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 カタールワールドカップへ向けた日本代表の最初の強化マッチ、パラグアイ代表との国際親善試合が2日に札幌ドームで行われ、日本が4-1で快勝した。6月シリーズで唯一の初招集選手、伊藤洋輝(23、シュツットガルト)が左サイドバックで先発し、利き足の左足を駆使した正確なロングパスで前半36分のFW浅野拓磨(27、ボーフム)の先制点の起点になった。身長186cm体重78kgとサイズに恵まれ、1対1の強さにも自信を持つ伊藤が、待望久しい「ポスト長友」として急浮上した。

シュツットガルトで磨いたロングパスが先制点の起点
 大抜擢してくれた森保一監督(53)の期待に、一発回答で応えてみせた。
 前半は左サイドバックで、後半開始からは左センターバックでプレー。A代表デビュー戦で先発フル出場を果たした伊藤は、特に前半に大きな手応えをつかんでいた。
「周りの選手がボールを上手く預けてくれて、サポートしてくれたのでスムーズに試合へ入れたのがよかった。特に前半はかなりゲームを支配できたし、自分も何度かいい攻撃参加から(三笘)薫くんとのコンビネーションでチャンスを作れました」
 言葉通りに前半開始わずか5分で決定機を演出した。
 左タッチライン際でサイドチェンジのパスを受けたMF三笘薫(25、ユニオン・サンジロワーズ)の内側をトップスピードで駆け抜けた。いわゆるインナーラップを仕掛け、三笘から受けたボールをゴールラインぎりぎりで折り返す。MF堂安律(23、PSV)が合わせた一撃は相手キーパーのファインセーブに遭った。
 三笘が外で受け、伊藤が内側から追い抜いていく形は同33分にも再現され、このときは相手のブロックでコーナーキックに変わった。それでも三笘のストロングポイントを踏まえた上で、内側とは異なるレーンを使うべきだったと試合後に自問していた。
「薫くんは右利きなので(シュートを打つために)もっと中でプレーしたいだろうから、僕がもっと外側を攻め上がった方がよかったかもしれない」
 誰もが緊張するA代表デビュー戦から伝わってくるのは落ち着きであり、威風堂々としたオーラだった。迎えた36分。伊藤の左足が先制点の起点になった。
 GKシュミット・ダニエル(30、シントトロイデン)の短いパスを受け、すぐさま振り向いた伊藤が、ペナルティーエリアの左外側あたりで利き足の左足を一閃。ターゲットはハーフウェイラインの向こう側で、相手を背負っていた浅野だった。
 美しい軌道を描いたロングパスを浅野が落とし、後方にいたMF原口元気(31、ウニオン・ベルリン)が拾う。ひと呼吸置いて浅野へリターンされたスルーパスは相手キーパーの眼前で絶妙のループシュートに変わり、無人のゴールへゆっくりと吸い込まれた。
 2021-22シーズンのブンデスリーガで、伊藤が放ったロングパスの本数はすべてのフィールドプレーヤーのなかで1位につけている。合宿初日の5月30日に臨んだオンライン対応で、伊藤は利き足の左足にこんな自負を込めていた。
「左足でボールを持ったときの組み立てであるとか、ゴールに直結するパスというのはドイツでも求められていた部分。1年間にわたって特長として出してきたので、そこを日本代表のために、そして勝利のために生かしていきたい」
 前半12分には左サイドから右サイドバックの山根視来(28、川崎フロンターレ)がいる右タッチライン際へ、一発でサイドを変えるパスを開通させている。
ロングキックを放つまでに要するのはワンステップだけ。なおかつコンパクトな振り幅で強く、速いボールを蹴れる選手は、いまの森保ジャパンには他に見当たらない。
 左足に絶対的な武器を宿すだけなく、ブンデスリーガの屈強な男たちと対峙してきた強さも、身長186cm体重78kgの恵まれたボディに脈打たせている。代表デビュー戦を終えた伊藤への評価を問われた森保監督は、もちろん及第点を与えている。
「彼のポテンシャルを示してくれた。守備では所属チームでやっているように、高さも含めて彼の身体的な能力と戦う姿勢を出してくれた。攻撃でも起点になり、味方を助けるフリーランニングを含めて、意欲的でアグレッシブな姿勢を見せてくれた」
 伊藤が左サイドバックとして刻んだ数々のパフォーマンスは、歴代の日本代表監督を悩ませてきた「ポスト長友」問題を解決する可能性も秘めている。
 岡田ジャパン時代の2008年5月にデビューし、南アフリカ、ブラジル、ロシアと3度のワールドカップに出場。歴代2位の「134」キャップを誇る長友佑都(35、FC東京)は鉄人ぶりが際立つゆえに、後継者探しも急務とされてきた。
 2018年9月に船出した森保ジャパンだけでも、佐々木翔(32、サンフレッチェ広島)や山中亮輔(29、セレッソ大阪)、安西幸輝(27、鹿島アントラーズ)、ヴィトーリア(ポルトガル)への期限付き移籍が発表された小川諒也(25、FC東京)、パラグアイ戦の後半から出場した東京五輪世代の中山雄太(25、ズヴォレ)が起用されてきた。
