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 カタール・ワールドカップ(W杯)に向けた強化試合として、14日にはキリンカップ2022決勝でチュニジア代表に0-3で敗れた日本代表。今回の6月シリーズを終えて、7月にはEAFF E-1サッカー選手権が控えているものの森保一監督は国内組を中心に臨む方針を明言している。9月の代表ウィークで予定されている親善試合2試合ではチームの熟成を図らなければならず、11月の本大会に向けた選考サバイバルという観点では今回の6月シリーズが大きな判断材料となった。

 通常通りであれば23名、カタールW杯に関しては新型コロナウイルスの影響を考慮して26名に拡大されることも見込まれる本大会登録人数。『GOAL』では、森保一監督の中での選手の序列を「当確>有力>濃厚>当落線上」の4つのカテゴリで、ジャーナリストの河治良幸氏に分析してもらった。【取材・文=河治良幸】

GK

濃厚:権田修一、シュミット・ダニエル
有力:川島永嗣
当落線上:大迫敬介

 ここまでシュミット・ダニエル、権田修一、川島永嗣と起用されてきて、最後にシュミットがゴールマウスを守った。197cmのサイズを生かしたゴールキーピングに加えて、ビルドアップでもライバルよりアドバンテージがある。本人も2試合で起用されたことに関しては「期待して使ってくれた」と語ったが、チュニジア戦で3失点したことは反省していた。

 確かに3失点とも吉田麻也のミスがらみではあったが、2失点目については「裏のスペースで、ボールがバウンドしたら自分で出るという準備はしておくべきだった」と振り返った。そうした一つ一つの判断が失点に結びついてしまうポジションなので、良い経験であると同時に、現在の評価としては割引かざるを得ない。

 それでも2試合でシュミットが起用されたことにより「濃厚」に引き上げ、代わりに権田も同じ「濃厚」にした。川島永嗣はそのまま「有力」だ。大迫敬介は2日前の練習で森保監督は個人練習をずっと見守っていたので、もしやと思ったが出場はならなかった。現状ではメンバー入りは難しいが、半年間での伸びも期待できるので、今回は選外だった谷晃生(湘南ベルマーレ)と切磋拓しながらメンバー入りを諦めずに目指してもらいたい。

DF

当確:板倉滉、冨安健洋、山根視来
濃厚:長友佑都、吉田麻也、伊藤洋輝
有力:谷口彰悟
当落線上:中山雄太

 ガーナ戦後から大きく変動した。正直、森保監督の基準からすればキャプテンの吉田麻也を外すことは無いとも考えられるが、今回の3失点に絡むパフォーマンスに加えて、サンプドリアを退団した場合の移籍先でどうなるかも不透明だ。コンディションが良好であることを条件に「当確」としても良いが、本人のためにも厳しく評価しておく。逆に板倉滉はチュニジア戦でも目立った守備のミスが無く、伊東純也や長友佑都を生かすパスも目立った。

 長友佑都はチュニジア戦で効果的なインナーラップに加えて、縦パスで伊東を抜けさせるなど、FC東京での“新境地”をさらに発揮したのはプラス材料だ。ただ、酒井宏樹が復帰してくる前提で考えると、左右できることを含めて判断されていくだろう。かなり「当確」に近い「濃厚」と考える。

 伊藤洋輝はチュニジア戦でもフル出場し、特に三笘薫との縦ラインはさらにアップデートされており、高評価の材料になる。ただ、PKからの失点で流れが悪くなった時間帯にミスが目立つなど、主力として計算されるには課題が見られた。中山雄太は4試合目を前に体調を崩し、大事を取って出場しなかった。伊藤の台頭や長友が左右のマルチで計算できるとも踏まえて、今回は「当落線上」に下げた。

MF

当確:遠藤航、伊東純也、南野拓実、三笘薫
濃厚:堂安律、田中碧、原口元気
有力:鎌田大地、久保建英、柴崎岳

 ガーナ戦から特に上下させる要素を見出しにくかった。ただ、原口元気と鎌田大地の左右インサイドハーフを改めてチュニジア戦でテストしたが、4-3-3にする効果はあまり強まらなかった。一つは少し役割が被ってしまうのもある。前半途中で左右を入れ替えたが、久保建英と柴崎岳のコンビの方が、役割が明確でお互いの特徴を活かしやすそうではあった。

