スクリーンショット 2022-01-09 16.48.39

スポンサード リンク




まもなく38歳の誕生日を迎える長谷部誠選手に関する2本の記事の後編です。(前編はこちら)

 元日本代表キャプテンの長谷部誠は今月の18日に38歳の誕生日を迎えるが、いまでもチームに欠かせない戦力として元気にプレーをしている。「老いてますます盛ん」というほど老いてはいないが、ブンデスリーガ現役最年長選手ながら、ピッチ上では競り合いのシーンで若い選手を弾き飛ばすなどコンディションは良好なようだ。

 ドイツの『ビルト』紙によると、フランクフルトはすでに長谷部とコンタクトを取り、さらに1年間の契約延長の準備をしているという。

 どうやら、現役引退はまだまだ先になりそうだ。

現役選手対象の指導者講習会に参加
 そんな長谷部は今、新しいことにチャレンジしている。ドイツサッカー協会(DFB)が新しくスタートさせたプロジェクト、『プレイヤーズ・パスウェイ』の一環で開催された現役プロサッカー選手および、最近現役を退いた元選手を対象とした指導者講習会に参加しているのだ。

 日本ではプロキャリアを持つ指導者へのライセンス優遇措置などが議論されているが、ドイツではどのように位置づけられ、現在はどのような取り組みがされているのか。

 プロ選手のセカンドキャリアについて、DFBディレクターのオリバー・ビアホフが警鐘を鳴らしていたことがある。

「現役時代は周りのサポートがあるため、人生における決断を自分自身で下さずにすむ環境にいた選手たちが、突然すべてを自分で決めるのは難しい。セカンドキャリアを始める際、サッカーだけ取り組んできた者は問題に直面するケースが非常に多い」

 実に13年をかけて大学で経営学の学位を取得したビアホフは、生きていくための視点の必要性と、環境の大切さを誰よりも知っている。

 DFBアカデミー主任のトビアス・ハウプトも、「サッカー界では選手がそのシステムに合わせるように要求されている。その陰で、選手個々のあり方はないがしろにされてきた面があったかもしれない。引退後に自分の人生と真正面から向き合わなければならないが、その際に痛みを伴い、穴に落ちる危険も大きいのだ」と指摘している。

 DFBは、プロ選手に対してこれまで以上に引退後のサポートを充実させようとしており、そうした背景から生まれたのが『プレイヤーズ・パスウェイ』である。

「若い選手にこの経験を伝えていきたい」
 選手にとっては自分に合ったセカンドキャリアを歩むための支えとなるもので、またDFBにもプロの世界で様々な経験を積んだ者がドイツサッカー界のために経験と能力を還元できる仕組みを作りたいという狙いがある。

 選手には、いろいろな思いとビジョンがある。

 例えば、長谷部と同じく指導者講習会に参加しているドイツ代表のイルカイ・ギュンドガン(マンチェスター・シティ)は、自身の将来について次のように語っている。

「かなり前から引退後のキャリアについてどうするべきか考えていたし、その中で監督の仕事に関して特に情報を集めている。僕はこれまでペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップ、トーマス・トゥヘル、ハンシィ・フリック、ヨアヒム・レーブといった多くの名監督の下でプレーしてきたし、今もしている。だから、若いサッカー選手にこの経験を伝えていきたい」

 錚々たる名将の下で蓄積された素晴らしい経験は、後進のために活かされるべきだろう。だからといって元プロがすぐにプロの指導者になれる環境を作ることが、彼らのセカンドキャリアをサポートすることにはならない。

「特別すぎる優遇措置を作るべきではない」

 ドイツには、そう断言できる極めて分かりやすい教訓がある。実際に、まったく結果が伴わなかった事例があるのだ。

例外はアメリカで勉強し直したクリンスマンだけ
 DFBは1990年のワールドカップ優勝メンバーに対し、本来なら10カ月かかるフースバルレーラー・ライセンス(UEFA‐S級ライセンス相当)を、わずか240時間で取得できるという特別優遇措置を認めていた。

 しかし、プロ指導者としてトップレベルで大成した人物はいない。

 あのディエゴ・マラドーナを封じたギド・ブッフバルトは日本でこそ成功を収めたが、ドイツではオファーがない。世界一のマンマーカーと恐れられたユルゲン・コーラーは、3部リーグのビクトリア・ケルンのU-19を率いていたが、2020年6月限りで退任となった。一度暫定監督としてトップチームを指揮したこともあったが、翌シーズンから再びU-19に。トップチームを担当するだけの指導能力がない、というのが理由だったという。

