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 その瞬間は、試合開始直後の前半3分に訪れた。

 セネガル代表FWサディオ・マネからパスが入ると、南野拓実は敵がブロックに飛び込んできたのを察知。キックフェイントで冷静に間合いを外し、ゴール隅に豪快に蹴り込んだ。得点後、コーナー付近まで走り込んで歓喜の雄叫びを上げると、あとを追ってきたチームメートにもみくちゃにされた。待望の「プレミア初ゴール」が生まれた瞬間だ。

 現役時代には名うてのテクニシャンとして知られた、元トッテナムのグレン・ホドルも思わず舌を巻いた。

「シュートを打とうとした瞬間、マーカーがタックルを仕掛けてきた。だが、南野はフェイントを入れ、スペースを上手につくった。このファーストタッチがよかった。素晴らしいフィニッシュだ」

 日本代表FWの先制点で勢いがついたリバプールは、ここから怒涛のゴールラッシュ。7ゴールを奪い、難敵クリスタルパレスを大差で粉砕した。


左FWとしてハーフスペースを有効活用
 
 得点シーン以外でも、現地時間19日のクリスタルパレス戦で南野は光り輝いた。4-3-3の左FWとして先発すると、攻守両面で貢献。攻撃時はサイドから中央寄りにポジションを移し、相手SBとCBのちょうど中間のエリア、つまりハーフスペースでパスを巧みに受けた。

 そして、相手ディフェンスに守備の綻びを見つけると、フリーランで積極的にスペースを突いた。後半14分にはダイアゴナルランでナビ・ケイタのラストパスを引き出し決定機につなげたが、シュートはわずかに枠をそれた。この場面と同じように、左サイドからゴール前の中央部にスライドする仕掛けを何度も見せ、クリスタルパレス守備陣を大いに混乱させた。

 ディフェンス面でも、強度の高いプレスでチームを支えた。


攻→守の“ネガトラ”の急先鋒になった
 
 特に前半のリバプールは、ボールを失った直後に敵に寄せて奪い返す「即時奪回」を徹底していたが、そのプレスの急先鋒に南野がいた。攻撃→守備のネガティブ・トランジション(切り替え)が素早く、それでいて運動量も豊富。試合終了までピッチを縦横無尽に走り回った。

 試合後、そんな南野の出来について、うれしそうに語ったのがユルゲン・クロップ監督だった。

「タキ(南野の愛称)は今日、最高のゲームをしてくれた。ナイスなフィニッシュだったし、なにより調子がいい。先発に驚いていたかはわからないが、起用するのにふさわしい動きを練習から見せていた。だからこそ、彼を先発で起用した」

 もともとドイツ人指揮官は、インテンシティの高いディフェンスをこなしながら、オフザボールの動きで決定機に絡める南野の特性を高く評価している。この日の日本代表アタッカーは、まさに監督の期待通りのプレーを示した。


ジョタに序列で抜かれ、現地報道も懐疑的に
 
 だが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。とにかく、プレミア初ゴールまで非常に時間がかかった。世界王者リバプールの一員になったのは今年の1月1日。コロナ禍で3月から3カ月間の中断があったとはいえ、国内リーグ戦の初ゴールまで1年近くを要した。

 今シーズンの10~11月には出場機会が激減した。夏の移籍期間に加わってゴールを量産しているポルトガル代表FWディオゴ・ジョタに序列で抜かれ、ベンチで試合終了のホイッスルを聞く試合が増えた。

 久しぶりに出番があっても、試合勘の欠如からパフォーマンスが振るわないという悪循環に陥ったのも、ちょうどこの頃だ。国内リーグ13節まで無得点で、一部の英メディアから懐疑的な意見が出始めるなど、苦しい時を過ごした。

 転機になったのは、けが人続出の非常事態で、本職ではないインサイドハーフとして先発したチャンピオンズリーグのミッティラン戦(現地時間12月9日)。ここで、今季リバプールの公式戦でチーム最多となる37回のプレスを記録して存在感を示し、今節のクリスタルパレス戦の先発につなげた。

