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満田誠は流通経済大から広島に加入した23歳

両チームともに、3-1にも、1-3になってもおかしくない試合だった。

 お互いに高いラインを敷き、狭いエリアのなかで肉弾戦のような激しいデュエルを繰り広げる。そのプレッシャーに屈せば相手にチャンスを与え、回避できれば目の前にスペースが広がり、一気にゴールへの道が開けていく──。


 そんなスリリングなシーンの連続は、激しい撃ち合いを予感させた。

 しかし終わってみれば、前半早々に1点ずつを取り合っただけ。昨季王者の横浜F・マリノスとリーグ戦3位でルヴァンカップを制したサンフレッチェ広島の一戦は、1-1の引き分けに終わっている。

 決着はつかなかったとはいえ、より勝利に近かったのは横浜FMだったかもしれない。プレス回避のボールの運び方やサイドでの連動性に一日の長があったからだ。

「広島は押し込んではいたものの、完全に崩しきる場面は少なかった。崩し切れない分、ゴール前での余裕がなく、やや強引にフィニッシュに持ち込むシーンが多かった」「スペースを突くスピードや複数人が連動する崩しの局面のクオリティは、横浜FMが広島を大きく上回ったポイントだった」

 これは昨年7月に行なわれた両者の試合レポートに書いた一節である。横浜FMが3-0と快勝を収めた試合で感じた印象は、今回も大きく変わらなかった。

 ではなぜ、今回の対戦は引き分けに終わったのか。あらためて浮かび上がったのは、広島の3バックの存在感の大きさだ。

 ハイプレス・ショートカウンターを駆使する広島のスタイルは、いわばハイリスク・ハイリターンのサッカーだ。高い位置で奪うことができれば、ビッグチャンスにつながる。4分の東俊希の先制ゴールも、敵陣でのボール奪取がきっかけで生まれたものだ。

 一方でプレスを剥がされれば、一気にリスクにさらされる。うしろの人数が少ないため、守備陣は個の力で対応せざるを得なくなるのだ。

 実際にこの日も、巧みにプレスを剥がし、スペースを突いてくる横浜FMのカウンターを何度も浴びた。しかし、そこで立ちはだかったのが、広島が誇る3バックである。

【日本代表DFのあふれる自信】

 右から塩谷司、荒木隼人、佐々木翔が並ぶ3バックは、リーグでも最高レベルにあるだろう。いずれも対人能力に優れ、個の力で敵を封殺することができる。何度もスペースを与えながらも最後の場面で身体を張り、シュートを打たせない。

 ハイリスク・ハイリターンの広島のサッカーが成り立つのは、いずれも日本代表の経験のある3バックの存在があるからにほかならない。

「ディフェンス陣とすれば個で守るシーンは数多くあるけど、そこを守りきれなかったのは悔しいですね」

 19分に同点とされた失点シーンを佐々木はそう振り返った。しかし、それは責任感の表れでもあるのだろう。

「ああいうふうに(カウンターで)運ばれた時は1対1になるけど、3枚で広い範囲を守りながらやっているので、そこは自分たちの腕の見せどころ。それはこのチームの強みでもあるし、自分たちの価値でもある」

 佐々木の言葉からは、ひとりでも守りきれるという自信がうかがえた。まるで1対1の状況を楽しんでいるかのようにも感じられた。それは荒木にも、塩谷にも備わる思いだろう。

 頼れる3バックの存在がある一方で、広島は開幕から3戦目にして、またしても今季初勝利を挙げることができなかった。

 王者相手の引き分けに佐々木は「悲観する内容ではないですし、チャンスもあった。チャンスを作るところと、決めるところのクオリティをもっともっと向上していけば、勝ち点3を取れる内容だったと思う」と前を向く。

 ただ、勝ちきれないのには、課題もあるのは事実。それはやはり、得点を奪えない状況に見出せる。

「高い位置で奪ったボールをどういうふうにゴールに仕留めていくか、というところは、チームとして足りないところ。いい形で奪うシーンは多いけど、シュートチャンスまでうまく持って行くことはそんなに多くない。そこは個人的には気になっているところです」(佐々木)

 3試合で2得点──。決めたのはウイングバックの東と前節のアルビレックス新潟戦でゴラッソを叩き込んだセンターバックの塩谷である。

【昨季9ゴールを記録した23歳】

 本来、点を取るのはFWの役割だ。1トップ2シャドーを基本とする広島だが、この日はナッシム・ベン・カリファとピエロス・ソティリウが2トップのような形を形成。しかし、ともに献身的なプレスと身体を張ったポストワークで奮闘したものの、フィニッシュワークに関しては質が伴わなかった。

 起爆剤となれるのは、満田誠だろう。昨シーズン、大卒ルーキーながらチームトップの9得点と2位の8アシストを記録したアカデミー出身のアタッカーは、今シーズンより佐藤寿人がつけていたエースナンバー11を託されている。

 しかし、この日は右ウイングバックとしてピッチに立ち、攻撃だけではなく守備のタスクにも奔走。それでも満田は東のゴールをアシストし、意表を突くFKであわやというシーンも生んでいる。一方で失点シーンにも絡んだことで、評価が分かれるパフォーマンスとなった。

 右サイドの人材が不足しているなかで「フレキシブルに多くのポジションに対応できる」(ミヒャエル・スキッベ監督)満田をウイングバックで起用するのは、選択肢のひとつではある。

 しかし、バイタルエリアで違いを生み出し、正確かつ強烈なシュートを備え、ハイプレスの担い手でもある満田は、やはり前線でこそ輝きを放つ。広島のシステムであれば、2シャドーの一角が適正となるだろう。

「相手からの警戒や注目は、去年よりもあると思います。そういうなかで今日、アシストという結果を残せたのは自分にとって一歩、踏み出せたかなと思います。ただ、失点に絡んだことはマイナスだったので、マイナスを減らして、プラスを積み重ねていけるようにしたい」

 エースとしての自覚が芽生え始める2年目のアタッカーが、課題解消のキーマンとなることは間違いない。

 そういえば昨季の広島も、スキッベ監督がコロナの規制のため入国が遅れた影響もあり、開幕から5試合勝ちがなかった。今季もスロースターターぶりを露呈してしまったが、攻守両面で質の高いタレントは揃い、スキッベ監督の修正力の高さはすでに昨季の戦いで証明済みでもある。

 たしかに結果は出ていない。それでもまだ、期待感は薄らいでいない。

原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei















































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