 キャプテンだったローター・マテウスにしても、宮本恒靖が所属していた時代のレッドブル・ザルツブルクのヘッドコーチなどを経験し、その後ブルガリア代表監督を務めはしたが、2011年以降は指導者として仕事をしていない。

 アメリカで勉強し直したユルゲン・クリンスマンだけが唯一の例外というのも興味深い。残念ながら、どれだけ素晴らしい経験をしていても、それを伝えていくスキルと知識とバックボーンがなければ、指導者として成功することはできないのだ。

指導者として成功するための3つのポイント
 どうすれば、元プロ選手がプロ指導者としても確かな足跡を残せるようになるだろうか。大きなポイントは3つある。

 1つ目は、彼らが指導者としての基本を学び、最初の一歩を踏み出しやすいシステムを構築すること。2つ目は、その過程で指導者としての資質を持った人物を見つけ出すこと。そして3つ目は、指導者としての能力を高めていける環境を作ることだ。

 今回の『プレイヤーズ・パスウェイ』のプロジェクトは、成功へ導くための大事な第一歩になるだろう。

 彼らは、上から4番目の位置に当たるB+ライセンス講習会を受講。内容は他の指導者が受けるものと同じだという。ちなみにドイツのライセンス制度は新たな構造改革が行われ、一番上からフースバルレーラー、A+、A、B+、Bとなっている。

 そんな講習会で、実際に長谷部はどのように取り組んでいるのだろうか。

緊張する子供たちに見せたさすがの気配り
 精力的に取り組む様子が、地元メディアやクラブの公式ホームページからうかがえる。例えば、フランクフルトのU-15チームで指導実践をする際には、U-15のヘルゲ・ラッシェ監督と練習前に入念な打ち合わせを行っていた。自分がイメージしている練習内容を伝え、バリエーションを考え、「U-15の選手たちは、このレベルに対応できますか?」と細部を確認していた。

 フランクフルト公式ホームページの動画を見ると、「チーム1はマービン、アクガイ、ニロ。白(ビブス)ね」と、選手の名前を呼んで声をかけていた。

 なんと長谷部は、この日の練習のためにU-15チーム全選手の名前とポジションを事前に覚え、練習ごとに誰がどのグループでプレーすべきか準備していたのだという。

 ラッシェは「マコトが真剣に準備してきたことがわかり心を動かされたよ。今日、僕は必要ないくらいだった」と感嘆し、笑顔を見せていた。

 僕は、これまで様々な指導者講習会や国際コーチ会議に参加したことがある。そこで、いろいろな指導者の指導実践を見てきた。地元の街クラブや育成アカデミーの育成選手を相手にすることが多いのだが、普段指導していない選手の名前を覚えてくる人物は、正直見たことがない。

 だいたい、練習中に「名前はなんて言うの?」と聞きながら進めていく。それも1つのコミュニケーションスキルではあるが、選手からすれば、初めて会う指導者が自分の名前とポジションを知っていたら驚くだろうし、嬉しいはずだ。

 しかも、それがフランクフルトのレジェンドである長谷部誠なのだ。

 アカデミーの選手たちは、普段から長谷部のポジショニングや判断の確かさをビデオで学んでいる。長谷部のプレーそのものが、ドイツの子供たちの教材となっている。そんな選手が教えてくれるとなれば、緊張もするだろう。

 そうした空気を察したのか、長谷部はピッチ上で選手一人ひとりと拳を合わせたあとで、「今日のトレーニングを楽しみにしてきたよ、みんな!」と、普段通りの柔らかな笑顔とともに挨拶していた。また、練習中のゴールシーンでは両手を突き上げ子供たちと一緒に喜んでいた。そうした気配りができるのはさすがの一言で、指導者としてもとても大切な要素であることは間違いない。

「指導者というのは確かに1つのオプションです」
「最初に言いたいのは、みんなと一緒にトレーニングできたのはすごく楽しかったということ。DFBによるこのプロジェクト、助けてくれたヘルゲと、みんなに感謝しています。自分のセカンドキャリアがどの方向へ行くのかはまだわからないけど、指導者というのは確かに1つのオプションです」

