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最後に敗れたのは12月4日、リーガで3カ月以上負けなし(7勝4分)のバルセロナが2位に浮上してきた。一時はCL出場権獲得も危ぶまれていたが、ベティス、ソシエダ、ビジャレアルが安定していないこともあって、これから5位以下に落ち込む姿は想像できない。バルセロナの消化試合は1つ少ない。7差の2位セビージャは射程圏だし、同じく好調のアトレティコ・マドリーを含めた3チームの2位、3位、4位争いは激化しそうだ。バルセロナ好調の理由は明確だ。冬の移籍市場で、フェラン・トーレス、アダマ・トラオレ、オーバメヤン、ダニ・アウベスを補強したこと。前半戦唯一の得点源だったメンフィスが控えに回っていることからも現戦力の充実ぶりがわかる。もし現メンバーでシーズン開幕を迎えていたら、確実にレアル・マドリーと優勝を争っていただろう。

もちろん、監督シャビの手腕も大きい。

現状でのベストメンバーと手腕のごく一部を紹介したい。

まず、3トップを見た時に左右が非対称であることがわかる。トラオレもフェランも利き足は右で、トラオレは順足、フェランは逆足のウインガーだということだ。ドリブル時には利き足でボールを持つので、両者のドリブルのコースがほぼ決まる。順足トラオレは縦、逆足フェランは対角線である。加えて、止まった状態からのダッシュが速く体の強いトラオレ、速いがスピードに乗るまで時間がかかる細身のフェランという違いもある。結果、単独打開が得意のトラオレ、コンビネーションが得意なフェラン、という違いが生まれる。

この違いに合わせて戦術も非対称になっている。トラオレは突破にサポートを必要としないので、右SBアウベスは攻撃参加せずブスケッツの横にポジショニングしてMF的に振る舞っている。対して逆サイドは、フェランが対角線に切り込んだ背中をアルバがオーバーラップしたり、ペドリがサイドへ流れてフェランの侵入をサポートする。この戦術の差が最終的には右サイドをえぐってセンタリングするトラオレ、エリア内で第二のCF化してそれをフィニッシュするフェラン、という役割の差になって結実する。

この右サイドが崩し左サイドがフィニッシュという構図は、トラオレの代わりにデンベレが入っても同じである。

左右の非対称は2列目でも起こっている。見ていると、左のペドリが頻繁にボールに触るのに対して、右のガビはほとんど出て来ない。

なぜか? フェランとアルバのサポート&コンビという仕事のあるペドリに対して、ガビには別の仕事が与えられているからだ。トラオレにはサポートやコンビは不要で、かつトラオレはゴール前にはいない。そこで2列目から飛び出してフィニッシュに絡むことがガビの使命となる。それと、相手ボールの際にはオーバメヤンとともに最前線に並んで(見た目[4-4-2]に変化して)プレス要員にもなる。

この2列目からの飛び出しとプレスを任されていることで、ガビは下がることができない。ペドリは下がってボール出しを助けることもあるが、ガビはその仕事は後ろにいるアラベスに任せる。アウベスが攻撃参加しないことは守備の穴を開けないためにも、体力消耗を防ぐためにもプラスである。

前から後ろまで自由に動いてボールに触るペドリ対して、エリア内でセンタリングを待ち、懸命に前に詰めてファウルでカウンターを切るガビは、ボールだけを追っていると目立たない。が、だからといって貢献度が低いわけでは決してないのだ(ただ、彼を3トップの左で起用することは、さすがに可哀想だが)。

今のバルセロナの唯一の欠点は失点の多さ。負けなしの11試合中でも無失点試合は3つしかない。ELでは未登録のアウベスに代えて右SBはより攻撃的なデストが入っているが、やはり上がりを自重しMF的にプレーして守備力のアップを図ろうとしている。結果は出ていないけれど……。

補強はフロントの仕事だが、新戦力に力を発揮させチームとしても機能させるのはシャビの仕事。左右非対称なバルセロナは左右非対称なシャビの戦術によって反攻を始めた。

文:木村浩嗣

木村浩嗣










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