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決勝トーナメント進出を懸けて激突する日本代表とスペイン代表。彼らの市場価値を比較してみると? photograph by Kiichi Matsumoto,Kazuo Fukuchi/JMPA

 さあ、雌雄が決するスペイン戦がやってくる。

 ドイツ戦で“これしかない”ゲームプランで勝利し、コスタリカ戦では“これだけが怖かった”やられ方で勝ち点を落とした試合を見て……感情の起伏が半端ないことになっている。ただこの4年間で数々の修羅場を経験してきた日本代表なら、この2試合で得た手ごたえと教訓を胸に“無敵艦隊”に挑むはず。その姿勢を願うしかない。


 ……と思って過ごしてたら、スペイン紙「マルカ」がTwitterで、日本メディアに直撃する動画を配信していた。ガビの顔写真を見せつつ、スマホの翻訳アプリを使って「ねえねえ、この選手知ってる?」といった感じで質問をぶつけている。何とも今どきかつスペインっぽいノリにちょっと笑ってしまいつつ、スペインにとってはガビが今大会期待する選手の1人であることが伝わる。

ガビ、ペドリ、アンスら若き才能が台頭
 W杯で初めてガビを知った人――コスタリカ戦であのエゲツないボレーシュートを決めた――のために説明すると、ガビは17歳時の2021年8月にバルセロナのトップチームでデビュー。同年9月のUEFAネーションズリーグでは史上最年少となる17歳62日でスペイン代表デビューを果たし、22年6月の同大会では最年少ゴールを記録。バルサでも主力に定着し、2022年の世界最優秀若手選手に与えられる「コパ・トロフィー」を受賞した。

 まさに飛ぶ鳥を落とす勢い。ドイツ戦の負傷によって日本戦への出場は難しいようだが……ペドリ、アンス・ファティ(ともに20歳)とともに、メッシやイニエスタが去って数年、停滞が続くバルサが復権を目指すための象徴である。

 ガビら若き才能がガンガン出てくるとともに、カルバハルやブスケッツら歴戦の勇士、そして東京五輪準決勝の決勝ゴールで悔しい思いをさせられたマルコ・アセンシオもいる……。そういえば東京五輪時に2カ国の「市場価格比較」をしたけど、今回はどうなんだろうか。移籍専門サイト「transfermarkt」のデータを引用して「両国の市場価格調査」をしてみよう。

1ユーロ=143円で市場価値を見てみると…
 まずは日本から。1ユーロ=143円(1年前より13円も上がっている! )で計算、年齢は11月30日時点のもの。

〈日本〉

GK
川島永嗣(20万ユーロ/2860万円/39歳)
権田修一(50万ユーロ/7150万円/33歳)
シュミット・ダニエル(150万ユーロ/2億1450万円/30歳)
DF
山根視来(170万ユーロ/2億4310万円/28歳)
谷口彰悟(180万ユーロ/2億5740万円/31歳)
板倉滉(750万ユーロ/10億7250万円/25歳)
長友佑都(40万ユーロ/5720万円/36歳)
冨安健洋(2500万ユーロ/35億7500万円/24歳)
酒井宏樹(170万ユーロ/2億4310万円/32歳)
吉田麻也(150万ユーロ/2億1450万円/34歳)
伊藤洋輝(550万ユーロ/7億8650万円/23歳)
MF
遠藤航(650万ユーロ/9億2950万円/29歳)
柴崎岳(100万ユーロ/1億4300万円/30歳)
堂安律(1200万ユーロ/17億1600万円/24歳)
三笘薫(600万ユーロ/8億5800万円/25歳)
南野拓実(1000万ユーロ/14億3000万円/27歳)
久保建英(1200万ユーロ/17億1600万円/21歳)
守田英正(700万ユーロ/10億1000万円/27歳)
伊東純也(900万ユーロ/12億8700万円/29歳)
鎌田大地(3000万ユーロ/42億9000万円/26歳)
田中碧(180万ユーロ/2億5740万円/24歳)
相馬勇紀(120万ユーロ/1億7160万円/25歳)
FW
浅野拓磨(300万ユーロ/4億2900万円/28歳)
町野修斗(120万ユーロ/1億7160万円/23歳)
上田綺世(200万ユーロ/2億8600万円/24歳)
前田大然(400万ユーロ/5億7200万円/25歳)
26人総額:1億5400万ユーロ/220億2200万円=1人当たりの平均8億4700万円

 おお、1人当たりの平均にすると8億円台なのか。まあ円安の影響というのもあるとはいえ、選手たちが着実に評価を上げていることが分かる。

 現在、日本代表選手で最高額なのは鎌田だ。

 W杯の出場2戦こそやや精彩を欠いてはいる。ただ所属するフランクフルトでは押しも押されもせぬプレーメーカーへと成長。21-22シーズンにヨーロッパリーグ優勝の立役者となり、22-23シーズンのチャンピオンズリーグでも日本人初となる3試合連続ゴールを決め、W杯後のステップアップのウワサが各国メディアで流れている。21年2月の段階では1600万ユーロ(22億8800万円)の市場価値だったから、この1年半で倍近く自らの価値を上げたことが分かる。

プレミアで活躍する三笘、冨安の市場価値は?
 今回のW杯で中核となり、今後の代表を引っ張る存在となる東京五輪世代はどれくらい変動しているのだろうか。両大会に出場した選手について、1年前と比較してみると……。

