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 11月に開幕するサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会へチーム強化を図る日本代表は、この6月に国際親善試合4連戦を実施して2勝2敗で終えた。

本大会まで5ヶ月のタイミングで対戦した4ヵ国のうち、パラグアイ代表、ガーナ代表にはいずれも4-1で勝利したが、ブラジル代表とチュニジア代表にはそれぞれ0-1、0-3の黒星だった。しかもチュニジア戦はミスで3失点を与える芳しくない内容だったが、日本代表指揮官には収穫の多い試合となったようだ。

 「最後に負けで終わったのは残念だが、溜めそうと思ったことはしっかり試すことができた」と、日本代表の森保一監督は振り返った。

 指揮官が見たかったチェックポイントの一つが、それぞれの選手の力量もさることながら、様々な選手との組み合わせで「誰と組んでもチームを機能させる」ことができるかという点だった。

GK大迫敬介選手(広島)と負傷明けのDF冨安健洋選手(アーセナル)を除いた全選手を4試合で起用。毎回目まぐるしく先発を入れ替え、試合中にも人とポジション、フォーメーションも変更して、何通りも組み合わせをチェックした。

森保監督は「選手には本当にストレスだったと思う。サッカーは選手一人が変われば、大きく変わると言われるなかで、メンバーも個人戦術もチーム戦術も違うなかで良くトライしてくれた」と話した。

同じメンバーで組めば連携も向上して、チームとしてのプレーの熟成度を上げる機会だったが、指揮官はあえて選手テストの機会を優先させていたというのだ。

だがその分、プレーのずれや細かなミスも発生。判断や精度が伴わず、それが失点につながった。特に4連戦最後のチュニジア戦はそれが目立った。

ミスが続いたチュニジア戦

チュニジア戦は大阪のパナソニックスタジアム吹田で行われた6月14日のキリンカップ決勝での対戦。

日本は前半の得点機にゴール前での精度を欠いてゴールを決められずに0-0で折り返すと、後半10分、裏を取られてペナルティエリアに持ち込まれ、対応したDF吉田麻也選手(サンプドリア)が相手の足を引っかけるファウルでPKを与えて失点した。

吉田選手は降りしきる雨に足が滑った可能性もあるが、センターバックでペアを組む板倉滉選手(シャルケ)がカバーに間に合っていたタイミングだったことを考えると、冷静さが欠けていた。

2失点目は後半21分、チュニジアGKが日本の最終ラインの裏へロングキック。なんでもないボールのように見えたが、これがバウンドして吉田選手と板倉選手の背後へ抜ける。

それを追ってチュニジアMFユセフ・ムサクニ選手が両センターバックの間に割って入りマイボールに。

ペナルティエリアの深い位置からゴール前へ折り返すと、走り込んできたMFフェルジャニ・サシ選手が右足で仕留めた。DF陣とGKシュミット・ダニエル選手(シントトロイデン)とのコミュニケーションも、相手のプレーに対する予測も十分ではなかった。

3失点目は後半アディショナルタイム。ハーフウェイライン付近で吉田選手がMF三笘薫選手(サンジロワーズ)へパスを試みたが届かず、相手に取られてそのままドリブルで持ち込まれてシュートを決められた。

ミスを重ねて3失点。冷静さや切り替えなどメンタル面も十分ではなかったと言える。

吉田選手は、「これだけの相手に2点獲られたら、かなりしんどい」と振り返り、「課題は明確。ビルドアップのところで(ボールを)持てる時間を長くしないとならないし、守っているだけではダメなので、そこでのミスをいかに無くすか。1つのミスが起きた時に2つ目、3つ目が起きないようにうまくカバーしないといけない」と指摘。「この試合を教訓にしてなければならない」と話した。

選手が抱いた危機感
 チュニジア戦は得点を奪えなかったが、チャンスがなかったわけではなかった。

前半はMF伊東純也選手(ゲンク)が右サイドでの仕掛けでゴール前へクロスを送り、相手の裏を取った鎌田大地選手が走り込んで右足で合わせようとした35分の場面など受け手と合えば1点というシーンや、オフサイドにはなったが板倉選手のフィードにMF南野拓実選手(リバプール)が抜け出してシュートを放った場面などもあった。

