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 世界的名門クラブであるバルセロナが、再起への道をたどろうとしている。監督には、クラブOBのレジェンドを呼び寄せた。少しずつではあるが、補強も施し、この夏にも新戦力を迎えようとしている。ただし、その足取りは正しい方向へと向かっているのか。

■【動画】バルサに来季CLをもたらした「DF」のスーパーボレー

■レアル・マドリードとの違い
 いまだ経営の不安定さを露呈しているバルセロナと、対照的な状況にあるクラブがある。長年のライバル、レアル・マドリードである。

 レアル・マドリードは、2020年夏と2021年夏、目立った補強を行わなかった。新型コロナウイルスによるパンデミックの襲来で、多くのクラブの財政が打撃を受けた。レアル・マドリードも、その災厄からは逃れられなかった。

 2020年夏の移籍市場にかけた補強費は「ゼロ」だった。マルティン・ウーデゴール、アンドリュー・ルニン、アルバロ・オドリオソラといった他クラブにレンタルしていた選手を呼び戻したが、移籍金を払って外部から獲得してきた選手は一人もいなかった。

 2021年夏の移籍市場では、移籍金3100万ユーロでエドゥアルド・カマヴィンガを獲得。だがダビド・アラバ(フリートランスファー)、ダニ・セバージョス(レンタルバック)、ルカ・ヨヴィッチ(レンタルバック)、ガレス・ベイル(レンタルバック)と、前年の夏と同様に、基本的に移籍金を支払うことなくチームをつくり上げた。

 欧州のフットボールシーンにおいては、夏の移籍市場の方が冬の移籍市場よりも活発である。“金満クラブ”のイメージがあるレアル・マドリードだが、直近2シーズンの開幕前のウィンドウでの補強費、計3100万ユーロは、バルセロナが先の冬にフェラン・トーレス1人の獲得に投じた5500万ユーロにも満たなかった。

■経営にも寄与していた「栄誉」
 元々、バルセロナは補強に大金を投じて成功させ、チームを強化してきたクラブではない。

 少し時を遡る。2010年のFIFAバロンドール(現バロンドール)授賞式。最終候補3名に選ばれたのはメッシ、シャビ、アンドレス・イニエスタで、いずれもバルセロナのカンテラーノだった。ラ・マシア(バルセロナの育成寮)出身の3選手が、世界一の称号を授かるため、ひとつの写真に収まる。その画は、バルセロニスタにとって、何よりの誇りだったはずだ。

 さらに、こうした選手たちが在籍するという事実は、単なる誇りに留まらなかった。当時、他クラブがメッシ、シャビ、イニエスタの獲得を狙ったとしたら、いったいいくらの移籍金が必要になったのか想像もできない。こうした選手たちを自前で育て、長年擁しているという事実は、抜群の費用対効果が得られているという事実を意味していた。

■「クラブ以上の存在」の意味
 現在のバルセロナは、かつてとはまったく違う状況に陥っている。本来持っていた哲学を忘れそうになっている、と言ってもいい。

 ガビ、ニコ・ゴンサレス、ロナウド・アラウホ、エズ・アブデ、イリアス・アコマック、フェラン・ジュグラ、アンス・ファティ…。現在のトップチームにも、優秀なカンテラーノがそろっている。

 現在、世界で有数のタレントであるペドリ・ゴンサレスは、正確に言えばバルセロナのカンテラーノではないものの、17歳でバルセロナ行きを選び、瞬く間にスターダムをのし上がった。若い選手たちが自らの成長のために憧れるクラブ。それこそがバルセロナであり、そのブランド価値はまったく廃れてはいない、ということだ。

 メス・ケ・ウン・クルブーー。“クラブ以上の存在”を謳う、いわずと知れたバルセロナが標榜するスローガンである。

 人を育み、歴史と文化を紡いでいく。そうして、バルサは単なるクラブを超えた存在となっていく。
バルサの歴史で、優秀な選手の補強が実った例は数多い。アーリング・ハーランドでも、ロベルト・レヴァンドフスキでも、獲得すればいい。ただし、ピッチ内の方向性とクラブの哲学が揺らぐことがあってはならない。

森田泰史 










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