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FIFA U-20女子ワールドカップでは、池田太監督率いるU-20日本女子代表チームが決勝の舞台まで上り詰め、準優勝に輝いた。U-20の背中を追うU-17(17歳以下)の選手たちが挑戦するFIFA U-17女子ワールドカップが10月11日~10月30日、インドで行われる。チームを率いる狩野倫久監督は、どんなサッカー人生を歩んできたのか。また、今大会に挑むU-17チームには、どんなキャラクターの選手たちが集まっているのか、今大会の見どころを教えていただいた。

~狩野倫久U-17日本女子代表監督に迫る~
──まず監督ご自身のことからお伺いしたいのですが、どんなきっかけでサッカーを始めることになったのですか?
「サッカーを始めるきっかけは、小学生のときに何かスポーツをしたくて、昔は野球の方がメジャーで、野球をやろうと、いくつかクラブを見て回ってるときに、たまたま保育園のときの友だちに道ですれ違ったんです。そのときにサッカーをやってるから、ちょっと来ないかと誘われて、サッカーの練習に行ったのがきっかけです」

──何歳のときですか?
「小学1年生から2年生に上がるときですね」

──よく覚えておられますね。
「結構、衝撃的なことだったので。道で偶然、友だちじゃないか、と車を止めて、父親同士も知り合いだったので喋って、サッカーにちょっと行ってみようということで行ったので、覚えてますね」

──運命的な感じですね。
「今思えば、そうですね」

──どんな選手時代を過ごされ、ブラジルに行くことになったのでしょうか?
「高校2年生のときにJリーグが誕生したのですが、Jリーグのテストを受けても、結果が思わしくなく、そこから『サッカーをやるなら本場のブラジルでチャレンジしたい』という思いでブラジルに行くことに決めました」

──本場のブラジルでやりたいという思いは、どのように芽生えたのですか?
「テレビだったり、ワールドカップだったり、色々なサッカーの情報を見る中で、ブラジルは技術的に長けているとか、自分がいた枚方FCが、技術や発想を大切にするクラブで、ユニフォームがブラジル代表と同じカラーだったことも一つの縁かもしれないですが、『行くならブラジルだ』と自然と思っていました」

──経緯を含め、行ってみて、どうでしたか?
「ブラジルに行きたいなと思っているときに、ちょうど、ブラジルのパルメイラスというクラブのU-20が、日本にサッカークリニックをしに来てたんです。そこに知り合いを通じて帯同させてもらって、親善試合の中に混ぜてもらったときに、パルメイラスの監督に『ブラジルでテストを受けてみるか』と言われ、二つ返事で『ハイ』と言っていました。親にも言ってなかったので、家に帰って、ブラジルに行きたいということで、行くことになったのですが、ブラジルに着いた初日が、声をかけてくれた監督さんが亡くなられた葬式の日で、着いてすぐに葬式に行きました。

『テストを受けてみるか、おまえだったらいけるんじゃないか』と言ってくれた監督が、いきなりいなくなってしまって、『1年やってダメだったら、もうサッカーは辞めて、日本に帰って違うことをやろう』と思っていました。

──当時、サッカー選手として、どんな野望を持っておられましたか?
「本場のブラジルでプロサッカー選手になるというのが大きな目標でした」

──ブラジルでの経験で印象に残っていることは?
「ブラジルには、日本とは全く違うサッカー文化がありました。町のおじさんやおばさん、普通に歩いてる人が、サッカー選手のことやサッカーチームのことだけじゃなく、色々なクラブの勝ち点や順位も知ってる。ブラジル代表の試合やワールドカップのときには、店や学校も休みになって、みんながサッカーを楽しむ国だというのがわかった。

ブラジルで『遊ぼうよ』って言えば『サッカーしようよ』という意味で、みんなサッカーが好きで、日本と違うのは、アンダー世代であっても、食費、寮費、医療費、学費などを全てクラブが保証してくれる。そうすると、家庭の生活費が一人分浮くわけです。プロサッカー選手になってお金持ちになるというのはサクセスストーリーなので、選手たちは、日常の中でのハングリーさとバイタリティを持ってる。ブラジル特有の明るく、サンバを踊り『人生を楽しく』というのは日本とは違いました」

──ブラジル人の中に割って入ってくる日本人に対しては、どうでしたか?
「最初は『何しに来たんだ』というのがありました。溶け込むには、言葉を覚えることが大事だと思っていたので、ある程度言葉を覚えてから行って、コミュニケーションは非常に大事だと実感しました。ピッチの中でも、最初はボールが回ってこないことも多かったのですが、コミュニケーションから、少しずつ自分のプレーが出せるようになった。3ヶ月くらい経ってからのことです」