 その久保と堂安律は終盤に本来の形である4-2-3-1のトップ下と右サイドで起用されたが、守備を固めてカウンターを狙ってくる相手に二人と三笘、ボールを持つタイプの三人が二列目に揃うのはあまりお勧めできない。そうであれば、やはりオフでの裏抜けを得意とする選手を二列目の何処かには入れるべきだろう。

 途中離脱した守田英正は「濃厚」の位置づけか。彼が入れば攻守のバランスは良くなるだろう。ただ、中央攻撃を強めるには今回はメンバー外だった川辺駿のようなボックス・トゥ・ボックスの選手が欲しいとも感じた。また4-3-3のアンカーに遠藤航が入る布陣はドイツ戦やスペイン戦では必須だが、チュニジアのような相手だとボールを握る側になった時に配球力が足りず、相手に狙われてしまう。本大会ではコスタリカ戦がそれに当たる。本職センターバックの板倉が担ったとしても大きくは変わらないだろう。森保監督が4-1-4-1と表現するシステムには、守備のバランスがベースにある。田中碧や守田が担う選択肢もあるが、それであれば4-3-3にこだわる必要がないのではないか。

FW

 チュニジア戦からも「当確」を出せなかった。浅野拓磨はゴールこそ決めなかったが、裏抜けを狙いながらクロスに飛び込んで合わせようという意欲は見せた。しかし、やはり高さで勝負できるタイプではないので、チュニジアのタイトなディフェンスを破りながらフィニッシに持ち込むというシーンを作り出せなかった。後半にはオーバーヘッドでゴールを狙ったが、ストライカーとしての価値は証明できなかった。

 古橋はPKによるビハインドを追いかける展開で、守備をさらに固めてきたチュニジアに対して背後を狙いにくい状況に。1トップよりも2トップにした方が得点チャンスはあったかもしれない。堂安のパスから中央でシュートを打ってCKを取るシーンはあったが、決定的に序列を上げることはできなかった。

 大迫勇也がいない状況で、1トップのファーストチョイスになるには幅広い活躍が求められるが、古橋の特長を考えるとやや気の毒ではある。ただ、サイドではなく中央で起用されていることはポジティブな材料か。ガーナ戦で代表初ゴールを記録しながらもチュニジア戦で出番の無かった前田大然も「有力」のままにした。

 ケガのため離脱した上田綺世だが、FWのライバルに大きなアピールが見られなかったことを考えると、相対的にチャンスが高まったかもしれない。E-1選手権に招集される可能性もあり、そこで圧倒的な存在感を示せれば主力候補へのジャンプアップもありうる。また本来の主力である大迫勇也も特にチュニジア、本大会ではコスタリカのような守備を固めてくる相手には前線でのキープ力を発揮しやすいため、挽回チャンスはありそうだ。

中央の攻撃力が課題

 日本も90分すべてが悪かったわけではなく、伊東純也と長友佑都に原口元気を絡めた右サイドの突破は何度もチャンスになった。左から南野拓実が裏抜けしたり、オフサイドにはなったが見事なトラップからゴールネットを揺らすシーンもあった。それでもチャンスの割に記録したシュートは6本で、前半に至ってはあれだけ攻めていたのに記録上のシュートは無かった。

 チュニジアに効果的なカウンターを許しており、ジャレル・カドリ監督も狙い目だったと振り返る裏へのボールの処理というところで吉田キャプテンの致命的なミスが生まれてしまった。4試合をトータルすると収穫の多いシリーズだったが、4試合目でブラジル戦とはまた違う形の課題を突きつけられた。その中で選手評価も4試合で浮き沈みがある選手も多い。

 本大会まで半年を切った状況で「当確」は7人。本来、26人であれば半分の13人は「当確」にしたいが、チュニジア戦の結果がそれを許さなかった。しかし、見方を変えれば招集外だった選手にもよりチャンスが出てきた。国内組は7月のE-1選手権もあるので、自国開催の大会で日本を優勝に導く圧倒的な活躍を見せる選手が出てくるか楽しみにしたい。特にチュニジア戦で明確な課題になった中央攻撃に火力を与えられるアタッカーの台頭が期待される。

取材・文=河治良幸 










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