後半は、最初の失点から4分後に投入された三笘選手は、左サイドで積極的にドリブル突破を試みてCKの機会を獲得し、自ら大きなサイドチェンジからシュートを狙った。

試合終盤に投入されたMF堂安律選手(PSV)とMF久保建英選手(マジョルカ)は、アグレッシブにボールを奪って攻めたが、いずれもゴールには至らなかった。

三笘選手はチュニジア戦後に、「チームとしての組み立てをやっていかないと、自分が行くだけでカウンターを受けることになる。チームとしてどう攻めていくのか、決まり事、いろんなものを持たないといけない。戦術はあるが、狙いの細かさが全然足りていない」と思いを吐露。

チームとして戦い方を磨く必要があると指摘した。

得点を奪えていない。しかも、本大会までの残り時間は多くない。加えて、今回のチュニジアは日本を研究し、好守の要であるMF遠藤航選手(シュツットガルト)へプレッシャーをかけ、最終ラインの裏を狙った。

試合後にチュニジアのジャレル・カドリ監督は、日本の速いパス回しを封じるために「中盤の戦いでスペースを与えないように準備したし、日本のDFは難しい状況に置かれるとミスをするので、DFの裏にボールを付けようとした」と手の内を明かし、狙い通りの展開に満足そうな表情を見せていた。

当然ながら、本大会ではどのチームも対戦相手の分析は怠らない。

相手の狙いをどうかわすのか、逆手に取ってどう攻めるのか。選手個々の判断も不可欠だが、チームとしての備えは必要で、そこがまだ足りないと三笘選手は危機感を示した。

 吉田選手は、「この4試合中3試合をW杯に出場するチームと戦えたのは非常に価値があるし、違う戦術のチームと試合できたのもすごくプラス。W杯に出るチームはプレスにいっても簡単にははまらない。守備の守り方をもう一度再確認しないとならない」と話した。


取材・文:木ノ原句望

選手への自信、揺るぎない姿勢
 森保監督は【、「今後へ向けて、試したことは生きる。いくつかの組合わせのチャレンジは、間違いなく今後の成果につながると思っている。『あの時、一回(一緒に)プレーしたよな』ということが出ることを期待している」と語り、今回の4試合での試みに手ごたえを示した。

 とはいえ、本番前にできる強化試合は限られている。海外組を含めた強化試合の機会は9月の2試合のみ。1試合は23日に欧州でアメリカ代表と対戦することが決まった。もう1試合は調整中だ。

その前にある7月の東アジア4カ国対抗のE-1選手権は、国内組のみで臨む予定だ。

しかも、カタール大会の開催時期がほとんどの国でシーズン中や日本のように終了直後となるため、これまでの大会のように直前合宿を設ける時間はない。

それを考えると、残りの時間でミスを修正し、互いの連携やプレーの共通理解などに磨きをかけてチームを熟成させるにはそれで十分なのか、気になるところだ。

だが指揮官は、「今の選手たちは、時間さえあれば誰とでもスムーズに連携連動して、チーム力を落とさずに機能させるという個の能力を持っている。組織論ありきではなく、個のフィジカル、テクニック、メンタルという部分でも人と繋がれる能力を持っている」と指摘して、ここからの調整に自信を示した。

勝利を求めながらも、その時に必要な選手の組み合わせや戦い方を試すことは、2018年ロシア大会を率いた西野朗監督から学んだといい、森保監督の姿勢に揺るぎは見られない。

 前出の三笘選手の指摘にも、森保監督は「彼(三笘選手)自身が戦術。個で打開する能力のある選手であるからこそ、そこを託している。誰の助けがなくても突破できる武器と自信を持つことが、所属チームでの選考につながり、それが日本の武器にもなる」と語り、個人の突破力に磨きをかけることでチーム力を上げる狙いを説いた。

その一方で、「サポートは必要。サイド攻撃の形はチームの戦術として植え付けていけるように、残りの期間でやっていきたい」とも語り、個の突破や仕掛けを軸にチームとしての肉付けをする意向を示唆した。

本大会に臨むメンバーのパズル合わせを貪欲に探り続ける日本代表監督だが、自らが思い描くチームの形と選手の絵合わせをどこまで深められるのか。時間との戦いが続いている。


取材・文:木ノ原句望

テレビ東京スポーツ 










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