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 日本サッカー協会(JFA)は13日、今月19日に開幕するEAFF E-1サッカー選手権に臨む男女の日本代表メンバーを発表した。全員が国内組で編成された男子は26人のうち10人が初招集。平均年齢25.3歳のフレッシュな顔ぶれに、オンライン会見に臨んだ森保一監督(53)は「Jリーグの価値を示す戦いができれば」と抱負を語った。男子は19日に香港(茨城県立カシマサッカースタジアム)、24日に中国、27日には韓国各代表(ともに豊田スタジアム)と対戦する。

「自分の武器を介してチームで存在感を示している」
 旧大会名の東アジアサッカー選手権時代を含めて、9度目の開催となるEAFF E-1サッカー選手権に臨む森保ジャパンのリスト。背番号に生年月日、身長と体重、所属クラブ名に続く国際Aマッチ出場数の欄にずらりと「0」が並んだ。
 初めて招集された10人と、招集歴がありながらA代表戦のピッチに立っていない2人の合計12人。メンバー全体が26人だから、ほぼ半分を占める形になった。出場歴がある選手のなかでも、2桁に達しているのは5人だけだった。
 国際Aマッチデー期間外の開催となるE-1選手権では、JFAは選手を拘束できない。必然的に海外組は選外となり、大会期間中のJ1リーグ戦の日程をあらかじめ空けていたJリーグの協力を得て、国内組だけの編成で臨むことが決まっていた。
その上で森保監督は今月に入ってからのメディア対応で、E-1選手権の招集メンバーへ「サプライズはないかな、と思う」と言及。さらにこう続けていた。
「過去のチーム作りがあって、いまがあって、未来につなげる部分をかけ合わせる形で、これまで招集したことのある選手たちを連れていきたい」
 しかし、実際にはサプライズに値する選手たちが名を連ねた。32歳にして初招集されたFW水沼宏太、ザックジャパン時代の2012年10月以来、約9年9ヵ月ぶりに復帰した29歳のFW宮市亮の横浜F・マリノス勢はその象徴といっていい。
 オンライン形式で行われた記者会見では水沼、10年前に2試合出場している宮市を招集した意図が問われた。森保監督は2人のストロングポイントを理由にあげた。
「2人とも自分の武器を介してチームで存在感を示している。水沼選手はサイドで起点になってクロスで得点チャンスを演出するし、ゴール前にも入っていけるし、ハードワークもできる。宮市選手は爆発的なスピードで上下動しながら相手ゴールに迫り、得点もアシストもできる。持っている武器を思いきって発揮してほしい」
 6月のJ1月間MVPを受賞した水沼、昨夏から初めて臨んでいるJリーグの舞台で輝きを取り戻した宮市を合わせて、J1リーグ戦の首位を快走しているマリノスからは最多の7人が招集された。そのなかには同じく初招集のDF小池龍太(26)、FW西村拓真(25)、パリ五輪世代のMF藤田譲瑠チマ(20)も含まれている。
「Jリーグでトップを走っているチームであり、内容的にも組織として強度の高い戦いをしながら、選手個々がクオリティーを発揮している部分を評価させてもらった」
 好調な組織のなかで選手個々も躍動する。マリノス勢を7人招集した理由を、森保監督は6人を招集したサンフレッチェ広島にもあてはめた。
「チームとして攻守ともにアグレッシブに戦う姿勢が見えているなかで、チーム戦術のなかで輝きを見せている選手を招集させてもらった」
 今シーズンから指揮を執るドイツ出身のミヒャエル・スキッベ監督のもと、広島は開幕前の予想を覆す形で4位につけている。レギュラー陣ではチーム最多の5ゴールをあげているシャドーコンビ、森島司(25)と流通経済大から加入したルーキー満田誠(22)らが代表に名を連ねた。試合のたびに存在感を増す満田も初招集組だ。
 中位や下位のチームからは、個で結果を残している選手が選出された。例えば西村と並ぶリーグ4位の8ゴールをマークし、身長185cm体重77kgとサイズもある湘南ベルマーレのFW町野修斗(22)に対して、森保監督は高い評価を与えていた。
「背後へ上手く抜け出すだけでなく、前線で起点になって攻撃をけん引している」
