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【スペイン発コラム】中井がデビューを飾ったBチーム(カスティージャ)とは?

 MF中井卓大が9月25日、レアル・マドリード・カスティージャでの公式戦デビューを飾った。


 レアルにはカリム・ベンゼマやルカ・モドリッチ、ヴィニシウス・ジュニオールなどの世界的スターが所属するトップチームを頂点として、その下に “ラ・ファブリカ(工場)”の愛称で知られる下部組織(15チームで構成)が存在するが、優秀な選手を数多く輩出する欧州屈指の育成機関として誉れ高い。

 今季、プリメーラ(1部)20チーム中17チーム(46人)、セグンダ(2部)全22チーム(47人)にレアル・マドリードの下部組織出身選手が所属し、優勝争いのライバルであるFCバルセロナでマルコス・アロンソ、アトレティコ・マドリードでセルヒオ・レギロン、マリオ・エルモソ、マルコス・ジョレンテ、アルバロ・モラタ、サウール・ニゲスがプレーしていることは、その素晴らしさを物語る一例と言えるだろう。

 このような実績を誇る“ラ・ファブリカ”において、中井がデビューを果たしたカスティージャは、トップチームに次ぐBチームという位置付けで、今季はプリメーラ・ディビシオンRFEF(3部)のグループ1に属している。

 カスティージャではこれまで、サンティアゴ・ベルナベウ、ミチェル・ゴンサレス、エミリオ・ブトラゲーニョ、マルティン・バスケス、マノーロ・サンチス、グティ、ラウール・ゴンサレス、イケル・カシージャスなど、クラブの歴史を彩った選手たちが多くプレーしてきた。

 そして今季、その出身者としてトップチームにダニ・カルバハル、ナチョ・フェルナンデス、ルーカス・バスケス、マリアーノ・ディアスの4人が在籍。この中でナチョが唯一、 “ワン・クラブ・マン”としてレアル・マドリード一筋でプレーしている。またフェデリコ・バルベルデもカスティージャに1年在籍し、ヴィニシウス、ロドリゴ・ゴエスもプレー経験がある。

 さらに今月スペイン代表に招集された選手に目を向けると、カルバハルのほか、モラタ、M・ジョレンテ、ディエゴ・ジョレンテ(リーズ・ユナイテッド)、パブロ・サラビア(パリ・サンジェルマン)が、かつてアルフレッド・ディ・ステファノ(カスティージャのホームスタジアム)で切磋琢磨した選手たちだ。

 また、往年のマドリディスタにとっては忘れられないカスティージャのエピソードが1つある。それは各クラブのBチームが国王杯参加を認められていた時代、当時セグンダに属していたカスティージャが1979-80シーズンに決勝戦まで上り詰め、トップチームとサンティアゴ・ベルナベウで優勝を争ったことだ。兄弟対決の結果はトップチームが6-1で圧勝。ジャイアントキリングとはならなかったが、レアルサポーターにとって非常に熱い一戦であったのは間違いない。

トップチームまであと一歩も…ここから先に待ち受ける険しい道
 今季のカスティージャメンバーは23人で構成され、そのうち18人が下部組織出身の選手たち。このなかでMF中井、DFマルベル、MFハビエル・ビジャール、MFブルーノ・イグレシアスの4人が今季、フベニールA(U-19)から狭き門をくぐり抜け昇格した。中井は2014年のアルビンA(U-12)加入後、順調に8カテゴリーをステップアップし、カスティージャまで辿り着いていた。

 一方、既存のメンバーはGK=ルイス・ロペス、ルーカス・カニサレス、DF=ヴィニシウス・トビアス(※昨季途中にシャフタール・ドネツクから期限付き移籍で加入)、ラファ・マリン、アルバロ・カリージョ、パブロ・ラモン、MF=マリオ・マルティン(※登録は今季だが昨季カスティージャで20試合に出場)、ジネディーヌ・ジダンの三男テオ・ジダン、カルロス・ドトール、セルヒオ・アリーバス、ピーター・ゴンサレス、オスカル・アランダの12人だ。

 これに完全移籍のMFアルバロ・レイバ、MFラファエル・ジョレンテ、FWノエル・ロペス、期限付き移籍のFWイケル・ブラボ、期限付き移籍から復帰したGKマリオ・デ・ルイス、DFルーカス・アルカサル、MFアルバロ・マルティンの7人が加わっている。

 一方、昨季のチームを支えたセルヒオ・サントス(ミランデス)、マルビン・パク(ラス・パルマス)、アントニオ・ブランコ(カディス)、フアンミ・ラタサ(ヘタフェ)などが期限付き移籍でチームを離れ、トニ・フイディアス(ジローナ)、マリオ・ヒラ(ラツィオ)、ミゲル・グティエレス(ジローナ)、アンドリ・グジョンセン(ノルシェーピン)などが完全移籍した。

 また今季からFIFAの新規定により、他クラブに期限付き移籍できる選手が最大8人に制限されているため、レアルは2015年に廃止したCチーム復活プロジェクトを開始している。これにはフベニールAからカスティージャに昇格できなかったものの、契約を打ち切るには惜しい選手たちの受け皿にする狙いがある。

 将来的にカスティージャの1つ下のCチームにする予定で、すでにテルセーラ・ディビシオンRFEF(5部)のRSCインテルナシオナルを買収し、昨季まで中井とチームメイトだった選手たちが多数在籍している。しかし現行の規制による法的リスクを回避するため、今季はレアルとは別組織として活動する。この手法は以前、クラブが女子チームのCDタコンを買い取り、後にレアル・マドリード・フェメニーノと改名し、女子トップチームを創設した時と同じ流れである。

 厳しい競争を勝ち抜いてきた中井はトップチームまであと一歩のところまで辿り着いた。しかしここから先はさらなる険しい道となる。なぜなら近年、トップチームに昇格した選手はごくわずか、さらに定着した者はいないためだ。

 中井のように下からステップアップしてきた選手の中で、最後にトップチームで一定の地位を確立したのは、カスティージャに3年間所属し、エスパニョールで1年間の武者修行を経て、2015-16シーズンに昇格したルーカス・バスケス。また、アクラフ・ハキミ(現パリ・サンジェルマン)が2017-18シーズン、レギロンが2018-19シーズンにそれぞれトップチームまで上り詰めたが、わずか1年で移籍した。一方、カスティージャ経験者でトップチームに加入したのは2季前のマルティン・ウーデゴールが最後だが、出場機会が少なくわずか半年でアーセナル移籍を決断した。

 中井のプロ人生はまだ始まったばかり。ユース年代とはまた違った大きな困難にぶつかることが多々あるだろうが、“日本人初のレアル・マドリードプレーヤー誕生”に向け、大きな期待をせずにはいられない。

[著者プロフィール]
高橋智行(たかはし・ともゆき)/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

高橋智行 / Tomoyuki Takahashi










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