 ただ、イングランドの識者たちは、日本代表FWに多くを求めるのはまだ酷だと話す。

 クリスタルパレス戦の試合前、現役時代にチェルシーやリバプールでプレーした元イングランド代表MFのジョー・コールは、南野について次のように語った。


「クロップは選手補強での失敗が少ない」
 
「昨シーズンと合わせると、プレミアリーグ17試合に出場して無得点。たしかに、理想的な状況ではない。だが南野が、リバプールという巨大なマシーンのようなチームに入ったことを忘れてならない。しかも、加入する前の2年間、クロップはチームメンバーをあまり変えず、選手をほぼ固定して戦ってきた。南野はそんな完成度の高いチームに加わり、すぐに違いを生み出す必要があった。それは難しいことだと思う。とはいえ、クロップは選手補強での失敗が少ない。南野には才能があるし、これから伸びていくと思う」


マクマナマンも南野の状況に理解を示す
 
 リバプールのプレースタイルは極めて特殊だ。取材現場で強く感じるのは、目が回るほどのスピードである。

 パスやカウンターといったプレースピードはもちろん、選手個々の状況判断も異様なほど速い。取材ノートにメモを書こうと下を向き、ふたたび顔を上げたら戦況がまるで変わっていたことも少なくない。この中にポンと入り、すぐに存在感を示すのは決して容易なことではない。J・コールの言葉から考えれば、突如覚醒したジョタの方が、むしろ例外的だったのだろう。

 リバプールのクラブOBで元イングランド代表MFのスティーブ・マクマナマンも、J・コールの意見に同調する。イングランドからスペインに渡り、レアル・マドリーで2度の欧州制覇を経験した「海外移籍の経験者」は、次のように話した。

「南野の状況は簡単ではない。オーストリアのザルツブルクから比較的安い移籍金でリバプールにやってきた。2シーズン前にチャンピオンズリーグを制したリバプールと、ザルツブルクの差は計り知れない。選手の質も格段に上がるし、クラブ規模も大きく違う。言葉の壁もあるだろう。だから、適応に時間がかかるのは当然だ。実際、南野がリバプールですぐに活躍できるとは思っていなかった。でも、これからの数年間で、彼は確実に成長していくと思う」

 南野が試行錯誤を続けたこの1年間、温かい眼差しを向けながら、背中を押してきたのがクロップ監督だ。とにかく、このドイツ人指揮官は選手対応にブレがない。公の場で選手を批判するようなことは一切せず、持ち味を伸ばそうとひたすら尽力する。
 

初練習から熱血教師のようなアドバイス
 
 南野がリバプールで初めてのトレーニングを終えた後も、「周りの選手が誰であるかなんて気にするな。ザルツブルクのときのようにプレーすればいい。君のやり方でプレーしてくれ。とにかく楽しめ」と、クロップは声をかけたという。

 なにかと口うるさい英メディアに対しても、入団時から「タキには時間が必要だ。そうでなければおかしい」と言い続け、「報道陣は入団から3~4カ月で新加入選手の評価を求める傾向にあるが、わたしはそんな短期間で選手を見ていない」と釘を刺したこともあった。

 クロップの言葉は、ときにリップサービスに聞こえることもあるが、選手から余計なプレッシャーを取り除こうとしているのは十分伝わってくる。イメージ的には、生徒思いの熱血教師だ。


コロナ禍、南野の自宅にケータリングを手配
 
 さらに、今年はコロナ禍の影響も大きかった。南野がオーストリアから英国に渡ってきて3カ月も経たないうちに、ロックダウン(都市封鎖)がイングランドで施行された。在英19年の筆者もロックダウンの開始直後の3~4月は戸惑うことが多かった。

 1月に正式加入したばかりの南野には、さらに苦労が多かったことだろう。日常生活だけでも支障が多いなか、南野の場合は、プロ選手として結果を求められる立場にもあったのだから。

 ロックダウン解除後、53歳の指揮官は「(新型コロナウイルスの感染拡大で)タキは、我われ全員の人生の中で最も難しい時期にリバプールにやってきた。ロックダウンの中で、1人で暮らしていくとなれば、様々なことに対処しなければならない。大変だったと思うが、よくやってくれた。彼はスーパー・プロフェッショナルだ」と褒めていた。

 言葉をかけるだけでなく、支援も忘れなかった。ドイツ人のクラブ栄養士モナ・ネマー氏の管理の下、ロックダウン中は南野の自宅にケータリングで食事を手配するなど、万全のサポートで支えた。

 そんなクロップについて「彼はなにかと南野を気に留めている」と話すのは、英紙サンデー・タイムズでサッカー部門の主筆を務め、リバプールの内部事情にも詳しいジョナサン・ノースクロフト記者だ。

