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チャンピオンズリーグ(CL)グループリーグ第3節。1勝1敗同士の対戦となったフランクフルト対トッテナム・ホットスパー(スパーズ)の一戦は、パッとしない低調な一戦となった。その理由と鎌田大地は深く関わっていた、と見る。


 鎌田は後半31分、MFジブリル・ソウ(スイス代表)のサイドチェンジ気味の対角線パスを右足のアウトで受けると身体を向き直し、右足のインフロントで巻くように、ペナルティエリア左角付近からゴールの枠の右角を狙った。背後のタッチライン際を、左ウイングバックのルカ・ペレグリーニ(イタリア代表)が縦に、まさに囮のような動きで走ったため、シュートは打ちやすい状態にあった。スパーズの対応はかなり緩慢だったにもかかわらず、鎌田のシュートはキレを欠いた。抑えの利かない、吹かすようなシュートは、この日の出来を象徴するようなプレーだった。

 左45度から右足で巻くようなシュートを放つ選手と言えば、オールドファンは、アレッサンドロ・デル・ピエロを想起するはずだ。その左45度は別名「デル・ピエロ・ゾーン」と言われた。CLでもこの位置から鮮やかなシュートを何発か蹴り込んでいる。

 当初、デル・ピエロは4-4-2の左サイドハーフだった。トップ下がよく似合う10番タイプの選手ながら、プレッシングを重視するユベントスの4-4-2上には、彼の適性にマッチしたポジションは存在しなかった。

 だが、デル・ピエロはその問題を克服した。左サイドからゲームを組み立てた。そのうえゴールにも絡んだ。デル・ピエロ・ゾーンはその産物になる。

 しかし鎌田は、左45度が得意ゾーンではなさそうだ。後半31分のシュートにそれは現れていた。蹴る前から決まりそうな雰囲気はしなかった。そもそも左サイドが苦手そうだった。

 フランクフルトはこの日、4列表記にすれば3-4-2-1となる3-4-3でスパーズに臨んだ。相手ボール時になると、その3-4-2-1は、必然的に5-4-1でブロックを敷く体制に変化した。

居心地が悪そうだった左サイド

 3-4-2-1では2シャドーの左に位置する鎌田だが、5-4-1になると4の左として、タッチライン際付近まで張り出すことになる。相手ボールに転じると10メートル程度、左に移動するわけだ。

 そこで攻守が切り替われば、デル・ピエロが務めた4-4-2の左サイドハーフと、求められるものは同じになる。しかしそこに鎌田の適性はない。居心地が悪いのだろう。気がつけば、真ん中付近へ移動していた。

 鎌田の適性に最も近いポジションは、先の日本代表戦(アメリカ戦、エクアドル戦)でプレーした4-2-3-1の1トップ下になる。森保監督が布陣を4-3-3から4-2-3-1に移行したのも、"鎌田ありき"で考えたからに他ならない。だが、フランクフルトのオリバー・グラスナー監督は、そこに鎌田を据えようとしない。森保監督のように鎌田ありきで戦っているとは言えないのだ。

 CL初戦のスポルティング戦では、4-2-3-1を採用しながら、鎌田をその3の左に据えた。そしてこの時も、鎌田は自ずと真ん中に入った。守備的MFのような立ち位置で長い時間プレーした。

 3-4-2-1的な3-4-3で臨んだこの日のスパーズ戦も同様だった。守備的MFの高さまで下がってプレーする機会が目立ち、ポジションが判然としない選手になっていた。相手ボールに転じた瞬間こそ、5-4-1の4の左に戻ったが、マイボールの際、フランクフルトの左サイドはウイングバックが孤立することになった。フランクフルトは顕著な左右非対称に陥った。その結果、左サイドからの攻撃は全く機能しなかった。鎌田のシュートで終わった、先述した後半31分のプレーぐらいに限られた。

 4-2-3-1の1トップ下でプレーする鎌田が見たいとは率直な感想だが、たとえば、似たような癖を持つ香川真司や南野拓実との違いを挙げれば、守備的MFでも違和感なくプレーできることだ。さらに言うならば、センターフォワードに近いポジションでもプレーできる。

守備的MFとしての資質にも注目

 いわゆる「トップ下=10番」のポジションでしかプレーできなさそうに見える香川や南野とは、適性エリアが異なる。縦幅が彼らより長いのだ。1トップ(0トップ)からセンターバック、この日も長谷部誠がフランクフルトでプレーしていたリベロまで、こなすことができそうなセンタープレーヤーと言うべきか。

 鎌田がチームと交わした契約は今季いっぱいだ。今冬のマーケットで移籍しないと、それに伴う移籍金はゼロになる。チームは放出の方向で考えているはずである。鎌田が探し求めるべきは1トップ下で起用してくれそうなチームだ。

 フランクフルトより、どうやらW杯本大会でも1トップ下で起用されそうな森保ジャパンのほうが、ポジション的なストレスはない。鎌田にとって、CLを戦うフランクフルトより、W杯を戦う森保ジャパンのほうがアピールの場となる可能性がある。

 低い位置まで下がりたがるクセを森保ジャパンで活かしてみる手もある。守備的MF鎌田。セルヒオ・ブスケツあるいはフレンキー・デ・ヨング(ともにバルセロナ)的な資質を、筆者は鎌田には感じるのだ。

 フランクフルト、スパーズのグループDで、最も好印象を抱くチームはスポルティングになる。この日は不運も重なりマルセイユに大敗(4-1)したが、グループリーグ突破は堅いと見る。所属する守田英正も、鎌田より乗っているプレーを披露した。CLでの活躍がW杯にどう関係するか。目を凝らしたい。

杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 










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