──ブラジルでの挑戦は、どうでしたか?
「選手としてというより、私自身の人生に大きな影響を与えたことは間違いありません。ブラジルに行ってダメだったら、今、サッカーと縁が切れている可能性もあった。『一分一秒をムダにしない』、『今を生きる』、『目標に向かって今、全力でやる』ということを学びました。同じピッチで戦う仲間の姿を見て、日頃から夢や目標に向かう大切さと失敗しても前向きにチャレンジすること、ブラジル人特有の陽気さから『常に前向き』にということを学びましたね」

──ブラジルでは、ボランチのポジションをされていたのですか?
「そうです。守備的ミッドフィルダーで、『相手のキーマンを潰す』という役割をする選手でした」

──日本に帰ってきて、指導者となられるまでの経緯は?
「帰国後は、目標やチャレンジのあるクラブを選びました。JFLで優勝して、そこからJリーグに上がるというより、そこで目標を達成したという一つの区切りとしてクラブが上がらない判断をしたときに、指導者になる話をもらって、コーチになることにしました。そこからが指導者のスタートで、28歳~29歳のことです」


──指導者としての世界への挑戦、野望は?
「やるからには、一つ一つ与えられた仕事を全うすることを大切にしていますが、世界で活躍できる指導者になりたいと思っています」

──そんな中で、ご自身にとって、日本代表の監督をするというのは?
「サッカーファミリーの一つのカテゴリーの日本代表監督ということで、非常に責任が重い仕事です。U-17は、その年代以下の指導者が育てて下さった初めの代表カテゴリーです。世界大会に向かい、さらにU-20やなでしこに繋がる選手を輩出していく、その強化と育成と普及。上に繋ぐというところで、非常に大きな責任を感じて仕事をしています」

~ワールドカップに挑むU-17日本女子代表チームに迫る~
──高校生年代の日本女子代表を見られて、どうですか?
「この年代は、男子も女子も多感な時期で、感受性豊か。ポジティブにチャレンジする気持ちが、特に女子選手にはあります。前向きな姿勢があるので、チャレンジできる環境や雰囲気作り、前向きな言葉がけをスタッフ全員、心がけています」

──監督から見て、どんなキャラクターの選手が集まったチームですか?
「団結力があって、底抜けに明るい。何かひとつの目標に対して、突き詰めて取り組んでいけるチームです。女子選手特有の明るさがあって、何もないところでもグループで話したり、楽しそうに笑ったり。同じ時間を共有するだけで、仲間としてコミュニケーションをとれて、楽しさがある。それがひとつのグループではなく色々な輪ができて、色々な選手同士の仲がいいのがこのチームのいいところだと思います」

──この合宿中には、厳しい言葉をかけたれたこともあったそうですね。
「気づきの部分で『自分たちの目標は何なのか』ということ。『目標に対して、自分たちの取り組みは今どうなのか』と現在地を見て、『本当に到達できるのか』というところで、怒るとか叱るとかではなく、もちろん監督という立場はあるけれど、同じ目標に向かうサッカー仲間なので、問題提起をしたり、逆に、『ここはいいぞ』、『これを続けていこう』という話をしたり、気づきを与えるようにしています」

──今回は、具体的にどんなお話をされたのですか?
「生活が長くなるに連れて、自分たちで生活を作っていく必要があるわけですが、代表チームとしてとか、日常置かれている学生という立場とか、色々な立場を見失わないようにしていこうと言いました」

──監督がチームの中で、頼りにしている選手は?
「キャプテンの中谷莉奈や副キャプテンの谷川萌々子です。本人たちにも、他の選手たちにも、『キャプテン、副キャプテンだからといって特別する仕事はない』と話しています。でも、彼女たちのプレーのパフォーマンスや日常的に他の選手にかける言葉、立ち居振る舞いは頼りにしています」 

──キャプテンの中谷選手はどんな存在ですか?
「わかりやすく言えば、日本代表の宮本恒靖であり、長谷部誠だと思ってます。真摯に取り組み、チャレンジしていく。中谷は12歳のときから知っていますが、精神的な成長、プレー面の成長を見たときに、信頼のおける選手だと思います。大阪人なので、明るいところも買っています」

──副キャプテンの谷川選手はどうですか?
「谷川は、プレー面でひっぱっていける。そこがチームでの信頼感や安定感になっています。言葉だけではなく、プレーで選手に見せられるというところで大きな存在です。それを上手くチームに浸透させ、影響を与えてくれたらいいなと任せています」

──10番を背負う柴田瞳選手は?
「ゲームメイクができて、スルーパスが出せる選手で、技術的にも優れています。このチームには、色々なタイプの選手がいるのですが、柴田はスルーパスが出せる、展開ができる、ドリブルができるというバリエーションの多い選手です」

