ひとつ対応を間違っていれば大騒動に発展していたかもしれない問題を、適切な対応でチームの絆を深める出来事に変えた。Ｊ１神戸ＤＦ酒井高徳（３０）が２９日、鳥栖戦（３０日・ノエスタ）を前にオンライン取材に応じ、前節・柏戦（２６日・三協Ｆ柏）終了直後に発生した騒動について説明した。

　試合はアウェーの神戸が２－１で勝利。終了直後、柏ＦＷクリスティアーノが激高し、神戸ＤＦ菊池流帆に詰め寄る。柏のゴール裏からも怒号が飛び、スタジアムが騒然とした。整列後、神戸のゲーム主将を務めたＭＦ山口蛍は山本雄大主審と話し込むと、柏ゴール裏に向かった。これに酒井、菊池が続き、柏サポーターに頭を下げたことで、不穏な空気が和らいだ。

　数時間後、菊池が自身のツイッターを更新した。「自分自身もみんなにとっても後味が悪いのは嫌なので説明させてください」と何が起こったのかを明かした。そこで菊池は終了後に柏サポーターにガッツポーズをしたことを謝罪。試合中にスタンドから侮辱的な言葉を言われて熱くなったこと、適切な対応をしてくれた山口と酒井への感謝、チームのため怒りを示したクリスティアーノや柏サポーターへの感謝などストレートな思いをつづった。

　この件を受けて、柏も公式サイトに「ご来場の皆様に観戦ルール遵守のお願い」と題した瀧川龍一郎社長名義での文書を２８日に掲載。「Ｊリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」違反となる大声でのやじがあったことなどを報告。ＳＮＳでの神戸選手に対する侮辱発言があるなどの報告も受けていると明らかにし、観戦ルールの徹底を改めて求めた。

　ゴール裏に向かったことについて酒井は「ピッチの上で戦っているのは１１人で、１人に責任があるわけじゃない。１人が何か間違ったことをしてしまったことに対してはチームとして行動することが大事。それを率先して蛍がやっていたところで、自分はそれを１人で行かせるわけにはいかないと思ったので一緒に行きました」と説明する。「あの行動をとった蛍は、ゲームキャプテンとしてふさわしい行動だったと思いますし、このチームにとって非常に大事な選手だと思う」と続けた。

　菊池の行動については賛否両論あるとしながらも「ただひとつだけ自分の立場から言えるということは、何か人を侮辱するようなこと、チームを侮辱するような行動を流帆がとったとは僕は思わない」と自身の思いを語る。ドイツで長くプレーした酒井は、ゴール後に膝滑りして相手サポーターに向かって喜んだりする姿を普通に見てきた。「日本では良くなかったということで、しっかり謝りに行ったというのは流帆にとってすごく大事なことだった」と語った。

　菊池へのエールも忘れない。「僕は流帆の負けたくないという気持ちは逆にいろんな人に見習ってほしいし、これからも彼はああいうプレーヤーでいてほしいと思う」と闘志むき出しのプレースタイルを評価する。そして「たまにだったら一緒に謝りに行ってやるよというくらいですけど」と笑顔で続けた。

　多彩なタレントを抱える神戸だが、改めて山口、酒井の元日本代表がチームに与える影響の大きさを感じさせる一件だった。酒井は最後に「終わった話ですし、起こったことに対しての対応はしたのでこれ以上、自分たちも関わった人たちもそのことに対してああだこうだ言うことはもうなしにしてほしい。次の試合が僕らには待っていて、進まなければいけない道がある。そっちの方にベクトル向けて歩いていけたら」と語った。

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