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カタールW杯から3カ月を経て、各国の代表チームが再始動している。

 それにしてもサッカー界は、ここにきて急速に変化している。この50年で一番大きな変化かもしれない。史上初めて冬に行なわれたW杯に続き、次のW杯は3カ国開催、出場チーム数は32から48へと急増する。


 変化の波は国際親善試合にも押し寄せている。本来親善試合というものは、純粋に代表チームとしてのレベルを上げるためのものであるが、最近では政治やビジネスのほうが優先されるようだ。今回の代表ウィークはその混乱ぶりをよく映し出している。

 変化の大きな要因のひとつはUEFAの「囲い込み」だ。従来、代表戦が行なわれるのは11月、3月、6月、9月だ。だがサッカーの中心であるヨーロッパは、最近ではここで行なわれる親善試合の枠にはほとんど入らない。今回においては、ユーロの予選が始まるため、彼らはヨーロッパ同士でのみ対戦する。フリーなのは予選を戦わないユーロ開催国のドイツだけだ。6月にはネーションズリーグがあり、その後はまたユーロの予選となる。

 おかげで、非ヨーロッパの強豪国は対戦相手探しにかなり苦労している。自分たちにとって最適な相手を求めるという、ごく当たり前のことができなくなっている。

 割り切って親善試合をショー化したのは、世界王者に輝いたばかりのアルゼンチンだ。彼らが希望したのはアルゼンチンが提示する高い金額を払える国、そしてアルゼンチン国内でプレーするという条件を飲んでくれる国だ。

 W杯後、世界チャンピオンとなった自国のチームをアルゼンチン国民が見るのはこれが初めてで、試合は大人気となるはずだ。相手のレベルはどうでもいい。いや、逆に負けてお祭りに水を差されても困るから、あまり強くないほうが理想的だ。そこで決まったのが1戦目のパナマ。そして2戦目は、ほとんど誰も知らないカリブ海の小さな島キュラソーだった。

 偶然かもしれないが、どちらもタックスヘイブンの国だ。ちなみにパナマは3月28日にCONCACAFのネーションズリーグ戦が控えているため、ピッチに立つのはA代表でさえない。まさに茶番、ただの見世物でしかない。アルゼンチン人記者の多くは「こんな試合は恥だ」と言っている。

【モロッコを恐れるブラジル】

 それでもリオネル・メッシは19日にPSGでリーグ戦をプレーしたあと、プライベートジェットでブエノスアイレスに戻り、親善試合に参加する。おかげで試合のチケットはたった数分で完売。サイトには実に150万人がチケットを求めてアクセスしたという。また、試合の取材申請は世界中の13万人の記者からあったとも言われている。記者だけで2つのスタジアムがいっぱいになってしまう数だ。どんな騒ぎになるかわからないため、試合が行なわれるブエノスアイレスのエル・モヌメンタルは、キックオフの5時間前に開場する予定だ。

 一方、ブラジルはまるで違う。ほとんどの強豪国はこの期間に2試合をするというのに、ブラジルは1戦のみ。現在のブラジル代表はここ数十年で一番の危機的状態に陥っている。

 ブラジルはカタールW杯後にチッチ監督が辞任して以来、まだ監督が決まらない。ジョゼップ・グアルディオラ、ジョゼ・モウリーニョ、ジネディーヌ・ジダン、カルロ・アンチェロッティといった有名どころにことごとく断られていて、この試合のために現在暫定監督を務めるのは日本の東京ヴェルディでもプレーしたことのあるラモン・メネゼスだ。

 メネゼスは昨年からU‐20代表監督に就任し、結果を出している。今年1月から2月にかけて行なわれたU‐20の南米選手権で優勝を果たした。そのため今回の試合を戦うメンバーには、U‐20の若い選手も多い。それ自体は決して悪くないことだが、これまで一度も一緒にプレーしたことのない選手が多く、コンビネーションが心配だ。

 ネイマールはケガでいない。おまけに対戦相手はW杯で快進撃を見せたモロッコ。本当ならば対戦したくない相手だが、モロッコが大金を払ったことで実現した。選手たちは、無様に負けるのではないかと恐れている。もしそうなれば、ブラジル人の心はますますセレソンから離れるだろう。  知恵を働かせて、選手の負担と、何より経費を抑えるチームも多くなっている。たとえばエクアドルは、2試合とも同じオーストラリア代表と、シドニーとメルボルンで戦うし、中国とニュージーランドも、オークランドとウェリントンで2試合を行なう。また、資金に余裕のないチームは、近場の国同士が戦う。タヒチ対ニューカレドニア、ラオス対ブータン......しかし、グアテマラ対ボリビアはその金も捻出できず、中止になってしまった。

【FIFAはどう出るのか】

 ウルグアイとコロンビアは、それぞれが相手を変え、日本と韓国でプレーをする。どちらもアジアの雄であり、経験を積むにも申し分ない相手だ。南米のなかでは一番いいカードをひいたと私は思っている。ウルグアイはカタールではグループリーグで負けてしまったし、コロンビアは予選で敗退し、新監督で試合に臨む。どちらも意地をかけて戦うに違いない。見ごたえのある試合となるだろう。

 ヨーロッパでは、ユーロ出場をかけた試合が行なわれ、特に1戦目は好カードが揃っている。23日にはいきなりイタリア対イングランドが実現。前回ユーロ決勝の対戦カードであるし、W杯を家で見ていたイタリアにとっては絶対に負けられない試合だ。ポルトガル対リヒテンシュタインも、実力の差はあるが、クリスティアーノ・ロナウドがサウジアラビアから戻ってくることで話題になっている。ここ数カ月、いろいろなことを言われてきたために、ハットトリックを決めるぐらいの意気込みで健在ぶりをアピールするに違いない。

 もうひとつの注目はフランス対オランダ。世界のベスト8に残ったチーム同士の対戦となる。渦中のロシアだが、現状、ロシアを受け入れるチームは世界にはほとんどいない。そこで対戦するのは1戦目がイラン、2戦目がイラクとなった。

 ここ数十年で、FIFAはその力を確実に増している。彼らはその力の大きさを十分に理解し、使い方も非常によく心得ている。FIFAの加盟国は現在211の国と地域。これは国連加盟国(193)より多い。

 そのFIFAは、世界で一番人気のスポーツ・サッカーを、より自分たちの手で握りたいと考えている。昨年12月、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は新たな構想を発表した。クラブワールドカップを2025年から32チームに拡大し(これはヨーロッパのクラブから猛反発を受けている)、そしてすべての親善試合を自分たちの傘下に収めることだ。

 さらに2026年から、FIFAはユーロとW杯の間の年の3月に「FIFAワールドシリーズ」という新たな親善試合の大会を行なう計画だ。先にも述べたようにUEFAがヨーロッパを囲い込むような日程を組んでいるのに対抗するものでもある。まだ具体的には決まっていないが、4つの異なる大陸のチームがひとつのグループを作り、トーナメント方式で戦う案などが出ている。

ただし、このアイデアをWLF(世界リーグフォーラム)は「我々には何の相談もない一方的で勝手な構想」と非難し、また国際プロサッカー選手会も「選手たちへの負担が増加する」と警鐘を鳴らしている。現在でも過密スケジュールが問題になっているというのに、FIFAはそれを解決するどころか、真逆の方向に進もうとしているようだ。

リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon

https://news.yahoo.co.jp/articles/2b93e0a1d5fa5424e9a56b98c2bcfe9f034a38ee?page=1 


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