 練習後、長谷部はクラブのインタビューで答えていた。もちろん始まったばかりだし、将来的にどんな道を選ぶのかはまだわからない。そして指導者への道を選んだとしても、フースバルレーラー・ライセンスは年間12人しか受講できない非常に狭き門で、やりたい思いだけではどうにもならない。

 プロクラブの指導者となるのは簡単ではない。教訓のあるドイツは、他国より厳しいと言えるかもしれない。それでも長谷部は、期待したくなるだけの資質を持っていると思う。もちろん、過度な期待は禁物。そもそも、まだまだ現役選手なのだがら。とはいえ引退後の長谷部の活躍も、今から楽しみだ。《前編から続く》

(「欧州サッカーPRESS」中野吉之伴 = 文)



2022/01/09(日)
5大リーグで日本人初のクラブレジェンドになるのかもしれない。

ドルトの香川、セルティックの中村とレジェンドになってる選手はいるが、クラブ幹部にまで昇り詰めるのは言語や文化的な側面で困難。

それを成し遂げようとしている。

こんな選手他に出てくるだろうか。
国民栄誉賞モノだ。

2022/01/09(日)
日本代表監督に相応しいスキルを持った人材が出てこないのは、世界レベルで指導者としての教育を受けてないし、実践していないからですよね。そういうチャンスは選手として海外で活躍している人の所にしかないので、この機会を活かして指導者経験を積んで、日本に還元して欲しいなぁ。頑張れ長谷部!

2022/01/09(日)
U15の選手の名前を覚えて行く辺りが、整える男・長谷部らしいですね。

長谷部は語学堪能・戦術理解も高く、日々の努力だけでなく、対戦相手の事など闘う前の準備も常に怠らずに積み重ねていっている選手の鑑。
日本じゃなく、5大リーグのブンデスのチームで評価されてるんだからホントに敬服する。

2022/01/09(日)
今の代表に海外経験の無い森保さんを使ってもいい結果は生まれないでしょう…
長谷部に限らず日本人監督を選ぶなら、海外経験のある人を選んだ方がいいかもね…岡田さんは頭が良かったからね…

2022/01/09(日)
講習会に選ばれてるのそうそうたるメンバーなんだよね
アジア人で選ばれてるのはまじで凄いと思う
欧州主要リーグ1部で日本人が監督やるとなったら感動ものです

2022/01/09(日)
日本のサッカーの礎を築いたと言われる西ドイツのクラマー氏は メキシコ五輪3位の奇跡を演じた釜本氏の時代になる。日本人初の海外移籍をした奥寺氏のドイツ1,FCケルンで活躍など 日本とドイツサッカーとのかかわりの歴史は長い。
その歴史に名を刻んでいる長谷部の今後は 日本のサッカー界にとっても光明になると思いますね。特に選手が世界レベルでのプレーを重ねていても そのレベルを経験した日本人監督がいないのは、結局 海外との差をなかなか縮めることができない一因になって居ると思います。今の代表のように同じことを繰り返しつまらない試合をリピートようにしか見えないのは 監督や協会側にも問題があるはず。確か田嶋会長もドイツ留学されたと思いますが..。

2022/01/09(日)
ドイツ人監督は今や世界のトレンドだし
そのドイツで監督としてセカンドキャリアをスタート出来るならこれ以上のことはない。

日本にも世界的な監督が必要になってきている。

2022/01/09(日)
ドーハ組が監督として国内リーグの指揮を執っているのが今の世代だが、現役時代に海外での実績がない人物が海外クラブを率いる機会を得ることは不可能に近い。長谷部のようなキャリアを送り海外で指導者としての経験を積んでこそ、初めて海外基準の日本人監督の誕生と言えると思う。

2022/01/09(日)
ヨーロッパ主要リーグで初の監督になれるポテンシャルがあるのは今のところ長谷部だけだからめちゃめちゃ期待が高まる。
中田英寿がそういう情熱があれば語学力や外交力、キャリアでなれていたかもしれないけど。

あとはモウリーニョやサッリ、ナーゲルスマンのように選手としてのキャリアがなくてもヨーロッパで指導者目指す若い日本人が出てくると面白いんだけどな。ジャイキリみたいに。

2022/01/09(日)
日本で元代表への特別措置が廃止されたのは、武田修宏のおかげ(せい)であるのはよく知られた話。











スポンサード リンク

ブログランキング にほんブログ村 サッカーブログへ