板倉(350万→750万ユーロ)
冨安(2000万→2500万ユーロ)
田中(170万→180万ユーロ)
久保(1500万→1200万ユーロ)
堂安(700万→1200万ユーロ)
三笘(180万→600万ユーロ)
相馬(80万→120万ユーロ)
前田(110万→400万ユーロ)
上田(90万→200万ユーロ)

 市場価値を上げている選手が多い。ただ、完全に私見だが“もうちょい上がってもいいんじゃない? ”と思う選手も。たとえば冨安は怪我に悩まされているとはいえ、名門アーセナルに欠かせないピースとなっているんだから。

 そして三笘。日本代表だけでなく、名うてのメガクラブ守備陣をも翻弄するドリブルと決定力を発揮している。年明け以降は市場価値が“倍々ゲーム”にはなるんじゃないか、いや、なんなきゃおかしいだろ……と遠く日本からヨーロッパへと訴えたくなる。

 今季活躍しているという点では、レアル・ソシエダ、フライブルクで結果を残している久保と堂安も同様だ。

 切なくなるのが国内組の市場価値が低めに抑えられている点。Jリーグの世界的価値向上も超微力ながら発信していかなきゃなあ、とおせっかいな使命感も覚える。

スペインを見てみると…やっぱりスゴい市場価格
 続いてはスペインを見てみよう。

〈スペイン〉

GK
R・サンチェス(3200万ユーロ/45億7600万円/25歳)
ラヤ(2200万ユーロ/31億4600万円/27歳)
ウナイ・シモン(2500万ユーロ/35億7500万円/25歳)
DF
アスピリクエタ(800万ユーロ/11億4400万円/33歳)
エリック・ガルシア(1800万ユーロ/25億7400万円/21歳)
パウ・トーレス(5000万ユーロ/71億5000万円/25歳)
バルデ(1500万ユーロ/21億4500万円/19歳)
ギジャモン(2500万ユーロ/35億7500万円/22歳)
ジョルディ・アルバ(500万ユーロ/7億1500万円/33歳)
カルバハル(1800万ユーロ/25億7400万円/30歳)
ラポルト(3800万ユーロ/54億3400万円/28歳)
MF
ブスケッツ(500万ユーロ/7億1500万円/34歳)
ジョレンテ(3500万ユーロ/50億500万円/27歳)
コケ(1800万ユーロ/25億7400万円/30歳)
ガビ(9000万ユーロ/128億7000万円/18歳)
ロドリ(8000万ユーロ/114億4000万円/26歳)
ソレール(3500万ユーロ/50億500万円/25歳)
ペドリ(1億ユーロ/143億円/20歳)
FW
モラタ(2500万ユーロ/35億7500万円/30歳)
アセンシオ(2500万ユーロ/35億7500万円/26歳)
フェラン・トーレス(3500万ユーロ/50億500万円/22歳)
ウィリアムズ(2500万ユーロ/35億7500万円/20歳)
ジェレミ(3800万ユーロ/54億3400万円/20歳)
ダニ・オルモ(4000万ユーロ/57億2000万円/24歳)
パブロ・サラビア(2000万ユーロ/28億6000万円/30歳)
アンス・ファティ(5000万ユーロ/71億5000万円/20歳)
26人総額:8億7700万ユーロ/1254億1100万円=1人当たりの平均48億2350万円

 全員合わせると、1200億円オーバーって! 

 東京五輪の際にも感じたが、市場価値は「10代の頃、プロキャリアをメガクラブからスタートさせている(=他クラブに引き抜かれないようにする)」「欧州各国リーグやCL、ELで大活躍する」「メガクラブに移籍してステップアップする」などの要素で大きく上がる傾向にある(年齢が30歳を超えると一気に下がっていく、というのも興味深いが)。

 現在のスペイン代表選手はレアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、バルサ、という国内3強はもちろんのこと、マンチェスター・シティ、PSG、RBライプツィヒなど各国強豪クラブに在籍する選手が多数で、おのずと市場価値が上がっていくのだろう。

ガビとペドリ2人で日本代表の総額を上回るなんて!
 そして東京五輪時も似た感じで憤った覚えがあるけど……ガビとペドリ2人で日本代表26人の総合価格を上回るとか、同じ人類なのに悔しい。

 とはいえ、サッカーの勝敗は市場価値で決まるわけではない。当然ながら90分を終えた時点でのスコアで決まるのだ。

 ドイツだって「浅野拓磨相手にナゾ走り」したルディガー(4000万ユーロ/57億2000万円/29歳)、そのスキルに苦しめながらも最終的には封じた司令塔キミッヒ(8000万ユーロ/114億4000万円/27歳)や19歳ムシアラ(1億ユーロ/143億円)など、市場価値50億円オーバーのスターがズラリと揃っていた。

 彼らを倒したように、スペイン相手にも勇敢に挑んで決勝トーナメント進出、さらには目標としている「ベスト8以上」に到達すれば、おのずと日本代表選手の価値も上がるはず。“現状の値札だけがサッカーの値打ちじゃない”というのを、世界に再び見せつけろ……と願いつつ、日本時間12月2日朝4時キックオフに向けて強いハートで起きていたい。

(「スポーツ百珍」茂野聡士 = 文) 










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