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ブンデスリーガ第3節、フランクフルト対ケルン。69分、デンマーク代表イェスパー・リンドストロームと交代でピッチに入ったフランクフルトの鎌田大地は、左サイドで仕掛け、深い位置からペナルティエリアに入ろうとしたところでファウルを受け、フリーキックを得る。そして自らキッカーとなった鎌田は、右足を鋭く振り抜き、ボールは直接ネットを揺らした。


「深い位置でのフリーキックだったので、とにかく速いボールをゴールに蹴る、という感じでしたね。合わせるというよりも速いボールを枠に蹴って、そのまま流れてゴールでもいいし、誰かが触ってゴールでもいいし、とにかく速いシュート性のボールを蹴ろうと思いました。ゴールになってよかったです」

 鎌田は試合後、穏やかな落ち着いたトーンで、会心の一撃をそう振り返った。ただしフランクフルトはその後に同点弾を許し、1-1で試合を終えた。今季初白星はまだお預けである。

 今季のフランクフルトは、システムから選手の配置に至るまで、まだ試行錯誤中である。理由は明確で、左サイドですべての軸だったフィリップ・コスティッチが、バイエルン・ミュンヘンとの開幕戦に出場した後、ユベントスへの移籍を決めたからだ。コスティッチのサイド突破とクロスが攻撃の主体だったフランクフルトは、ロベルト・レヴァンドフスキを失ったバイエルンと同様、ひとつの指針を失ったような状態で、まだまだ戦い方が定まらないのだ。

 鎌田の起用を見ても「定まらない」のがよくわかる。8月1日のドイツ杯1回戦マグデブルク戦ではボランチでフル出場、2ゴールを挙げた。だが、オリバー・グラスナー監督は4日後のリーグ開幕節では、鎌田をベンチに置いたままだった。鎌田によれば、グラスナー監督は試合当日まで悩んでいたようだ。

「よくわからないですけど、バイエルン戦の時は前日練習まではスタメンだった。試合当日に守備的にやりたいっていうふうに言われて。途中から出る予定だったんですけど、(10日のUEFAスーパーカップ、レアル・)マドリードのほうに出るのは決まっていたのと、バイエルン戦は前半で5-0と勝負が決まっちゃっていたから、違う人を使ったのかなという感じです」

相棒の移籍もポジティブに捉えて

 実際、バイエルン戦で鎌田を温存すると、5日後のレアル・マドリード戦では、1トップ2シャドウのシャドウの位置で起用された。惜しいシュートを放つなど見せ場は作ったが、チームとしてはレアル相手にまったくと言っていいほど歯が立たなかった。

 直後のヘルタ・ベルリン戦では中盤で先発し、1ゴールを挙げている。その後は体調を崩し練習に参加できない日もあったが、ケルン戦では4-4-2の左MFで起用されている。指揮官の逡巡が伝わってくるかのような起用法だが、鎌田は気にしていないという。

「僕は個人的にはストライカー以外だったら、6番(ボランチ)から前はどこでもある程度高いクオリティでできるって思っているし、それは今までも自分自身が言い続けてきたところなので、別にどこで出てもそこまでストレスはないし、まあ、どこでもいいかなと思います」

 サイドやトップ下だけでなく、ボランチでの起用もあるというのが昨季との違いだが、それも前向きに捉えている。また、コスティッチとのコンビネーションに定評のあった鎌田だが、その移籍も悲観的には捉えていない。

「彼がいなくなって、より彼の偉大さは感じるところではあります。僕自身も彼と3年間、常にパートナーとして出続けていたし、いい関係性を持ててやってたので。

 でも、今までは、自分が彼を生かすという役割をしてましたけど、今は逆に、ゴール前に入っていけたりすることで、ゴールに絡めて数字が残せている。僕個人としては、今は違う選手とうまくやれているし、ゴールが目に見える数字としてとれていて、個人的にはいい感じかな、と」

 これまではコスティッチに対して配球することがメインで、鎌田自身はゴール前に入っていくことが難しいシーンも多かった。鎌田の昨季のリーグ戦初ゴールは第11節だったが、今季はすでに3節で2ゴールを挙げている。

「去年から僕が点をとれていない理由は『ゴール前に入っていけないから』とずっと言っていて、いつも僕がコスティッチにボールを出して、コスティッチがクロスを入れて、僕個人はペナルティエリアになかなか入っていけないっていう状況でした。

今はそれをマリオ・ゲッツェがやってくれたり、違う選手がやってくれるので、僕自身がペナルティエリアに入ってクロスに合わせたり、という回数が増えている。去年からやっていたけど、自分の役割が少し変わったということですね」

 コスティッチがいなくなったことは決してマイナスばかりではないという点については、ケルン戦のFKにも言えるのだという。

「最初は(ルカ・)ペレグリーニが蹴りたそうにしていましたけど、『俺が蹴る』と言って蹴りました。あれはフィリップ(コスティッチ)がいたら、またフィリップが蹴っていたかもしれない。彼がいなくなって悪いことだけじゃなくて、いいこともあると思うので、それを続けていくだけですね」

 チームはまだまだ流動的で、ポジションやシステムは変わるだろうが、鎌田にフォーカスすれば、昨季までとは違ってゴール前に積極的に入れる状況ができている。ゴール量産、などというシーズンが期待できるかもしれない。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko 










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