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 気がついたときには敵地・昭和電工ドーム大分まではるばる駆けつけ、ゴール裏の一角に陣取ったサポーターへ向けて左胸の心臓のあたりを誇らしげに2度叩き、そして頭をぺこりと下げていた。
 
「ぶっちゃけ、本当に何も考えていなくて」
 
 愛着深いセレッソ大阪を自らの意思で離れ、名古屋グランパスの一員になって9試合目。ようやく決めた新天地での初ゴールに、FW柿谷曜一朗は無意識のうちに心のなかで謝っていたと明かした。
 
「期待してくれていたサポーターもたくさんいたなかで、ゴールという形でみなさんに、名古屋グランパスに受け入れてもらおう、という気持ちで必死にプレーしていたんですけど、初ゴールがあまりに遅かったな、というのが自分のなかであって。なので申し訳ない、と。これからもっと頑張ります、という意味を込めたというか、体が勝手にそうなっていました」
 
 大分トリニータに3-0で快勝し、浦和レッズがもつJ1リーグ記録を7シーズンぶりに塗り替える、8試合連続無失点を達成した11日の明治安田生命J1リーグ第9節。柿谷が追い求めてきた移籍後初ゴールの瞬間は、2点のリードを奪ったまま迎えた後半アディショナルタイムの2分に訪れた。
 
 大分のパスをインターセプトした右サイドバック、20歳の成瀬竣平が攻撃は最大の防御とばかりに攻め上がる。大分ゴール前へ走り込んできた、FW相馬勇紀へのアーリークロスは大分のDF黒崎隼人が必死にカット。こぼれ球を日本代表MF稲垣祥が拾い、再び成瀬へ預けた直後だった。
 
 ペナルティーエリアの右から、ゴールキーパーと最終ラインの間へ速いクロスを入れると見せかけた成瀬が、一転してマイナスの方向へボールを折り返した。あうんの呼吸で、やや遅れて走り込んできた柿谷が完璧なタイミングで左足をヒットさせ、ゴール左隅へ強烈な一撃を突き刺した。
 
 照れくさそうな笑顔を浮かべながらそのままゴールラインを越えて、拍手を送りながら喜ぶサポーターへ向けて、お辞儀をしているようにも映ったしぐさを見せた柿谷は「あまりよく覚えていないんですよ」と、記念すべきゴールが決まるまでの数秒間を振り返った。
 
「みんなで必死にハードワークした結果として、たまたま自分の前にボールが来ただけだと思っているので。後でもう一回、映像を見て振り返ってみようと思っています」
 
 大分戦では5試合ぶりに先発を外れ、ベンチで戦況を見守った。開幕から無敗をキープする名古屋だが、直近の2試合はFC東京、湘南ベルマーレとスコアレスドロー。無失点こそ継続したものの、同じく無敗の首位・川崎フロンターレとの勝ち点差が広がった状況を柿谷はこう受け止めていた。
 
「相手がどこであれ、自分たちのサッカーをしっかりできる、という自信はもちろんあります。ただ、それは相手も同じだし、本当にレベルの高い選手たちがそろっているリーグで、お互いに全力で取り組んだ結果として、どの試合でも常に、というのは難しいかもしれないけど……」

大分戦のキックオフを控えた時点で、名古屋の1失点は消化試合数が少ないガンバ大阪と並ぶリーグ最少だった。しかも、唯一の失点はアビスパ福岡との開幕戦の後半37分に、DF吉田豊が献上したオウンゴールなので、相手チームに攻め込まれた末に奪われたゴールはまだ「0」となる。
 
 3位に食い込んだ昨シーズンもリーグ最少の28失点と、堅守をベースにすえながら3シーズン目の指揮を執る、イタリア出身のマッシモ・フィッカデンティ監督は必然的な結果だと力を込める。
 
「吉田もオウンゴールを決めたくて決めたわけではないし、記録上では失点しているものの、私たちとしては開幕から9試合を守り切ってきた感覚がある。選手たちもそこに強いこだわりをもってプレーしているので、そういう試合をずっと続けられるようにしていきたい」
 
 絶対的な守護神ランゲラック。キャプテンの丸山祐市と、日本代表に選出された中谷進之介のセンターバックコンビ。そして、豊富な運動量とボール奪取術に長けた稲垣と米本拓司のダブルボランチ。個々の質の高さもあるが、堅守の源泉は前線から繰り返される、労を惜しまないハードワークにある。
 
