スクリーンショット 2023-02-06 17.24.46

スポンサード リンク






























 スコットランド・プレミアシップのセルティックに所属するFW古橋亨梧(28)が歴史を塗り替えた。敵地で5日に行われたセントジョンストンとの第25節に先発した古橋は、前半22分に今シーズン19ゴール目をゲット。FW浅野拓磨(28、ボーフム)がパルチザン・ベオグラード(セルビア)時代の2020-21シーズンにマークした、ヨーロッパ主要リーグにおける日本人最多得点記録を更新した。チームも4-1で快勝して連覇へ向けて首位を独走。W杯代表落ちの悔しさを味わった古橋が、得点王争いトップに立っている。


体を反転させての強烈な一撃
 古橋の勢いが止まらない。
 今シーズン19ゴール目を決め、ヨーロッパ主要リーグにおける日本人最多得点記録を更新した。最多記録に並んだリヴィングストンとの前節からわずか4日。敵地でいとも簡単に、なおかつ豪快な一撃を叩き込み、浅野を抜いて歴代単独トップに躍り出たのである。
 記念すべき瞬間は、セルティックが1-0とリードしていた前半22分に訪れた。
 自陣の中盤から発動させたカウンター。右サイドに開いたFWジョタへロングボールが配球された瞬間に、センターフォワードで先発していた古橋も一気に前方へ加速した。
 ボールを収めたジョタがテクニックを駆使しながら、マーカーと1対1の攻防を繰り広げる。その間に古橋はセントジョンストンのセンターバック、アレクサンダー・ミッチェルの背後を取り、次の瞬間には前方へ姿を現す動きを繰り返し、ポジション争いで主導権を握り続けた。
 そして、ジョタが右足で送ったグラウンダーのクロスが、もう一人のセンターバック、アンドリュー・コンシダインの左足をかすめ、ゴールと反対方向へコースを変えた直後だった。まるで事態を予測していたかのように、再びミッチェルの前方へ姿を現した古橋が右足でボールを収める。さらに間髪を入れずに体を反転させて右足を振り抜き、強烈な一撃を突き刺した。
 目の前で古橋に今シーズン19ゴール目を決められた21歳のミッチェルは、ぼう然と立ち尽くすだけだった。その胸中にはどのような思いを抱いていたのだろうか。
 スコットランドメディアの『THE SCOTSMAN』は1月中旬に、実際に古橋とマッチアップしたばかりのセンターバックの悲鳴にも近い声を紹介している。キルマーノックのベテラン、32歳のアッシュ・テイラーは古橋との1対1を「猫とネズミ」にたとえている。
「彼の動きはとても鋭く、常に隙を突こうとしている。彼は背後から僕らを引きつけ、次の瞬間、一気にスペースへ飛び込もうとする。まるで猫がネズミに遊ばれているかのような感覚に襲われる。こちらが一瞬でもスイッチを切ってしまえば、たちまちやられてしまう」
 どちらが猫で、どちらがネズミなのかは言うまでもないだろう。
 屈強な大男が集うスコットランドのDF陣を、身長170cm体重63kgの体に卓越したスピードとクイックネスを搭載する古橋が翻弄している跡が伝わってくる。セントジョンストン戦で決めたゴールも、テイラーが舌を巻いた“ネズミ”を連想させる動きから生まれた。
 昨年11月1日。自らの名前が読み上げられなかった、W杯カタール大会に臨む日本代表メンバー発表を伝えるライブ配信を自宅で起床した直後に視聴した。
 翌日2日にはレアル・マドリードのホーム、サンティアゴ・ベルナベウに乗り込むUEFAチャンピオンズリーグのグループステージ最終戦が待っていた。仲間たちが気づかってくれるなかで抱いた思いを、古橋はスコットランドメディアの『Glasgow Live』に語っていた。
「いつまでも落ち込んでいるのは利己的だし、チームに迷惑もかける。僕のモットーは笑顔なので、みんなには『心配しないで』と言い続け、何とか笑顔を保とうとしました」
 子どものころからW杯の舞台を夢見てきた。J2のFC岐阜からヴィッセル神戸に移籍した2018年夏。チームメイトになったスペインの至宝、アンドレス・イニエスタから「もっと自信を持って、君のよさを出していいよ」と背中を押され、神戸でゴールを量産し始めていた2019年11月。ベネズエラ代表との国際親善試合に臨む森保ジャパンのメンバーに初めて選出された。
