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「テ~バク」
 
韓国語で「すげえの来た」という意味だ。
 
これがソウルのスポーツバーで日本―ドイツ戦を観ていた韓国人たちから出てきたストレートな感情だった。試合終了直後に興奮した人たちがつぶやいた声だ。
 
カタールW杯グループリーグ日本-ドイツ戦を取材中の韓国の地で観た。
 
試合当日の昼、ソウルのアキバと言われる龍山でパソコングッズを買っていたら、店主のおじさんに「今日、日本の試合でしょ?」と声をかけられた。
 
「サウジの戦いにはかなり勇気づけられましたよ。やっぱりアジアの国って、体格もそうだし歴史もそうだし、サッカーではヨーロッパや南米に敵わないですよね。勝てるかも、って口では言いながらも内心は『難しいだろ』って思うもんです…だからサウジであれ、日本であれ、韓国であれ、私はアジアの国が活躍するのが嬉しい。そりゃ、自分の国である韓国が勝ち上がってくれれば嬉しいですよ。でもどの国でも喜びが湧いてきます。で、きょう日本が試合するのはブラジルでしたっけ?」
 
ちゃうよ。
 
大会前の盛り上がりがない。これが言われるのは日本と同様だ。それでも21日未明に開幕すると中華料理屋のお母さんがじっとイングランド―イラン戦に見入っていたり、バスの中でアプリを通じて観戦する若者の姿もチラホラと見えてきた。
 
いっぽう、試合前には日刊(イルガン)スポーツのキム・ヨンソ記者の本格的な分析も聞けた。
 
「ドイツも日本も結束力のあるチーム。面白い試合になると思います。韓国人の関心も高いですよ。ドイツは4-2-3-1のフォーメーションで、スペースを作り出すための数的優位を作るのが上手い。特にアタッキングサードに人数を割いてそれをやる。どの国もドイツとやるときはラインを下げて守備に集中するしかありません。日本は最終ラインのポジショニングがキーになると思います」
 
日本、昔はかわいらしくパスを繋いでましたよね?
 
試合当日はソウル市内のスポーツバーに「潜入」して観戦した。「日本人いますよ」ということは一切言い出さなかった。できるだけ黙っていた。なんなら試合前にわざとらしく韓国語の本を読んだりもした(むしろ目立った)。素の韓国の人たちの表情をウォッチングしたかったからだ。
 
前半から両国のチャンスに場内が湧いた。ドイツの幾多のチャンスにも、前半8分の前田大然のゴール→オフサイド判定にも湧く。
 
いっぽう前半39分、横に座っていた男性からこんな声が飛んだ。
 
「な~にしてんだ、日本?」
 
試合がつまらなくなる、という意味だった。確かに前半の日本はフィジカルコンタクトで負け、だからといって試合を落ち着けるべく短くボールを繋ぐことすら出来ず、前に蹴り出すような場面も多かった。
やべえ、この試合。そう思い、ハーフタイムにSNSに韓国語でこんな書き込みをしてみた。バーでは誰とも喋っちゃいけないからだ。
 
「日本は60分から70分までの間に3分でいいから自分たちの時間を作ろう。チャンスは2度。一度は決めて、引き分けよう。ただし2失点目を喫したらサヨナラだ」
 
前半を見る限り、それくらいのことを思った。
 
韓国の友人からこんな返信が入った。
 
「日本はフィジカルで勝てないね。まったく」
 
「頑張って。あきらめないで」
 
いっぽう、スポーツバーでは試合が進み、日本が逆転したあたりからますます"両国のチャンスに大声"という反応に変わっていった。日本の優勢に複雑な反応、みたいなことも内心期待したが、"そうはいかなかった"。
 
良いサッカーを見たい、という思いがあってそのなかに宿敵日本というキャラが存在する。そういう位置づけなんだと感じる。良いサッカーやオモロイものを見たら楽しい。宿敵が演者になってもそれまたオモロイ。それだけのこと。
 
