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 今年、4年に一度のサッカー最大の大会、W杯が開催される。今回は開催地が酷暑で知られる中東のカタールということで、通常6月開催のところが11~12月開催という変則的なものとなった。この大会で果たしてブラジル代表(セレソン)は20年ぶり6度目の栄冠を獲得することができるか。分析してみたい。

「26人制」ならセレソンに有利

 今回のW杯は開催される季節が異例だが、もうひとつ通常と異なることが起こりそうだ。当記事執筆の時点でまだ正式決定はしていないが、今大会では各国の出場選手の人数が、通常の23人から26人に拡大されることがほぼ決定的だ。
 その理由は、コロナ禍が完全に収束したことでないことから、仮に集団感染が起こった場合に戦力が不足することが懸念されるためだ。そこに加えて、開催地の砂漠気候に選手たちが不慣れなこともある。
 この26人制が実施されれば、セレソンにとってはかなり有利になる。というより、一般に「強豪国」とみなされている国は一様に有利になる。なぜか。それは、足されることになる3人の選手のレベルに差があるからだ。
 W杯に出場するような国でも、出場登録選手がすべて欧州強豪の一流クラブの選手で揃っている国など数えるくらいしかない。そこへ行くとセレソンの場合、「選出漏れする選手も欧州強豪クラブの選手」で当たり前なほど、戦力が充実している。そうした選手が増えるなら、選手層の薄い国にとっては脅威でしかない。
 これまでの大会なら、仮に活躍できずに大ブレーキ(好調だったものが急転して悪調子になること)になる選手が出た場合、その穴が埋められず番狂わせで敗退ということも起こりえた。だが、控え選手にいい選手が多ければ多いほど、その代わりに好調な別の選手が出現し、チームを立て直しの確率も上がりやすくなる。
 そうすることで強いチームほど、「番狂わせ」が生まれにくくなってしまう。セレソンのような毎回優勝候補にあがるチームにはやはり有利だろう。

辛口ファンが今回ばかりは絶賛する若手台頭

 今回のセレソンだが、聞こえてくる評判はいい。ブラジルの場合、セレソンに関するサッカー・ファンの目はとても厳しい。歴代の名選手たちと比べて「今はここがこうダメだ」などと細かく指摘する傾向がある。そんな彼らの口から前回、前々回大会で優勝を積極的に予想する声は多くなかった。
 ところが今大会に関しては、そうした厳しいサッカー・ファンもかなり積極的に評価しているように見受けられ、ネット上で「ヘクサ(6回目の優勝)」の声も少なくない。
 その理由は、ひとつはセレソンが南米予選を1敗もせずに通過したこと。そしてもうひとつが、若手の台頭により、前回大会での課題が克服できた状態にあるためだ。
 セレソンの場合、守備に関してはキーパーがイングランド・プレミアリーグの上位1、2位のクラブに所属のアリソン(リバプール)とエデルソン(マンチェスター・シティ)を抱え、他国がうらやむ状況にある。それに加え、ディフェンダーも豊富にいる。だが攻撃陣、中盤が欧州強豪に比べ、やや層が薄かった。


グループ・リーグでブラジルが入ったG組(ウィキペディアより)

 だが今年の場合は、攻撃がこれまでのネイマール(PSG)やガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)に加え、ヴィニシウス・ジュニオルとロドリゴの2人が21歳にしてレアル・マドリッドでクラブ世界一を経験し急成長したほか、ラフィーニャ(リーズ)、アントニー(アヤックス)、リシャルリソン(エヴァートン)、マルチネッリ(アーセナル)と、得点、アシストともに能力の高い選手が揃う贅沢な布陣となっている。
 そしてさらに大きいのは、セレソンの泣き所だった「ボランチ」の層が強化されたことだ。14年W杯では準決勝のドイツ戦でここが崩壊して1ー7の記録的惨敗を招き、18年大会でも頼みのカゼミロ(レアル・マドリッド)がイエローカード累積で出場停止となった準々決勝でベルギーに敗れた。
 だが今年の場合、仮にカゼミロが欠場する事態となっても欧州チャンピオンズ・リーグで準優勝に輝いたリバプールのファビーニョが控えるという、かなり安定した状態で試合に臨めることになった。
 欲を言うなら攻撃型ミッドフィールダーにベルギー代表のデブライネくらいのカリスマ性があれば言うことはないが、そこもパケタ(リヨン)とコウチーニョ(アストン・ヴィラ)とほかの国に比べればレベルは高く、エースのネイマールとの相性の良い選手なので期待ができる。
 チームの士気を極端に損なうようなことが起きない限りは早期での脱落はないと思われる。常に沈着冷静で選手への気配りでも評判のいいチッチ監督ゆえ、その心配もあまりない。

