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 今夏にリーグアンのモナコへ移籍した、日本代表FW南野拓実(27)が早くも正念場を迎えている。日本時間12日未明に行われたオリンピック・リヨン戦をベンチで見届けた南野は、これでリーグ戦を2試合続けてリザーブで終えた。ピッチに立ってもフランスのメディアから低い評価とともに酷評され続ける状況は、南野を主力の一人にすえてきた森保一監督(54)のカタールワールドカップ構想にも大きな影響を及ぼしてくる。

仏メディアも酷評「輝きを放てなかった」
 ホームのスタッド・ルイ・ドゥに、難敵リヨンを迎えたリーグアン第7節。後半にセットプレーから立て続けに2ゴールをあげ、相手の反撃を1点に抑えた末に鳴り響いた、モナコの勝利を告げるホイッスルを南野はベンチで聞いた。
 日本時間5日未明のニースとの前節に続く出番なし。その間の同9日未明に行われた、レッドスター・ベオグラード(セルビア)とのUEFAヨーロッパリーグ初戦では先発するも、0-0で迎えた後半12分に最初の交代でピッチを去った。
 試合は同29分にFWブレール・エンボロがPKで決めた1点をを守り切ったモナコが勝った。しかし、南野の代わりにピッチに立った選手がPK獲得に関与した状況もあり、フランスのメディアはいっせいに日本代表の「10番」へ辛辣な言葉を浴びせた。
 たとえばフランス全土で発行されているスポーツ紙『レキップ』は、10点満点中で3点の低い評価を与えた上で、南野に対して厳しい言葉を並べている。
「ヨーロッパのカップ戦でも、日本人選手はいつも通り輝きを放てなかった。自信を失っていた彼は、ボールコントロールでさえも苦しんでいた。自らが犯したミスを埋め合わせようと、ほとんどの時間を必死になって走っていた」
 低い評価とともに南野が酷評される状況は、いまに始まったものではない。
 日本時間8月3日のPSV(オランダ)とのUEFAチャンピオンズリーグ3次予選の第1戦を皮切りに、ここまで公式戦6試合、合計319分間にわたってピッチに立った。しかし精彩を欠き、ほとんどインパクトを残せなかった過程で「透明人間」と揶揄され、同9月1日のトロワ戦後には「我慢には限界がある」とまで指弾された。
 プレミアリーグの名門リバプールから、1800万ユーロ(約26億円)と言われる移籍金とともに4年契約で今夏に加入。即戦力の呼び声が高かったからこそ、期待に見合ったパフォーマンスを見せられていない現状に対する反動も大きくなる。
 モナコもチャンピオンズリーグ出場を逃し、リーグアンでも南野が出場した3試合は1分け2敗とひとつも勝てていない。当初は「特定の選手名をあげて評価するには早い」と発言していた、ベルギー出身のフィリップ・クレマン監督も、南野をリザーブに回したニース戦で勝利した結果を受けて構想の一部変更を決めたのだろう。
 リヨン戦でもリザーブに甘んじた南野の序列は、ヨーロッパリーグで与えられたチャンスを生かせなければさらに下がりかねない。結果を出せない現状に焦燥感を募らせ、メディアによる酷評も相まって自信を失っていく悪循環の渦中にいる。
 森保ジャパンに招集された6月シリーズで、長丁場のリーグ戦の真っ只中でカタールワールドカップを迎える新シーズンへ向けて、南野はこんな言葉を残していた。
「試合にしっかり出場して、最高のコンディションでワールドカップを迎えたい。もちろん、まだまだレベルアップしていかなければいけない」
 ザルツブルク(オーストリア)からリバプールに加入して以来、特に攻撃陣にタレントが集まる名門クラブのなかで出場機会が限られてきた。それでも昨シーズンはカップ戦を中心に、公式戦で10ゴールをマーク。8度目の優勝を果たしたFAカップでは出場4試合で3ゴールをあげて、大会のベストイレブンに選出された。
 リバプールとの契約を2年間残している状況で、しかし、南野は最初に関心を示してくれたモナコへの完全移籍を決めた。リーグアンでプレーするGK川島永嗣(ストラスブール)や、プレー経験のあるDF酒井宏樹(浦和レッズ)から受けた、リバプールとの決別を決めるに至ったアドバイスの内容を7月の加入会見でこう語っている。
