ラ・リーガ第21節の顔は、間違いなく久保建英だ。

マドリーのメディアはヴィニシウスがクラブ・ワールドカップ決勝で決めたゴールについて、バルセロナのメディアはペドリがビジャレアル戦で決めたゴールについて、せっせと話題にしている。しかし、どこで誰が何を言おうとも、今節の顔となる選手は、主観的にも客観的にも久保なのだ。彼はもうすでに、ラ・リーガのスター選手に立候補する権利をつかんでいる。

【動画】久保建英、豪快左足ボレーで先制点！

敵地RCDEスタジアムでのエスパニョール戦、久保は驚異的なパフォーマンスでラ・レアルを勝利に導いた。アトレティック・クラブとのバスクダービーのように日本人MFはチームの攻撃を活性化させ、そして自らゴラッソを決め切っている。

この試合の23分、エスパニョールDFがクロスをヘディングでクリアし損ねると、ペナルティーエリア内右、浅い位置にいる久保がこのボールを左足でトラップ。そして一度バウンドしたボールを再び左足を使って思い切り叩き、凄まじいスピードでニアサイドに突き刺した。2週間前、スコアレスドローに終わったレアル・マドリー戦ではシュートチャンスを物にできず、エリートの選手になるためには決定力を上げる必要があると説いた久保。このエスパニョール戦のゴールは、まさにエリートにしか決められない類のものだった。

この強烈なゴラッソのほか、オウンゴールも誘発した久保がラ・リーガのMVPに選出されたことについて、異論を持つ者などいないだろう。……しかし彼がMVPに輝くのはもはやいつものことのように思える。

ラ・レアルを率いるイマノル・アルグアシルがスタメンを選ぶときに「タケとあと10人」と考えていても、もはや何らおかしくない。何となれば、久保の驚異的なところはプレーだけでなく、ケガをしないことにもあるのだから。そう、久保は筋肉に張りを訴えたことはあったが、負傷自体はしたことがない。現在のラ・レアルは野戦病院と化して、彼のチームメートはどんどんと離脱しているが、久保だけはずっと無傷。いつラ・レアルの試合を見ても、右サイドを中心にドリブルで相手を切り崩そうとしている。イマノルが磨き続けているダイヤモンドの原石は、どんどんと輝きを増し、なおかつ砕けない。

ラ・レアル自慢の左足テクニシャン集団は、今のところ波がある。ダビド・シルバの負傷離脱はチームに重くのしかかり、ミケル・メリーノもケガに苦しみ、シーズン前半戦に昨夏最高の補強選手と言われたブライス・メンデスは調子を落とし始め、ミケル・オヤルサバルは長期離脱から復帰を果たしたばかりでプレーリズムを取り戻さなくてはならない。そうした中で存在感を高めているのが、久保だ。21歳のMFは気後れするどころか、チームを背負う覚悟をプレーでもって示している。

二倍速に見えるキレとスピード

体を張る久保建英 (C)Getty Images

マジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェ、マジョルカ……これまでの久保は、試合前に「違いを生み出す選手」とメディアに紹介されながらも、期待外れに終わることも少なくなかった。しかし選手の質の差はあれども、誰が出ても変わらないほどプレーシステムが確立されているソシエダでは違いを生み出さない方が珍しい。とりわけ、ここ最近の日本人の勢いは凄まじい。

「僕の日になる」との予言通り活躍したアトレティックとのダービー、クロスバー直撃のシュートなどあったバルセロナ戦、誰よりもシュートチャンスを手にしたレアル・マドリー戦、チームが負けながらもMVPに輝いたバジャドリー戦、そしてゴラッソ＆OG誘発のエスパニョール戦……ここ最近の試合をトピックとともに羅列したが、久保はそれ以外の場面でもボールを持てば何かが起こることを予感させ続けている。あまりにもプレーのキレが凄まじく、本当に予感させっぱなしなのだ。

まるで元祖ロナウドやメッシのように二倍速に見えるスピードでプレーする彼は今、ラ・リーガで吹き荒れる嵐だ。レアル・マドリー界隈が、彼を復帰させることについて話したくてたまらないのも無理がない。たとえ久保にとって、明確なプレースタイルを持つソシエダこそが理想的な場所であっても。

次の土曜にラ・レアルは、こちらもラ・リーガを代表するレフティー、イアゴ・アスパスを擁するセルタと対戦する。I・アスパスと久保のレフティー対決など、ラ・リーガファンにとってはよだれが出そうなほど豪華だ。いずれにしても疑いの余地がないのは、私たちが久保の違いを生み出すプレーに、思わず口を開けてしまう瞬間が絶対に訪れるということだ。

文＝ナシャリ・アルトゥナ(Naxari Altuna)／バスク出身ジャーナリスト

翻訳＝江間慎一郎

ナシャリ・アルトゥナ(Naxari Altuna)／バスク出身ジャーナリスト