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 前回に続き今回も借金返済に追われているバルセロナを見てみたいと思います。つい先日もセビージャからフランス代表DFジュール・クンデを完全移籍で獲得しました。現地の報道によると、移籍金5000万ユーロ+出来高1000万ユーロの5年契約でチーム間合意ということですから、日本円で70億円+出来高払+本人の給与ということになります。バルセロナはとにかく総額13億5000万ユーロ(約1890億円)にもなる巨額な負債が発覚しながらレバンドフスキ、ラフィーニャ、ケシエ、クリステンセンといったラインナップの補強を行っており、お金がないはずなのになぜここまでの補強ができるのか、と世界的に話題になっています。この夏の移籍市場では、選手本人の給与以外の部分だけでも約1億4000万ユーロ近くを投じており、これは1ユーロ=140円の計算で行くと日本円で約196億円にもなります。そんなバルセロナはさらなる補強を検討しており、チェルシーDFセサル・アスピリクエタ、DFマルコス・アロンソを狙いに行くとも報じられておりました。

 なぜここまでの補強が可能なのか、それは一部子会社の株や、テレビ放映権の一部売却で資金を得てということになるのですが、ここにはスペイン語と日本語での翻訳カラクリがあるように感じます。

 2006年にレアル・マドリードも同じように放映権を売却して赤字を補填したことがあったようです。当時のメディアの情報や決算レポートから情報をかき集めたところ、7シーズンにわたりレアル・マドリードのトップチームとカスティージャ(Bチーム)の放映権の一部を11億ユーロで売却とあり、当時のレートは今と同じぐらいの1ユーロあたり140円から150円ぐらいでしたので、平均値の145円だったとしても、日本円で1600億円近くの調達をした形になります。7シーズン分の放映権の譲渡ということですが、よくよく読み込んでみると、メディアに「売り捌いた」というより、「放映権の収入を担保に資金を調達した」という言葉の方が正しいように感じます。

 つまり、先に1600億円を一括で借りるわけですが、7年分の放映権の一部が失われるということなので、貸す方からしてみると1600億円を一度に貸し付けつつ、放映権の収入の一部を7年間に渡って譲渡してもらい、これが1600億円以上になることで成立。一方クラブからしてみると1600億円以上を7年間に渡って返済するということになります。1600億円の7年ということは、1年あたりで見ると約230億円の数字になりますから、クラブは1年で230億円の借入れ返済を7年に渡って行っていくことになります。クラブの考え方は、この合計1600億円の借入れでさらなるスター選手を契約して、どこかでこの分を回収するということになりますから、1シーズンに200-300億円近い投資が出来る状況を作り出し、それを契約選手のグッズなどその他売り上げにつなげて返済金に当て取引を成立させてきたということになります。その苦境を乗り越えて今日のレアル・マドリードが存在することを考えると、大きな借入れとはいえ、一時的ともみることができ、これを事業で回して利益を出し、返済を行うということからすれば、リスクはあるものの非常に筋の通った対応に見えます。

 今回のバルセロナも、ライセンスグッズ販売を管理する子会社バルサ・ライセンシング&マーチャンダイジング(BLM)の保有権49.9%(買い戻しオプションあり)と、向こう25年間のラ・リーガ放映権25%の売却を、先月16日に行われた臨時総会でソシオ(クラブ会員)に確認。結果的にBLMは3億ユーロ(420億円)で保有権49.9%を売却し、25%の放映権利を25年間提供することで6億ユーロ(約840億円)の収入を一時的に獲得。総額1260億円を手にしました。しかい前述の通りこの1260億円を前借りしたもので返済が必要になります。

 この額は、例えばユニフォームの売上で補填するという考えで試算すると、1枚あたりユニフォームが1万5000円で利益率が15%だとした場合の仮の計算で行けば、1枚あたりの利益は2250円になるので、分かりやすく50億円を稼ぐとなると200万枚売れればペイできる計算になります。昨年のバルセロナのユニフォーム総販売数が120万枚とありましたから、これだけでは当然足りません。とはいえ、新しい選手が加わったこともありますから、その他グッズなどの売上・利益を積み上げると、なんとなく返せない額ではないのか・・・?と感じてしまいますがどうなのでしょう。

 このように並べてみると、大きな借金を無理に行っているような報道にはなりますが、なんだかんだ言いながら借金返済の目処を立てつつある状態にあり、苦境には変わりませんが、10数年前にジダンやベッカム、ロナウドの獲得で積み重なったとされる借金を同じ方法で返済して苦境を乗り切って今があるレアル・マドリードの過去の事例からすると、10数年後には見事な復活劇を遂げたバルセロナが王者へと復活しているのかもしれません。

 【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」










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