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【識者コラム】久保建英は、むしろダビド・シルバと似ていると思っていた

 久保建英とレアル・ソシエダは相性がいい。開幕戦ではFWで先発して決勝点となる先制ゴールを決め、第2節のFCバルセロナ戦でも先発出場した。4-1でバルサが圧勝という結果になったが、後半途中までは互角以上の内容であり、久保はイサクのゴールにも貢献していた。バルサのアンカー、デ・ヨングに鋭く寄せてしつこく足を出し、ダビド・シルバのボール奪取につなげた。シルバからのパスでイサクがゴールしている。


 FC東京からレアル・マドリーへ移籍したが、レアルからマジョルカへ貸し出され、さらにビジャレアル→ヘタフェ→マジョルカと居場所が定まらなかったが、今季はレアル・ソシエダへ完全移籍。ようやく自分に合った環境を見つけたようだ。

 今季のレアル・ソシエダはMFをダイヤモンド型に組む4-4-2システムでプレーしている。久保はイサックと2トップを組み、その背後にトップ下のシルバという前線だ。自陣からしっかりパスをつないでビルドアップし、敵陣でもコンビネーションによる突破を狙う。スペースがあれば快足のイサックが裏を狙う攻撃もするが、ボールを大事にするテクニカルなプレーぶりだ。

 久保の長所はタイミングを操作できるところだと思う。細かいステップで相手の予想より早くパスする、あるいは1つタイミングを遅らせるということが自然にできる。リオネル・メッシと共通する資質で、日本ではよく「和製メッシ」と言われたが、久保がメッシに似ているのはたぶんこれだけだ。むしろダビド・シルバと似ていると思っていた。

 そのシルバがレアル・ソシエダにいて、しかも久保のすぐ近くでプレーしている。バルサ戦では同点ゴールのアシストのほかにも、再三決定的なパスを供給する活躍ぶりだった。往年のキレはさすがに少し落ちているけれども、的確な判断と正確なプレーは相変わらず。シルバと久保は左利きで背格好やプレーのリズムが似ているので、うっかりすると間違えそうになる。

シルバから直接学べる環境、久保が身に付ければソシエダでシルバの後継者に

 シルバを必要としたレアル・ソシエダが久保を必要としたのはよく分かるか。チームに合ったタイプなのだ。育成に定評があるクラブで、そこから現在のプレースタイルを積み上げてきた。チームとしてどういうプレーをするか、そのためにどんな選手が必要か整理されている。資質に合っているうえに安定感のある環境は、久保にとって申し分ないだろう。

 ただ、だからといって安泰というわけではない。負傷欠場中のエース、オヤルサバルが復帰した時点で久保がメンバーから外れる可能性は高いと思う。久保と競合するようなタイプも多いはずだ。

 とはいえ、久保にとってプレーしやすい環境なのは間違いなく、シルバから直接学べるのも大きい。とくにシルバの「眼」を吸収するチャンスだ。シルバが何を見ているか。ほかの選手とは違うプレーができるシルバには、必ず違うものが見えている。久保がそれを身に付ければ「日本のシルバ」となり、レアル・ソシエダでシルバの後継者になれるのではないか。

[著者プロフィール]
西部謙司(にしべ・けんじ)/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、「サッカー日本代表戦術アナライズ」(カンゼン)、「戦術リストランテ」(ソル・メディア)など著書多数。

西部謙司 / Kenji Nishibe 










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