 新型コロナウイルス禍で過密日程を余儀なくされた昨シーズンは、丸山と中谷がリーグ戦34試合、3060分間にフルタイム出場。稲垣も全34試合に先発して堅守を具現化したなかで、今シーズンはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の戦いが新たに加わってくる。
 
 選手層を厚くし、存在するすべてのタイトルを手にするためにオフに加わったのがDF木本恭生(セレッソ)であり、FW齋藤学(川崎)であり、MF長澤和輝(浦和)であり、そして柿谷だった。大分戦では丸山と木本がセンターバックで、米本と長澤がダブルボランチで先発している。
 
 試合は昨シーズンに続いて攻撃陣の核を担うFWマテウスの活躍で、前半のうちに2ゴールを奪取。大分に対して優位を保ち続けたなかで、柿谷がトップ下として途中出場した6分後の後半20分から、システムをそれまでの[4-2-3-1]から米本をアンカーにすえた[4-1-4-1]へ、終了間際には最終ラインに中谷を投入した[5-1-2-2]へと目まぐるしく変えた。
 
 センターバックとボランチの両方でプレーできる木本をはじめとする新戦力の加入に、開幕直後から「私に新しい選択肢を与えてくれている」と手応えを感じていたフィッカデンティ監督は、3つのシステムを試合展開に応じて巧みに使い分けての零封勝利を満足そうに振り返った。
 
「次の試合もまた中2日で訪れるなかで、必要以上に体力を消耗しないように、まずはしっかりと守る判断を選手たちは下してくれた。2-0という状況をコントロールして、バタつくことなく試合を終わらせる、という考えを選手たちが抱きながらプレーしたことが非常に重要だと思っている」

 相手を零封したまま試合終了を迎えるシーンから逆算しながら、柿谷はシステムが[4-1-4-1]に変わってからは最前線にシフト。ボールを失うリスクを極力抑え、攻守の切り替えを含めたハードワークに比重を置き続けたなかで生まれた初ゴールを、あらためてこう振り返った。
 
「もちろんゴールを取ることも考えて途中から出場しましたけど、それ以上にチームがこれだけ好調だし、僕が出るまでも前線で(前田)直輝や(齋藤)学があれだけハードワークしてくれていたので、僕もしっかりと闘って相手をシャットアウトしよう、と。そうしたなかでのゴールだったので、自分のなかではちょっとびっくりしたというか。でも、ホッとした部分もありますけど」
 
 消化試合数がひとつ多い川崎は、11日に行われたFC東京との「多摩川クラシコ」を4-2で制し、2位・名古屋との勝ち点差を「5」に広げて首位をキープした。そして、ACLが絡んだ変則日程で、川崎とはゴールデンウイーク中の今月29日にホームで、5月4日には敵地での連戦が組まれている。
 
 今シーズンの覇権の行方を左右しかねない連戦が迫ってきたなかで、堅守へさらに磨きをかけてきた名古屋のなかで、攻撃に厚みを加えてほしいと期待を託された31歳に待望の初ゴールが生まれた。
 
「もっと、もっとチームを助けられると思っているので、本当にこれを続けていくことですね」
 
 小学生年代のジュニアから所属してきたセレッソと、完全移籍という形で決別してから3ヵ月とちょっと。重圧から解放された安堵感に浸ったのも一瞬だけ。柿谷はすでに視線を前へと向けている。
 
(文責・藤江直人/スポーツライター)



2021/04/12(月)
セレッソ大阪を離れた覚悟は海外移籍の時とまったく違うと思う。
好調なチームの歯車になってもう一花咲かせてください!

2021/04/12(月) 
セレッソでも名古屋のサポーターではないけど、好調な頃の柿谷の見ていて楽しいプレーは好きです。 
ダブルタッチヒールのゴールや後方からのロングフィードをスピードを落とさずトラップするプレーは今でも記憶に残ってます。
また柿谷にしか出来ないようなスーパープレーを見せて欲しい。

2021/04/12(月)
ゴール後のお辞儀を見て、何かグッとくる物を感じた。ケチャップドバドバに期待。

2021/04/12(月)
やっぱ柿谷ってめっちゃ上手いよな

2021/04/12(月)
ずっと待ってました。本当に嬉しい

2021/04/12(月)
怪我気をつけて











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