 森保ジャパン以前は太田宏介(34、パース・グローリー)や車屋紳太郎(30、川崎フロンターレ)、酒井高徳(31、ヴィッセル神戸)に加えて槙野智章(35、同)も左サイドバックとしてプレーした。しかし、誰一人として長友の牙城を打ち破れなかった。
 右利きの長友に挑んだ選手たちのなかで、山中、小川、中山、太田、車屋は左利きだ。サッカーのポジションのなかで、左利きが重宝されるポジションとして左サイドバックがある。理由は単純明快。利き足でボールを持つ場合に自分の体を相手との間に入れられ、なおかつ攻め上がったときに利き足の左足でスムーズにクロスを入れられるからだ。
 しかし、その利点を持ってしても、エネルギッシュに上下動を繰り返し、1対1の攻防にもめっぽう強い長友のストロングポイントが上回っていると判断された。
 左利きの挑戦者の系譜に名を連ねる伊藤は、身長170cm体重68kgの長友だけでなく、他の誰もが持ち合わせていないサイズがある。森保監督が評価したように、シュツットガルトで主戦場としてきた3バックの左で育まれてきた対人の強さも兼ね備える。
「プレースタイルが違うし、やはり経験も実績もある選手なので。僕なんてサイドバックとしてプレーした回数が少ないし、クロスの精度や攻撃参加のタイミングも含めて、勉強させてもらうじゃないですけど、いろいろなものを吸収していきたい」
 長友にあって自身にないものを問われた伊藤は、こんな言葉を残している。ただ、経験や実績はこれからの時間が解決してくれる。伸びしろがある分だけ、カタール大会までに長友との序列を覆す可能性もある。逆に自分にあるものを問われた伊藤は「1年間、ドイツでやってきたので」と左足の精度とデュエルにおける強さをあげた。  もちろん伊藤自身、パラグアイ戦のプレーに100%満足しているわけではない。 「相手にプレッシャーをかけられて、それを回避しようとしたなかで(浅野)拓磨くんが目に入ったので低く蹴ろうとしたんですけど、ちょっと(軌道が)高くなってしまって。何とか収めてくれた拓磨くんに感謝したいです」  浅野を狙ったロングボールが、実はイメージとずれていたと伊藤は明かした。さらに後半からポジションを移した左センターバックで、ゴール前で相手にパスをわたすミスから喫した、14分の唯一の失点にも反省の弁を繰り返した。 「完全に読まれていた。センターバックがあのようなリスクを冒して、ミスから失点につながってしまうのはいけない。二度とリスクを負わないようにしていきたい」  A代表の舞台でフル出場できたからこそ、次に克服するべき課題が見つかる。東京五輪世代ながら、最終候補にすら残らなかった1年前を「漏れたのは当然の結果」と受け止めている伊藤のなかで、ポジティブな循環が生まれている。  当時J2を戦っていたジュビロ磐田から、昨年7月に期限付き移籍で加わったシュツットガルトで幕を開けたシンデレラストーリー。新天地のレギュラーを射止めた過程で「成長したと思う」と自信満々に言う23歳は、カタール
 もちろん伊藤自身、パラグアイ戦のプレーに100%満足しているわけではない。
「相手にプレッシャーをかけられて、それを回避しようとしたなかで(浅野)拓磨くんが目に入ったので低く蹴ろうとしたんですけど、ちょっと(軌道が)高くなってしまって。何とか収めてくれた拓磨くんに感謝したいです」
 浅野を狙ったロングボールが、実はイメージとずれていたと伊藤は明かした。さらに後半からポジションを移した左センターバックで、ゴール前で相手にパスをわたすミスから喫した、14分の唯一の失点にも反省の弁を繰り返した。
「完全に読まれていた。センターバックがあのようなリスクを冒して、ミスから失点につながってしまうのはいけない。二度とリスクを負わないようにしていきたい」
 A代表の舞台でフル出場できたからこそ、次に克服するべき課題が見つかる。東京五輪世代ながら、最終候補にすら残らなかった1年前を「漏れたのは当然の結果」と受け止めている伊藤のなかで、ポジティブな循環が生まれている。
 当時J2を戦っていたジュビロ磐田から、昨年7月に期限付き移籍で加わったシュツットガルトで幕を開けたシンデレラストーリー。新天地のレギュラーを射止めた過程で「成長したと思う」と自信満々に言う23歳は、カタールワールドカップへ向けた挑戦の過程で「ポスト長友」の最有力候補に急浮上しながら存在感を増していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)
(文責・藤江直人/スポーツライター) 










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