「プレーのスピードがとても速いし、成長するには完璧なリーグだと言われました」
 しかし、シーズン序盤で早くも正念場を迎えてしまった。理由のひとつにリバプールでなかなか試合に絡めなかった状況がある。南野自身もかつてこう語っていた。
「選手としてここまで試合に出るのが難しい時間が続く状況はなかったので、コンディションを整えるとか、悔しさをどうつなげていくかがすごく難しかった」
 もうひとつは、モナコで起用されているポジションにある。
 ピッチに立ったここまでの6試合は、左右のサイドハーフやウイングが中心だった。ペナルティーエリア内でのポジショニングに長け、シュートの上手さを併せ持つ南野は、対照的にトラップやパス、ドリブルは凡庸なレベルにある。
 ゆえに中央でプレーした方が存在感を発揮できる。それでもサイドで起用されるのは、連続して仕掛けるプレスを厭わない献身性が期待される部分が大きい。守備面での貢献度と引き換えになる形で、攻撃面では存在感が失われる。
 南野をめぐる状況は、森保ジャパンにもそのまま当てはまる。
 鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)の台頭に伴って、南野のポジションはトップ下から左サイドハーフに移り、システムが「4-2-3-1」から「4-3-3」に変更された昨秋以降は左ウイングが主戦場となっている。
 しかし、右ウイングで群を抜く存在感を放った伊東純也(当時ヘンク、現スタッド・ランス)と比べて、どうしても試合の流れから消えがちになる。森保ジャパンで最多の17ゴールを決めている南野が、アジア最終予選に限ればわずか1ゴールに終わったのは、起用されたポジションと決して無関係ではなかったはずだ。
 ヨーロッパを視察中の森保監督は、今月2日にドイツから応じたオンライン取材のなかで、モナコで苦戦を強いられている南野に対して次のように言及していた。
「いまはまさに拓実の存在感を見せて、チームのなかで他の選手と連携、連動しながらクオリティーを上げているところ。助っ人として加入しているので、チームの結果も降りかかってくる。彼はこれまでも厳しい環境を乗り越えてきた。拓実がいい選手なのは間違いないので、しっかり乗り越えていくことを見せ続けてほしい」
 ドイツからおくったエールとは対照的に、南野を取り巻く状況は悪化の一途をたどっている。それでも頑固な一面を持つ森保監督は、アジア最終予選から6月シリーズへ継続された「4-3-3」を、カタールワールドカップでも踏襲するだろう。
 一度定めたチーム内の序列をなかなか変えない起用法と照らし合わせれば、左ウイングのファーストチョイスはドリブルに長け、個の力で挑める三笘薫(ブライトン)ではなく、中途半端な状態が続いていた南野の一択となる可能性が高い。
 しかし、チームが旗揚げした2018年9月から継続して招集され、2020年からは「10番」を託されてきた南野は、モナコのクレマン監督によれば「自信を失っている」状態にある。長引く不調に連動してプレー時間が減少すれば試合勘も失われ、当然ながら主軸の一人にすえているカタールワールドカップの構想にも大きな影を落とす。
 伊東や久保建英(レアル・ソシエダ)、堂安律(フライブルク)、守田英正(スポルティング)、板倉滉(ボルシアMG)、そしてキャプテンの吉田麻也(シャルケ)らがリスクを覚悟の上で、ワールドカップを控えたなかで今夏に新天地を求めた。
 大半がコンスタントに出場機会を得ているなかで唯一、もがき苦しんでいる南野はカタールワールドカップまでに復調できるのか。左ウイング以外のポジションやシステムでも試してみるのか。間に合わないと判断した場合には、誰を起用するのか。見極める上での最後の実戦となる今月下旬のドイツ遠征メンバーは15日に発表される。
(文責・藤江直人/スポーツライター) 










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