──チームを盛り上げるのは、白垣うの選手ですか?
「白垣うのは明るい。まあ全員明るいんですけど、音頭を取り始めたら、乗っていくのが白垣うのかな(笑)」

──充実した日々を送られていると思うのですが、開催地であるインドのゴアに入られて、感触はいかがですか?
「UAEからインドに入って、選手たちも『決戦の地』ということで、より一つ一つのトレーニングに集中力高く臨んでいるという感触です。本番をイメージして、選手たちはコミュニケーションを多く取って、プレー中も色々なアイデアを出しながら、選手同士で修正を加え『こうしてみよう』というシーンがトレーニング中に見られるようになって、本番に向けた準備がより一層、進んでいるという印象です」

──試合が近づいてきて、監督ご自身はどういう心境ですか?
「持ってる力を最大限に発揮させることが私の使命ですので、選手がピッチで躍動できる雰囲気作りやピッチにおける準備など、日々必要なことを追求し、こなしているというかんじです」 

──暑さが厳しく、頭を働かすのも大変だと思いますが、現地の様子はどうですか?
「UAEで暑さの中でトレーニングをし、シュミレーションしてきましたので、インドに入って、少し涼しく感じています。そういった意味では、良い時期にUAEでキャンプをし、暑熱対策や感染対策、コンディション作りをしてインドに来れた。インドに入った時期も含めて、非常に良かったと思っています」

──試合までの残りの時間は、どのように調整される予定でしょうか?
「グループステージが3試合ありますので、3試合に向けての準備が必要だと思っています。もちろん、初戦のタンザニア戦が大きなポイントになりますが、試合が始まれば、中2日で次の試合がきますので、コンディション調整もあり、次に向かう調整は多くはできませんので、グループステージ3戦に対してしっかりと準備をしています」

──グループステージ3試合や優勝に向けて、キーになる試合や見通しはいかがですか?
「最初のタンザニア戦は、『大会の波に乗る』という意味で非常に重要で、1戦目、2戦目が大きなポイントになると思っています。チーム全体で、そこに向けて調整を図っています」

──グループステージ突破後、優勝に向けての展望はいかがですか?
「他国の分析も進めていますが、一戦一戦しっかりと戦っていくことに照準を合わせ、全力で自分たちの強みを生かして戦っていきたい。その結果として優勝できれば一番いいなと思っています」

──10月6日に行われた なでしこジャパンの国際親善試合は、みんなで観られたのですか?
「ちょうど休憩時間で、それぞれ個別に観ていました。選手たちはいつも、U-20やなでしこの活動を気にして観ているので、今回も選手たちの勇気になっていると思います」

──その試合ではU-20の選手たちが、なでしこジャパンでデビューしましたが、監督から選手たちに伝えたことはありますか?
「いつも言っていることですが、『なでしこにチャレンジできる立場でもあるからこそ、今何をすべきか』と。『憧れでもあり、近くて大きな目標でもあるので、今やるべきことをしっかりとやっていれば、必ず、上のカテゴリーでも活躍できる」と伝えています。同じチームの先輩や、今まで一緒にやった先輩たちがU-20や上のカテゴリーで成果を出しているので、身近に感じていると思います。浜野(まいか)選手や藤野(あおば)選手がU-20で活躍して、なでしこで試合に出たというのは、選手たちの心に刺さる部分があったんじゃないかと思います」

──監督が今大会で目指していることと楽しみにしていることは?
「ワールドカップという舞台での国と国との真剣勝負です。色々な大陸のチームと対戦できることを楽しみにしてますし、選手たちが世界の舞台でアグレッシブに躍動する姿を楽しみにしてます。立ち上げ当初に掲げた優勝という目標に向けて、我々スタッフも選手と一丸となって、今までやってきた成果が出せるように、一戦一戦、大切に戦っていきます」

──選手のここを見てほしいという監督からのおすすめポイントは?
「アグレッシブに戦う力強さは伝わると思いますが、1プレー1プレー真摯に向き合う姿、最後まで諦めずに全力でプレーする姿、仲間のために走るひたむきさ、なでしこらしい明るさや礼儀正しさも選手たちの良さですので、スタートから終わりまで、選手たちのサッカーを見ていただきたいです」

──そのほか、何かPRがあれば。
「世界の舞台で選手が躍動することを楽しみにこれまでやってきました。コロナの状況で活動が自粛になったり、学校が休校になったり、色々なものが中止や延期になってきた選手たちです。世界の舞台で思い切ってチャレンジしてほしいですし、それを多くの方に観ていただけたらと思います」

──最後に、監督が勝つためにインドまで持っていっているラッキーアイテムは?
「中3の息子と小4の娘がいるのですが、家族がメッセージを書いて作ってくれた家族の力が込もったお守りを持ってきています」

文・写真:Noriko NAGANO

Noriko NAGANO 










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