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 闘いはピッチの中だけではなかった。サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で1日(日本時間2日)、スペインに逆転勝ちして決勝トーナメント進出を果たした日本代表は、初戦で強豪ドイツから歴史的勝利を挙げたが、第2戦はコスタリカに敗戦。「手のひら返し」のように、ネット交流サービス(SNS)で一部選手らに対する激しい誹謗(ひぼう)中傷が広がっていた中、選手たちは平常心を保とうとしながら試合に臨んでいた。


 スペイン戦で決勝ゴールを決めた田中碧選手(24)=デュッセルドルフ=は試合後、勝利の喜びを口にした後に表情を曇らせ胸の内を明かした。「コスタリカに負け、いろいろな選手がいろいろなことを言われていた。同じ国民なのになぜ一緒に戦ってくれないのか」

 コスタリカ戦後に非難が集中したのは、中途半端なパスで相手の決勝点につながるミスをした主将の吉田麻也選手(34)=シャルケ=らだ。吉田選手のインスタグラムには「キャプテン失格」「戦犯」といった試合に関するものだけでなく、「(日本に)帰ってくんな」などと吐き捨てるような言葉もあった。バックパスを多く選択した伊藤洋輝選手(23)=シュツットガルト=のインスタグラムにも「お帰りください」「コスタリカの12人目の選手」など見るに堪えない言葉が並んだ。

 そのような状況の中、チームはスペイン戦にどう向かったのか。GK権田修一選手(33)=清水エスパルス=は「やるべきことを変えないことが、僕らのメンタリティーで大事だった」と振り返る。ドイツ戦での勝利に浮かれることなく、コスタリカ戦の敗戦からも気持ちを切り替えた。いつも通りの練習を監督、選手、スタッフで心がけながら、一致団結して難局を乗り越えたという。

 状況を見かねて、今大会の試合解説をしている元日本代表の本田圭佑さん(36)は自身のツイッターで「伊藤洋輝さんに関して安易な批判はやめるべき」だと訴えた。2008年北京オリンピックの野球代表で大会中に失策を連発しバッシングを受けたG・G・佐藤さん(44)もコスタリカ戦後、「日本代表の誇りを胸に戦っている選手に戦犯という言葉を使わないであげて。言葉の力は、勇気や希望を与える応援に使おう」とツイートした。

 SNS上での度を越した批判や誹謗中傷は、今回のW杯に限らずスポーツ選手たちを苦しめ、社会問題となっている。昨年の東京五輪では競技結果などを受け、選手が過剰な非難や攻撃を受けたことが問題になり、国際オリンピック委員会(IOC)が大会中に警鐘を鳴らす事態となった。

 国際サッカー連盟(FIFA)も今大会前、期間中に選手を守る取り組みを始めることを発表。FIFAが出場選手のSNSアカウントを監視して差別や脅迫を示唆する書き込みを抽出し、違反者を法務当局に通報する方針を示している。

 スポーツ選手のメンタルケアに詳しい大阪体育大の菅生貴之教授(スポーツ心理学)は「FIFAの対応は、ともすれば言論統制のような印象にもつながるが、選手の重圧を考慮すれば表現の自由と相殺される。適切な措置だと思う」と評価する。

 来年3月の野球の国・地域別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)など大きなスポーツ大会が続く中で、SNSでの悪質な中傷に対する懸念は続く。菅生教授は今回のような手のひら返しの現象を「責任の所在が明らかにならないSNSの『ひずみ』の象徴だ」と指摘。「W杯でもマナーを称賛された日本人なら、良心に訴える余地はまだある」とした上で、競技団体などによる啓発活動や選手を守る対策の重要性も指摘した。【村上正(ドーハ)、岩壁峻、黒澤敬太郎】










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