試合が終わった瞬間、バーの中はみんなジャンプして大騒ぎするほどまでになっていた。
 
少し落ち着いて、試合中に筆者の横で「なにやってんだ」とつぶやいていた男性に「はい、日本から来ました」と話しかけた。そして「試合、どう見ました?」と聞いてみる。
 
「日本は戦略を本当によく立てたと思います。昔はパスを繋いでかわいらしくサッカーをしていたのに、今日は違って見えましたよね」
 
ただ「日本勝利」で余韻に浸る、というわけではなかった。試合が終わったら一斉にさっーと帰る。「めっちゃ面白かったW杯の試合のひとつ」という位置づけのようだった。
 
韓国と日本、連続してドイツに勝った
 
いっぽう、試合後にスマホでSNSを見てみると…韓国の友人から、かなりの数のお祝いメッセージが入っていた。
 
「おめでとうございます」
「めっちゃ強いな。狂いそうな勝利!これぞ日本サッカー!」
「こんな試合展開で勝つんだな!」
「おめでとう。ヒリヒリする勝利!」
 
多くの人からお祝いされるって、いいもんですね。なかには「韓国のネット掲示板でこんなのが話題になってるよ」とわざわざ写真を送ってきた友人も。
 
「ノイアー、2試合連続2失点」(2018年W杯のグループリーグ最終節にてドイツは韓国にも敗れ、その際は0-2だったという意味)
 
また、韓国と日本の国旗の下にこのフレーズをつけた画像も。
 
「男というものは通算成績1勝99敗でもその1勝を誇るもの」
「韓国、日本。ドイツ戦最新成績=1勝」
 
ドーハの奇跡、どう思います?
メディアでも日本の勝利は大きな関心を集めてい
る。国内最大のポータルサイト「NAVER」では、24日朝7時時点でニュースを掲載する全81メディア中5社(韓国日報、YTN、国民日報、ノーカットニュース、国際新聞)でアクセス数1位に。
 
うち2社が「日本がドイツに勝った」と報じ、2社は「ドイツが負けた」。残りの1社はドイツが試合前の集合写真で口を塞ぐポーズを見せた点を報じた。
 
筆者自身、試合直後から韓国の人気解説者のYouTubeに電話出演した。深夜にいくつか質問事項を投げられたが、そのなかに真摯だったか、ちょっとした意地悪だったかこんな質問もあった。
 
――ドーハの悲劇が起きた地で、ドーハの奇跡が起きました。どう見ていますか? 森保一監督はドーハの悲劇の当事者でもありますが。
 
はいはいはいはい。また来たかその話。当時、ドーハの悲劇の結果として奇跡的なアメリカW杯本大会出場を決めたのは韓国だったのだ。かつてはこの点をイジられ、ずいぶんと韓国サッカーファンと言い合いをしたものだ。ぶっ叩きそうになったこともある(いけません)。昨日はこう返した。ちょっとすっとぼけて。
 
「あ、ぜーんぜん気づきませんでしたね。目の前の勝負に夢中で。で、『ドーハの奇跡』って当時の韓国のことを言うんじゃないんですか?」
 
こうして夜は更けていった。収録を終え、再びスマホを観た。SNS上での現地でカタールに出向き、試合を観戦する韓国人の友人のこんな書き込みが印象深かった。
 
「街中で世界中の人が自分に"日本"と言って、褒め称えてくれる。こっちの気持ちもわかってくれって」
 
サウジアラビア、日本とアジア勢のいい流れが来ている。いっぽうでイランはイングランドに大敗。きょう24日に大会初戦のウルグアイ戦を迎える韓国はどっちに転ぶのか分からない。そういうプレッシャーを感じている、という意味だ。

吉崎エイジーニョ

ライター
吉崎エイジーニョ 日韓比較文化論・朝鮮半島論・サッカー全般。時事問題からK-POPまで、朝鮮半島関連のニュースを横軸でお伝えします。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルより正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。本名は吉崎英治。フォローお願いします。https://follow.yahoo.co.jp/themes/08ed3ae29cae0d085319/










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