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 カタールW杯後のウインターブレークに入っていたドイツ・ブンデスリーガが再開した。W杯日本代表が各地でプレーする中、鎌田大地・長谷部誠が所属するフランクフルトと吉田麻也・上月壮一郎が所属するシャルケの一戦を日本人カメラマン中島大介氏が撮影。写真と記事で4人の今を伝えてもらった。


 日本代表の鎌田大地、そして吉田麻也がカタールワールドカップ激闘後、束の間の休息を経て、公式戦の舞台に戻ってきた。

 プレミアやリーガ、他欧州主要リーグのW杯後の再開からやや遅れ、ブンデスリーガも再開された。この再開後初戦となる第16節には、アイントラハト・フランクフルト対シャルケの一戦が組まれた。

 フランクフルトには日本代表で中心となる鎌田が、そしてシャルケには日本代表キャプテン吉田がおり、日本代表対決の様相も見せる。

 また前者には、ベテランの域に入ってもなお好調を維持する元代表キャプテン長谷部誠が、そして後者には、22歳の上月壮一郎がいる。

飛ぶ鳥を落とす勢いの上月、クラブで好調の鎌田
 上月は、22年初頭に京都サンガ(J2で過ごした21年シーズン、上月は公式戦4試合1得点)からドイツ5部FCデューレンへの移籍を経て、同年夏シャルケU23へ加入した。そこでの活躍が認められて昨年末トップチームの練習へ参加すると、そのままトップチームへの昇格を果たした。わずか1年ほどの出来事。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで自身の活躍の場を切り開いている。

 このチームには、代表また海外での経験も豊富な吉田が在籍しているため、様々な刺激を受けることが可能になる。気がかりな点は、シャルケ自体の状態か。勝ち星を2しかあげられておらず、最下位に位置している。残留が第一目標、早急な立て直しが必須だ。

 一方の鎌田は、中断までリーグ13試合に出場、7ゴール3アシストでブンデス4位と好調のチームを引っ張ってきた。チャンピオンズリーグでも難敵揃いのグループを突破している。W杯本戦では、得点、アシストなど分かりやすい結果を残すことができなかっただけに、自チームへ戻っての活躍に期するところもあるだろうか。

 日本代表対決、新旧日本代表キャプテン対決、ベテラン対若手――欧州在住サッカーカメラマンとしては、この見どころ満載の試合を撮らない手はなかった。

最高気温1度の中でもファンがビールを…
 飛行機を降りると、雪国だった。

 1月21日、最高気温1度。フランクフルト国際空港よりほど近いスタジアムの“ドイチェバンク・パルク”へ向かう。雪こそ降っていないが、“白くなった夜の底”よろしく、彩度を落とした景色が広がる。

 暖冬が続いていた欧州だが、ここ数日の寒波でさすがのドイツ人も寒そうに見える。

 それでもビールをケースごと運ぶファン、特設スタンドでビールを飲む姿はいつものブンデス取材の光景だ。

 15時半のキックオフより30分ほど前、両チームがアップに登場した。鎌田がゲッツェと組んでボールを回す。長谷部はサブスタートとなり、ベンチコートを着たままでピッチに現れた。吐く息が白く映り込む。

 またシャルケ側に目を向けると――スタメン組の中に吉田に加え、上月も見つけることができた。

 ゴール裏の熱狂的なフランクフルトサポーターと、片隅に追いやられてなおこちらもまた熱狂的なシャルケサポーターの歓声の中、両チームの選手が入場してくる。上月はこれがブンデスリーガでのデビュー戦となった。

 シャルケの円陣では、日本代表での光景のように、この日はキャプテンマークは巻いていなかったが、吉田が士気を上げるような振る舞いを見せた。また円陣が解かれた後、上月に近寄ると、アドバイスをする姿が見られた。

鎌田vs吉田、上月のシュートがポストを叩く場面も
 キックオフ。両チームの順位とは裏腹に序盤はシャルケがポゼッションを高める。

 その中で上月は――この試合最初のファーストタッチこそピッチに足を取られて悔しがる姿を見せたが、右ウイングにポジションを取って積極的にボールを呼び込むと、果敢に縦への突破を図った。足元でボールを晒すようにコントロールすると、足を出してきた相手を嘲笑うかのように一瞬で縦へ抜け出す。

 また最終ラインに入った吉田は、チームに落ち着きを与える。そして正確なフィードで攻撃の活性化を図った。

 ただ、実力的に上回るフランクフルトが徐々に盛り返す。トップに入るコロムアニがフィジカルと機動力を活かして吉田の裏を取る機会が増えてくる。またボランチに入り、中盤に位置していた鎌田が一瞬の隙を突き、守備ラインの裏に抜け出してシュートまで持っていくがゴールは奪えなかった。

 そして22分、リンドストロームが華麗なドリブルで吉田の相棒マトリチャーニを抜き去り冷静にゴールを奪い切った。その後も試合はややシャルケペースで進む。

 鎌田のドリブルに吉田が対応に当たるシーン、吉田がコーナーからのヘディングシュートで決定機を迎えたシーン、上月のシュートがポストを叩くシーン、またフランクフルトのCKでは、鎌田のマークに上月が付く場面もあった。しかし両者得点のないまま1-0で前半を終えた。

 後半序盤も、負けるわけにはいかないシャルケが攻勢に出る。立ち上がりには、FKから上月が頭で合わせるがGKに弾かれてしまう。これには上月も思わず悔しそうな表情を浮かべた。

 61分、最初に交代のカードを切ったのはフランクフルト、上月と対面するクナウフが交代となった。これ以降マークが厳しくなり、上月の縦への突破は限られたものになっていったか。

 70分、フランクフルトは引き続きボレとブタの攻撃的カードを切る。74分、上月はデビュー戦としては大きな爪痕を残し、お役御免でピッチを後にした。

 前線に入ったボレと吉田が激しいやり合いを繰り広げる。しかし84分、ボレが吉田を振りきってゴール、また終了間際91分にはブタがダメ押しの豪快なシュートを突き刺した。

試合後には4人がそれぞれ言葉・握手を交わす場面も
 結果としては3-0とフランクフルトの圧勝にも見える。ただボール支配率、シュート数などではシャルケが上回っただけに、両チームに結果ほどの差は見られなかった。それでも交代出場の2人がそれぞれゴールを決めるなど、選手層の厚さあってこそのフランクフルトの勝利でもあった。

 シャルケの守備陣はなんとか吉田を中心に踏ん張っていたが、最後まで跳ね返し続けることはできなかった。試合終了後には、新旧の日本代表キャプテン、W杯代表チームメイトの鎌田と吉田、さらに長谷部と上月が言葉と握手を交わす様子も見られた。

 フランクフルトはこの勝利で順位を2位に上げた。2月に入るとCLも再開され、過密日程が続いていく。昨季はELを優勝した鎌田だが、今季はCLでどこまで活躍するのかにも興味は集まる。

 そしてシャルケは次節も上位RBライプツィヒが相手となるが、負けられない戦いが続く。

 その中で上月にはチームの救世主になり、さらに結果を残し続ければ森保一監督率いる日本代表の新たな力になるチャンスがある。

(「欧州サッカーPRESS」中島大介 = 文) 










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