「楽」「難」混じるグループ・リーグの下馬評

 セレソンはグループ・リーグのG組で登場。対戦相手はスイス、セルビア、カメルーンとなったが、これに関して「楽」「厳しい」の声を共に聞く。
 「楽」という意見の根拠は、対戦チームがことごとく近年のW杯で対戦したチームであることだ。スイスとセルビアは前大会、カメルーンとは前々回で同じグループになっている。
 「難しい」とする根拠は、欧州予選でスイスがイタリア、セルビアがポルトガルという強豪を抑えていち早く本戦出場を果たしていることだ。チームの戦力自体は悪くないことがこうしたことからも想像出来る。
 セレソンが特に気をつけないとならないのはスイス戦だろう、同国は伝統的に守備が堅く、0点、もしくは1点しか取れない場合、引き分けや0ー1での敗戦がありえるからだ。とりわけ守備陣がペナルティ・エリア内でファウルをおかして相手にPK献上というパターンは避けたいところ。前回大会も1ー1で引き分けている。
 セルビアの攻撃は、ミトロビッチやヨビッチなど世界的なプレーヤーがいて注意が必要ではある。だが、守備に国際的に知名度のある選手がいないため、セレソンが積極的に攻めこみカウンターをしのげば、さほど難しい相手ではないと思われる。フランスやドイツの1部クラブでの選手の多いカメルーンも油断はできないが、スイスやセルビアほどの戦力ではない。

決勝トーナメントまでにどう調子を上げるか

 セレソンがG組を1位通過した場合のシミュレーションを仮定してみるとしよう。
 その場合、決勝トーナメントの初戦の相手としてポルトガル、もしくはウルグアイが予想される。どちらも世界で10傑に入る実力のあるチームで国際的に有名選手も多い。だがセレソンはこの数年、ウルグアイとの試合で快勝を続けており、むしろ相手に苦手意識がある。
 ポルトガルはクリスチアーノ・ロナウドを始め、ブルーノ・フェルナンデス、ジョッタ、ベルナルド・シウヴァなど攻撃陣は世界でも屈指の破壊力を誇る。だが欧州予選などを見ていると取りこぼしも少なくなく、やや試合運びが粗いときがあり、守備が破綻して破れる脆さもある。
 これを勝ち抜けば、準々決勝の相手は、日本が所属するE組のスペインもしくはドイツか。スペインは2010年、ドイツは2014年の覇者だが、その頃に比べて威圧感がなく、新しいカリスマ的選手もまだ育ってきていない。試合巧者ではあるが、セレソンが現在の実力通りに戦えれば、それほど怖い相手でもない。

 準決勝の相手はC組1位が予想されるアルゼンチンか。ここまでで相手としては一番手強い。前回大会では守備の崩壊からベスト16で散ったアルゼンチンだが、それ以降、守備を強化。セレソンは昨年のコパ・アメリカの決勝で敗れているだけに慎重さが必要だろう。
 セレソンはG組を1位通過すると圧倒的に有利だ。それは、その場合、イングランド(B組)、フランス(D組)、ベルギー(F組)がそれぞれのグループを1位通過した場合に決勝まで当たる心配がないからだ。いずれも前回大会の4強以上で、今大会も下馬評の高いチームばかり。
 どのチームが決勝に勝ち上がってきても決して楽な試合にはならないだろう。ここにたどり着く前に、セレソンの層の厚い選手層がいかに多く勝ちに貢献し、チーム内のムードを高めているかによって勝敗の行方は決まってくるだろう。
 順調に戦えれば、セレソンの6度目のW杯優勝の可能性は、ここ3大会の中で最も高くてもおかしくはない。(陽) 










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