5月以降で6ゴールをあげた町野の活躍で、湘南も13位に浮上している。町野自身は左足首を痛めて一時的に離脱したが、直近の広島戦で復帰して初招集された。
 最下位から16位に順位を上げたヴィッセル神戸からは、不振にあえいだチームをけん引するFW武藤嘉紀(29)とMF橋本拳人(28)が代表復帰を果たした。ともに2桁のキャップを持つ2人は、大逆転でのカタールワールドカップ代表入りを手繰り寄せる意味でも、E-1選手権で演じるパフォーマンスは大きな意味を持ってくる。
 森保監督は同時に、6月のAFC・U-23アジアカップで3位に入ったU-21代表の抜擢も示唆していた。それがキャプテンの藤田であり、守護神の鈴木彩艶(19、浦和レッズ)であり、J1で6ゴールをあげているFW細谷真大(20、柏レイソル)となる。
 以前に語っていた「未来へつなげる部分」であり、U-23アジアカップで3ゴールをあげたMF鈴木唯人(20、清水エスパルス)も開催国ウズベキスタンから帰国した後の連続欠場がなければ、初招集組に加わっていた可能性が高い。
 国内組の代表常連で真っ先に思い出されるDF長友佑都(35、FC東京)とDF酒井宏樹(32、浦和)、そしてFW大迫勇也(32、神戸)に関して、指揮官は「ワールドカップを含めて経験値が高いので」とE-1選手権の選外を明かしていた。
 長く日本代表を支えてきたベテラントリオに加えて、GK権田修一(33、清水)も今回のE-1選手権では選外になった。コンディションさえ万全ならば、開幕が約4ヵ月後に迫るカタールワールドカップ代表に名を連ねると見ていいだろう。
 その上で、J1リーグ戦で上位につけるチームから多く招集したのは、わずか2度の練習で香港との初戦を迎える強行日程を考えたときに、同じチームの選手が多い陣容がプラスになる場合もあるからだ。実際、宮市はマリノスを通じてこう語っている。
「選出を聞いたときは正直、喜びよりも驚きのほうが大きかったですが、マリノスから多くの選手が選出されているので、コミュニケーションは問題ないと思っています」
 さらに今シーズンのリーグ戦での出場歴がないGK鈴木を除けば、上位チームだけでなく中位、下位を含めて結果を残している選手が招集の前提になった。だからこそ森保監督は、以前に「サプライズはないかな」と語ったのだろう。メディアやファンが驚いた人選は、リーグ戦を基準にすえれば指揮官にとっては必然だった。
 ただ、その観点で考えればひとつだけサプライズがある。2位でマリノスを追走する鹿島アントラーズの選手たちが、誰一人として招集されていない件だ。
 アジア最終予選や先の6月シリーズにも出場した、FW上田綺世(23)が今夏にベルギー1部のサークル・ブルージュへ移籍した関係で招集できなくなった。10ゴールで得点ランキングのトップに立っていたストライカーは不在になったが、それでも7ゴールをあげて上田とともに鹿島を引っ張ってきたFW鈴木優磨(26)がいる。
 体調不良を訴え、先週末のリーグ戦を累積警告による出場停止以外では初めて欠場した鈴木だったが、ガンバ大阪を茨城県立カシマサッカースタジアムに迎えた13日の天皇杯4回戦で先発に復帰。フル出場で2-0の勝利に貢献している。
「鹿島も非常に強度が高く、攻守ともにアグレッシブなサッカーをしている。実際に数人の選手たちをリストアップして試合を見てきたが、選考するタイミングで移籍などの理由があって選べなかった、というところはある」
 鹿島の件を問われた森保監督は、上田について言及しただけだった。選手選考は監督の専権事項という前提に立てば、これ以上は言葉にする必要もないだろう。本来の開催国だった中国がコロナ禍で辞退し、日本での開催となったE-1選手権へ、指揮官は4大会ぶり2度目の優勝を目標に掲げた上で、さらにこんな言葉を紡いだ。
「戦いのなかで日本の選手層をより厚くし、結果と内容を持ってワールドカップに向かっていきたい。国内組の価値を上げ、Jリーグの価値を示す戦いができれば」
 招集された選手たちは、土曜日の明治安田生命J1リーグ第22節を戦った翌日の17日に集合。日曜日にリーグ戦がある広島勢を除いた陣容で始動する。
(文責・藤江直人/スポーツライター) 










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