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 カタール・ワールドカップ(W杯)に向けた強化として、9月のドイツ合宿ではキリンチャレンジカップ2022のアメリカ代表戦(2-0〇)、エクアドル代表戦(0-0△)に臨んだ日本代表。森保ジャパンを追い続けてきたスペイン紙『as』の試合分析担当ハビ・シジェス氏の目に、スペインやドイツと同居する本大会で活躍が期待されるキーマンたちのパフォーマンスはどのように映ったのだろうか。

文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

日本代表に矛盾が起きている理由

 日本はカタールW杯を目前にして臨んだ二つのフレンドリーマッチで、二つの異なる感触を手にしている。アメリカ戦はボールを保持していないときの良質な組織力、トランジションの鋭さが光り、片やエクアドル戦は……いまいち冴えなかった。自分たちの思い通りのゲームにできず、両サイドで相手に上回られ、セットプレーにおける守備の脆弱さをまたも露呈してしまった。

 全体的な印象で言えば、日本には確信がありながらも、しかし迷いも捨てられずにいる。その矛盾が起きる理由はれっきとしている。森保一監督は進むべき方向を理解しているように思えるが、日本代表というチームはハンドルがききづらいのだ。彼らには良い日もあれば悪い日もある。W杯では、諸刃の剣である。

 森保監督が求めるのは、組織立っていて、力強いカウンターを仕掛けられるチーム。アメリカ戦で披露したアグレッシブなプレスはW杯でも絶対に必要になる。たとえドイツ、スペインを相手にしてもだ。なぜならば日本はボールを奪い、少ないタッチ数で攻撃を形づくるときにこそ最高の日本になれる。少なくともドイツ、スペインと対戦する際にはそれこそが彼らの強み、適した戦い方、勝負の解決方法になるはずなのだ。

MF遠藤航

 遠藤航はすべての扉を開くマスターキーの持ち主だ。円熟のときを迎えつつある29歳のシュトゥットガルトMFは、守田英正、田中碧という優れた護衛を従えながら中盤を統治しなくてはならない。アメリカ戦では日本のパフォーマンスへの影響力、そのリーダーシップを目に見える形で示し、反対にエクアドル戦では不在によって逆に存在感を見せつけている。エクアドル戦、遠藤は67分から途中出場を果たしたが、彼のいない日本はエクアドルの攻撃にさらされても修正を施すことができなかった。

 遠藤はすべてのチームメートに対してポジティブな効果をもたらせる選手だ。その役割はボールを的確に配ることから始まり、ポゼッションをする中で大きなリスクこそ冒さないものの、アタッカーや前進する両サイドバックにパスを出すタイミングはしっかりと心得ている。そしてアメリカ戦の彼は、まさにチームにバランスをもたらす者となり、プレスに行くのか後退するのかを正確に判断していた。先を読んで仕掛けられるそのタックルは、守備時1-4-4-2となる日本のボール奪取の要である。

 遠藤は自身の背後の状況を把握して、きっちりリスクを管理しながらボール保持者に襲いかかり、ボールを奪ったらすぐさま味方にパスを出す。日本は彼がいれば相手のゲームを作ろうとする流れを断ち切れる(アメリカ戦ではマッケニー、アダムズ、デ・ラ・トーレがそのプレーに苦しんでいた)。加えて、日本がピッチ中央からやや下がり目で守るとき、遠藤だけがDFラインと適切な距離を守り、ポジショングにおける穴を作らなかった。そうした彼の長所はドイツやスペインを相手に守勢に回るとき、極めて重要なものとなる。

MF伊東純也

 遠藤と並んで必要不可欠な選手が、伊東純也だ。日本は2列目に良質アタッカーを揃えるが、その中でもランスMFこそが最たる違いを生み出している。誰よりもバーティカルかつ進取果敢で、対面する相手に怯むことなく立ち向かう……クロスも突破力もあり、そして酒井宏樹との連係も見事だ。アメリカ戦では酒井にスペースを与えるべく何度も中央に絞っていた。ボールが左サイドにあるとき、伊東は右に開くか、それとも内に入って中継役になるかをその都度、ちゃんと判断している。フィニッシュフェーズのプレーも勘が良い。

 伊東の精力的に動き続ける様は、攻守両面で決定的な役割を果たすことを予感させる。日本がボールを持っていないときには相手選手がうんざりするほど追いかけ回し、ボールを持ったときにはそれを自分のところに届けさせるために走り回る。そうしてパスを受けると相手のDFとMFのライン間でスピードあふれるプレーを見せるのだ。また、アメリカ戦でのゴールに象徴されるように、鎌田大地との波長も合っているようである。

MF久保建英

 久保建英は、少なくとも落ち目にあった昨季は遠藤や伊東のような存在ではなかった。ところが完全移籍でレアル・ソシエダに加入した今季、彼は“将来を約束された選手”としての約束を、ついに果たそうとしている。

 アメリカ戦の久保は「凄すぎるパフォーマンスを披露した」とまでは言えない。が、自信を持ってプレーしていることは手に取るように分かる。久保の才能、クオリティーの高さには議論の余地などなく、加えて今はピッチ上で良質な動きを見せるようになった。彼が進化を遂げた理由は、そこにこそある。

 久保の動きはこれまでとは異なり、相手守備陣にとって見え透いておらず、読みづらいものになった。中央から攻め込んだと思えばサイドに開いたり、ボールを受けるために後方へと下がったり、サイドバックの背後やサイドバックとセンターバックの間を狙ったり……久保は以上のようなプレーを、スペシャリストとも呼べるほど巧みなワン・ツーを駆使しながら実践していく。少ないボールタッチ数で攻め込みたい日本にとって、そのプレーはぴったりとはまる指輪だ。前レアル・マドリーMFは、まさしく状況を逆転させたのである。

 森保監督にレギュラーとして扱われてこなかった久保は、今季序盤につまずいていれば、もしかしたら招集されるかすら怪しくなっていたかもしれない。しかし今は一転して、カタールで日本の攻撃を牽引する予感すら漂わせている。少なくとも、心でもプレーでもそうするための準備はできているはず。現在の久保はネームバリューだけでなく、実力でも遠藤や伊東のように日本の主役になり得る存在なのである。

文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』試合分析担当、翻訳=江間慎一郎 










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