 その瞬間に夢がカタール大会でかなえるべき目標へと変わり、2021年夏のセルティック移籍につながったと、古橋は前出の『Glasgow Live』に語っている。
「海外でいいプレーをすれば、その延長線上にW杯があると考えていました。ただ、僕は十分な結果を残せませんでした。日本代表でプレーする機会は与えられましたけど、ゴールを決めるという部分で違いを生み出すことができませんでした」
 セルティックでの1年目は怪我で長期離脱を強いられながらも、プレミアシップで得点王に1差の12ゴールをマーク。カップ戦を合わせた二冠獲得に貢献し、年間ベストイレブンにも選出された。今シーズンもW杯メンバー発表までに8ゴールを叩き出した。
 しかし、代表では思うような結果を出せなかった。アメリカ、エクアドル両代表との国際親善試合を終えた昨年9月の時点で16試合に出場して3ゴール。それでも、挑み続けた過程に対して古橋は「自分の選んだ道に後悔はありません」と言い切っている。
「振り返れば、ロシアでW杯が開催されたとき、僕はJ2の岐阜でプレーしていました。当時は4年後にこのような状況になっているとは想像もできませんでした。現時点で4年後のことは考えられませんが、次の大会に選ばれる選手に成長したいという思いはあります」
 カタール大会に臨む森保ジャパンへのエールとともに、前出の『Glasgow Live』に古橋が思いの丈を語ったのは昨年11月上旬。そして、リーグ戦が再開された12月中旬以降で、リーグ戦では10戦すべてで先発。そのうち7試合で9度もゴールネットを揺らしている。
 出場23試合で昨シーズンを大きく上回る19ゴールをマークしている古橋は、ローレンス・シャンクランド(ハーツ)に2差をつけてトップをキープしている。
 プレミアシップは12チームがまず3回戦総当たりで対戦。その後に上位、下位の6チームずつに分かれ、1回戦総当たりで戦って最終的な順位を決める。首位を独走するセルティックは13試合を残している。今シーズンの量産ペースを踏まえれば、浅野が持っていた記録更新は時間の問題だった。得点王獲得へ向けて、シャンクランドとの実質的な一騎打ちを迎えている。
 カップ戦を含めれば公式戦で22ゴールを量産している古橋へ、アンジェ・ポステコグルー監督も賛辞を惜しまない。セルティックの情報に特化したメディア『THE CELTIC WAY』は、かつて横浜F・マリノスを率いた指揮官の嬉しい悲鳴にも似た声を伝えている。
「古橋はあらゆる面で優れていて、特に運動量は驚異的だと言っていい。昨シーズンのように彼に肉体的な負担をかけ過ぎないように意識しているが、いまのところは休息を必要としている様子は見受けられない。ここのサッカーとスケジュールに適応していると思う」
 ポステコグルー監督がこう語っていたのは、セントジョンストン戦の前日会見だった。迎えた一戦でゴールだけでなく、先制点となった相手のオウンゴールも誘発した活躍ぶりに、エースストライカーの古橋へ寄せてきた信頼感はさらに厚くなったはずだ。
 5連勝を含めた18戦連続無敗とともに、セントジョンストン戦を終えてから数時間後の日本時間6日未明。自身のツイッター(@Kyogo_Furuhashi)を更新した古橋は、両手を使って頭の上で丸を作るゴールパフォーマンスの写真とともにこんな言葉をつぶやいている。
「Celtic at its best(セルティック最高)」
 W杯代表落選の悔しさを笑顔と、さらに前へと進むエネルギーに変えてから3ヵ月あまり。セルティックの2シーズン連続の二冠獲得を目指し、何よりも自分自身の未来を変えていくために、スピードとクイックネス、そして決定力を兼ね備える古橋は貪欲にゴールを積み重ねていく。 


















































スポンサード リンク

ブログランキング にほんブログ村 サッカーブログへ