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 2021年夏に古巣・セレッソ大阪への復帰を果たした乾貴士。彼はドイツで4年、スペインで6年プレーした国際経験が大きな武器だ。
 
 とりわけ後者では、リーガ・エスパニョーラ・165試合16ゴールという目覚ましい数字を残している。中村俊輔(横浜FC)や大久保嘉人、家長昭博(川崎)ら日本トップクラスのアタッカーがチャレンジしながら壁にぶつかり、「日本人はスペインで成功できない」というジンクスが長く続いたが、彼はそれを見事に撃破。大きなインパクトを残すことに成功した。
 
 乾貴士はなぜ最高峰リーグで生き残れたのか。その経験をJリーグにどう還元していくのか。本人の考えを聞いた。
 
「昔のイメージで語らないでください」元日本代表MF乾貴士の今
 
スペインでサッカー観が変わった
 
――乾選手はスペインで最も成功した日本人選手の一人です。Jリーグとスペインの違いをお話ししていただけますか?
 
「別物ですよ、ホンマに。サッカー自体もピッチも強度も全て違う。正直、比較するのはちょっと難しいかなという気がします。
 自分が感じたのは、サッカーを知ってる頭のいい選手が多いってこと。DFでも足元がメチャクチャうまい人ばっかりで、下手な選手を見たことがないです」
 
――そこで活躍できたのは?
 
「エイバルの時は自分の実力というよりも、チームメートや監督に恵まれた感じはありますね。エイバルの町は人口2~3万くらいの小さい町で、スタジアムも6000人程度。ファミリー感があって、ブーイングをされたことがない。俺がベティスとアラベスに移籍して戻ってきた時や、2部に降格してしまった時もブーイングはされなかったし、むしろ拍手された。審判とか相手チームにはするけど、エイバルの選手には絶対ブーイングはしないスタンスだった」
 
――温かい環境で自身はどう変化しました?
 
「守備のことは理解しようと思ってやってましたね。そこはスペインで変化したんじゃないかな。日本やドイツの時はガムシャラにボールを追って走っておけば評価される感じだったけど、それじゃあ全然ダメ。いるべきポジションにいて、味方を助けられる位置取りをしないといけなかった。それを教えてもらえたのがエイバル。俺はすごく楽しかったし、サッカー観も変わりました」
 
――スペインで守備面に開眼したというのは意外です。
 
「完全に守備ですね。攻撃は自由にやっていいって言われていたんで。もちろん決まり事はいくつかありましたけど、それを守りながらの自由があった。苦労はメチャメチャしましたけど、応用力は身についた気がします」
 
「僕はメンタルに左右される」
 
――約束事の中に自由があるという環境は、2018年ロシアワールドカップでベスト16入りした日本代表とも似ています。
 
「当時はエイバルで自信をつけられたのはすごく大きかったし、代表にハセ(長谷部誠=フランクフルト)さんや佑都(長友=FC東京)君、真司(香川=シントトロイデン)や岳(柴崎=レガネス)がいて、俺がやりたい守備のやり方を理解したうえで動いてくれた。
 特にタテ関係だった佑都君は同じ感覚でプレーしてくれたんで一番やりやすかったですね。佑都君とは大会前の事前合宿からよく話していたし、『やりたいようにやっていいよ』と言ってくれましたから」
 
――長友選手のプレーの特徴をどう捉えていますか?
 
「佑都君は攻撃力がすごいから、それは今、タテ関係でやってる拓実(南野=リバプール)も分かってると思いますよ。三笘(薫=サン・ジロワーズ)君みたいにタテにも中にも1人でどうにかできる選手が入った時は佑都君もそこまでムリして上がったりせずにやってるんじゃないかな」
 
――そういう気の利く選手に囲まれたロシアW杯はとにかく楽しそうでした。メンタル状態がいい時はプレー面にも影響しますか?
 
「僕はメンタルに左右される部分が大きいと思いますし、それがかなりプレーに出やすい(苦笑)。分かりやすいタイプですよね」
 
――「今の若手は大人しい」とセレッソ大阪の移籍会見でも話していましたけど、「もっと感情を出せよ」みたいな話はするんですか?
 
「淡々とやれるなら、それはそれでいいと思いますよ。相手も分かりにくいし、メンタルによるプレーの波も出ないしね。自分はそういうのがコントロールできないから。機嫌が悪い時はメディアの人にも『近寄らせないオーラ』は出すかも(苦笑)。ロシアの時はそういう自分の素が出せてよかったと思います」
 
日本サッカーを見る確かな目
 
――4年前のロシアW杯で挙げた2得点は今でも鮮明に覚えている人は多いです。日本代表への思いは?
 
「今はあんまり考えてないですね。セレッソでのプレーに集中してます。それに若いアタッカーが次々と出てきてますからね。
 僕から見ても三笘君は別格。ドリブルはレベルが違うかなと感じます。それだけじゃなくて、シュートもうまいし、パスもうまい。ベルギーからプレミアリーグみたいな高いレベルのリーグに早くステップアップしてほしいし、代表でもレギュラーに定着してもらいたいと思います。やっぱり先々を考えても三笘君がいると全然違うと思うんで、ホントに楽しみですね」
 
――スペインリーグの先輩として、久保建英(マジョルカ)選手をどう見ていますか?
 
「久保君は落ち着きがすごいから、このまま安定していくんじゃないですかね。キヨ(清武弘嗣=セレッソ)と似たタイプで、技術が高くてパスもできて判断がいい選手ですけど、久保君は動き出しが速く、スピードがある分、長いこと前でできるんじゃないですか。彼にもすごく期待してます」
 
 日本人にとっての鬼門であるスペインで成功を収めた乾貴士が日本サッカーを見る目は紛れもなく本物だ。そして三笘や久保など若い世代を分析する目も確かである。そういった戦術眼や視野の広さを生かしつつ、彼の高度なテクニックや攻撃センスをJリーグに還元してくれれば、日本全体がより一層レベルアップしていくはずだ。
 
 19日の横浜F・マリノス戦から幕を開けた2022年のJリーグでも、稀代のテクニシャンの一挙手一投足は一味違う。シーズンを通してハイレベルなパフォーマンスを発揮して、「乾貴士ここにあり」を強烈にアピールしてほしいものである。

■乾貴士(いぬい・たかし)
1988年6月2日生まれ。滋賀県出身。野洲高2年時に全国高校選手権を制覇。2007年に横浜F・マリノスへ入団。2008年から当時J2のセレッソ大阪に移籍し、香川真司らとともにJ1昇格に貢献した。2011年にドイツ2部のVfLボーフムへ移籍、その後同1部のアイントラハト・フランクフルトで活躍。2015年からスペイン1部のSDエイバルへ移籍。同リーグのレアル・ベティス、デポルティーボ・アラベスを経て、2019年にSDエイバルに復帰。2021年には10年ぶりに古巣セレッソ大阪に復帰、今季からクラブの象徴である背番号「8」を背負う。日本代表としては、2018年ワールドカップロシア大会で2得点を挙げる活躍。チームの16強入りに貢献した。










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