すシナリオはW杯と変わらず、むしろそれまではウルグアイの試合巧者ぶりが光った。

 とりわけ先制してからは、日本の深めのビルドアップにも圧力をかけてボールを下げさせたかと思えば、逆に後方で回して相手を引き出し焦らせるなど、戦略的駆け引きの巧緻性も見せている。

 いずれにしてもウルグアイは、W杯時のレギュラー陣からヌニェスとベンタンクールを欠いたが、チームとしては掛け値なしに真剣モードだった。それだけ日本代表が価値を高めているわけで、こうしてホームゲームの濃密化を証明できたのが、この夜の最大の収穫だったかもしれない。

取材・文●加部究(スポーツライター) 



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