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マドリーで直面した2つの問題

マドリーでも不可欠な存在だったバルベルデ。(C)Getty Images

 サッカーは一種の地理だ。複雑なシステムに基づいていくつものエリアが管理され、しばしば散漫で、一見すると区切られた空間の中で、選手たちは自分の居場所を見つける必要がある。標準的なピッチサイズは、105×68メートルだ。


 その限られた大陸には数々の神秘が隠され、それを一つ一つ理解するには技術と知恵をフル稼働させることが不可欠だ。なおかつそこに優秀なガイドがいればさらに理想的だ。カルロ・アンチェロッティに導かれて、並外れたエネルギーで自らの領土を征服したフェデリコ・バルベルデはその好例だろう。

 バルベルデにとってサッカー界で自らの居場所を見つけるのはさほど難しいことではなかった。ウルグアイの名門、ペニャロールのアカデミーで頭角を現すと、欧州のクラブの間で争奪戦が繰り広げられ、レアル・マドリーがその獲得レースを制した。当時バルベルデは17歳。しかしピッチ上で自らの居場所を見つける段階になると、とたんにハードルは上がり、それを乗り越えるまで7年間を要した。

 バルベルデがマドリー加入後、直面した問題は主に2つある。その1つ目は、熾烈な定位置争いだ。前述した7年間はルカ・モドリッチ、カゼミーロ、トニ・クロースの伝説のトリオがマドリーの中盤に君臨した時期とほぼ一致する。彼らに挑むのは、エベレストの頂上を目指すようなものだった。
 
 バルベルデが直面した主な問題の2つ目は、自分に合った安全な居場所探しだ。本職のセントラルMFに加え、最初に所属したカスティージャ、1年間レンタルでプレーしたデポルティボ、そしてマドリーにおいてSB、CB、10番、偽9番、偽ウイングと様々なポジションでプレー。複数のポジションをこなせるユーティリティ性が、器用貧乏に陥る結果となり、決め手に欠ける選手というレッテルを貼られた。

 21年夏、そんな未完の大器から脱皮できなかったバルベルデに転機が訪れる。カルロ・アンチェロッティとの出会いだ。イタリア人の智将は、バルベルデを見て、04-05シーズン、ミランの指揮官として臨んだチャンピオンズリーグ(CL)決勝において大逆転劇の主役を演じた相手チーム、リバプールのMFを連想したかもしれない。スティーブン・ジェラードだ。

 現にバルベルデは、パワー、ストライドの長さ、ドリブルのクオリティ、疲れ知らずのスタミナ、縦への推進力、パンチが利いたミドルシュートとジェラードの特長をことごとく受け継ぎ、しかもそのいずれの能力においてもまだ多くの伸びしろを残している。しかし、シャイなのか、自信がなかったのか、あるいは周りに遠慮していたのか、なかなかその能力をピッチ上で解き放つことができずにいた。

バルベルデがプレーすると、ピッチが狭く見えるとよく言われる

バルベルデを覚醒させたアンチェロッティ(左)。(C)Getty Images

 アンチェロッティ監督は、昨シーズン終盤、バルベルデに居場所と役割を与えた。そのためにチームを再構築して右サイドのポジションを用意。リバプールとのCL決勝をはじめ、重要な試合でスタメンに抜擢した。今シーズン、バルベルデが眩い輝きを放っているのは、自信を持ってプレーできる環境を提供し、潜在能力を開花させたアンチェロッティ監督の手腕の賜物でもある。
 
 バルベルデがプレーすると、ピッチが狭く見えるとよく言われる。しかしそれもフットボーラーとしての自身のスケールの大きさを認識したことによる自信の表れと捉えることもできる。

 数多くの資質を持っていても、散発的にしか発揮できなかった姿はもうない。この数か月の間に、その一つ一つを順序立てて整理し、選手としての洗練さとソリッドさを高めた。もちろん縦横無尽に駆け回るダイナモぶりは健在だ。

 つまるところバルベルデは自らのMF像を確立したのだ。試合を重ねるごとに完全無欠ぶりに磨きがかかるそのプレーはまるでサイクロンのようでもある。マドリーにとっては何とも頼もしい、対戦相手にとっては恐ろしい選手が誕生した。

文●サンティアゴ・セグロラ
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。



















































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