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サイドバックが主役になると誰が予想したか

サッカーの世界は常に進化を続けているが、ここ数年で大きく変わったポジションの1つにサイドバックが挙げられる。

失礼ながら、数年前までサイドバックを地味なポジションと考えていた人もいただろう。サイドバックといえば勤勉かつ運動量が豊富な選手が務めるポジションとの見方もあり、カフーやハビエル・サネッティ、ガリー・ネビルら職人肌の選手が多かった。

しかし、現代では主役と言っていいほど重要なポジションになりつつある。単にサイドを上下動するだけでなく、圧倒的なスピード、インサイドへ入っての組み立て参加、高精度のボールでゴールお膳立てする創造力とテクニックなど、とにかく求められる仕事は多い。もちろん守備のタスクを忘れるわけにもいかず、現代のサイドバックはサッカーIQが高くなければ務まらない。

リヴァプールのトレント・アレクサンダー・アーノルド、マンチェスター・シティのジョアン・カンセロ、とにかく速いパリ・サンジェルマンのアクラフ・ハキミ、バイエルンのアルフォンソ・デイビスなど、攻撃的なポジションもこなせる超攻撃型サイドバックなんて存在も増えた。今やサイドバックの選手がチームNo.1のスピードスターと言われても驚く時代ではないのだ。

サイドは攻撃の組み立てにおける重要エリアとなり、マンCのジョゼップ・グアルディオラを筆頭にサイドバックの質にこだわる指揮官も増えている。サッカーファンもここ数年でサイドバックに特別な視線を送るようになったはずだ。

一方で、攻撃面における存在感が薄くなってきたのがトップ下だ。これは最近に限った話ではないが、トップ下を配置しないチームも多い。1990年代から2000年代あたりまではトレクアルティスタ(トップ下)こそ全世界のサッカー少年が憧れる花形ポジションであり、背番号10が最も似合うそのポジションを任されるのは天才肌の選手ばかりだった。

しかし、現代では典型的なトップ下はかなり少なくなった。サイドバックの代表選手は複数挙げられても、トップ下の代表選手を挙げるのに苦労する人も増えたはず。いわゆるトップ下専門とされる選手は輝ける機会が限られてきているのだ。

カタールのアル・ラーヤンから欧州へ戻りたがっているとされるハメス・ロドリゲス、去就が注目されるユヴェントスのパウロ・ディバラ、レアル・マドリードのイスコなど、今夏に動く気配のある彼らはトップ下の位置で輝ける選手だ。しかし、現代で彼らの才能を活かせるチームはそう多くない。もうトップ下が王様の時代は終わってしまった。

昔は王様役のトップ下にボールを預け、その選手の閃きとテクニックで局面を打開するチームも少なくなかった。しかし近年はますますプレッシャーも厳しくなり、攻撃の起点はより低い位置やサイドに移っている。トップ下に代わり、パリのハキミやリヴァプールのアーノルドのようにサイドバックがアシストマシーン化する時代だ。

3バックが流行していることも大きい。ウイングバックの位置で攻撃的な選手を起用するケースも珍しいものではなくなり、サッカー界はサイドを中心にどんどんスピーディーな展開になってきている。サイドの選手には何よりもまず標準以上のスピードが求められ、これは速ければ速い方がいい。陸上選手かと思うほど速い選手も増え、攻撃でボールを変にこねるチームは通用しづらくなっている。

2010年代はそれこそ香川真司やマリオ・ゲッツェのように高いテクニックとクイックネスでペナルティエリアへ侵入して決定的な働きをするトップ下も多かったが、現代では小柄なトップ下も活躍の機会が限られてきている印象だ。活躍できないわけではないが、トップ下しか出来ないタイプは苦しい。ウイング、あるいはインサイドハーフにも対応する柔軟性や運動量、守備の強度が必要になる。

今ではトップ下ではなく、サイドバックに憧れるサッカー少年も増えてきたのではないか。今やそこは地味なエリアではなく、攻撃の起点となるチームの頭脳だ。近年のサイドバック、あるいはウイングバック革命は凄まじく、王様タイプのサイドバックなんて存在も増えるかもしれない。それこそ10番を託されても不思議ではない。

今後もこの流れは続いていきそうで、サイドバックは攻守両面で何でもこなせるエリートプレイヤーが任されていくことだろう。

構成/ザ・ワールド編集部










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