「南野は、まだバックアッパーの扱いだが、クロップはこの日本代表を選手として、そして人としても、非常に気に入っているように見える。この点は、チーム内で競争していく上で大きなアドバンテージになる」と証言する。たしかに、記者会見で南野に関する質問が出ると、クロップは柔和な笑みを浮かべてから話し始めることが多い。ひたむきにサッカーに打ち込む姿勢を気に入っているのだろう。


ビッグゲームでの出場がないのは事実だが
 
 もちろん、マンチェスター・シティ戦やトッテナム戦のようなビッグゲームで、南野が出場機会を与えられていないのは紛れもない事実だ。

 ノースクロフト記者の言葉通り、まだ立ち位置はバックアッパーである。だが、この日本代表が身を置くのは世界王者のリバプール。限られた出番のなかで最大限のアピールをし、いかに存在価値を高めていくか。ここが今後のテーマになる。

 プレミアリーグ初ゴールは、前に進むための大きな一歩となった。ただ、それも通過点に過ぎない。

「タキはこれからチームにとって大きな力になる」

 そう力を込めるクロップの言葉通り、南野にとって本当の勝負はここから始まる。

(「欧州サッカーPRESS」田嶋コウスケ = 文)
https://news.yahoo.co.jp/articles/166c6930b3eae5a1f299d68e968738f56fc76516?page=1
 


2020/12/21(月)
リバプールだから移籍したんじゃなくて
クロップだから移籍したのかな
得点もありきだけど
試合全体の攻守の運動量をしっかりみてくれてみえない貢献を評価してくれるところが
クロップの素晴らしいところだよな

2020/12/21(月) 
活字だけ見てもクロップの為に働いてみたいと思えるんだから、間近の選手達はもっとクロップに忠誠心あるんだろうな。
Jリーグの監督もクロップの采配は真似できないにしても、クロップのコメント力をもう少し学んで選手の士気を上げれば結果も違ってくるだろうに。

2020/12/21(月) 
本当にここまで温かい監督はいない。
本来ならもう出番が無くても文句が言えない状況だった。
南野はこの期待になんとか応え続けてほしい。

2020/12/21(月) 
ドルトムントの香川の時もだけど、クロップって上手い人ならアジア人だからとか一切、偏見なく使ってくれるよね。人間性も素晴らしい監督だと思う。

2020/12/21(月)
リースウィリアムスやカーティスジョーンズ、ネコウィリアムスなどの若手を使い、結果が出なくても南野を使って遂に結果を出し、チームも首位に立っている。
クロップはほんまに偉大やな。

2020/12/21(月)
いくらクロップが気にかけてくれたところで、外野の声も含め南野にかかっていたプレッシャーは計り知れない。
この状況で自分を信じて続けるのは大変だっただろう。プレミア初得点までたどり着いた南野選手を尊敬します。

2020/12/21(月)
監督あっての今なのは間違い無いよね
普通ならとっくに戦力外で構想外

アジアマネー的な商業ポジションはあるのだろうけど、
ここまで長い目でチャンスを与えてくれるクロップならでは
見てる1ファンとしてありがたいね

2020/12/21(月)
ドルトムント時代から見てるけど、クロップ監督は選手から支持される監督だし、その上で結果を出すからスゴいよね。
ポリシーも一貫してるから発言もブレないし、見てるこちらも信頼して見ていられる。

2020/12/21(月)
選手のベストを引き出す為に何が必要なのかを考え、目先の結果だけに左右されず時間を与えていく。
監督として当たり前のようだけど、リヴァプールで結果出しながら、補強できる状況にありながら、南野を信じ続けて来てるのはすごい。

まだプレミア1ゴールだし、トータルでいえばまだリヴァプールに全然貢献出来てないからここからの巻き返しを期待したいな。

2020/12/21(月)
南野のポジティブな記事ほど嬉しいものはない。最初は楽勝ゲームのなかでも1点とれてホント良かった程度の気持ちだったけど先制点だし動画見たら素晴らしいゴールだしで喜びも倍増ですよ。最近調子上げてるのはわかってたけどあれほどまでに落ち着いて決めきって楽しんでるって感じがする。特に攻撃には遊び心がないといいプレーできないからね。この調子でお願いしますよ。

2020/12/21(月) 
プロの世界における監督の重要度はそこまで大きくないと思っていたのですが、それが誤りだと気付かされました。
特にチームスポーツにおける監督は、戦術・采配の能力と同じくらい、選手個々への配慮やチーム全体から信頼される"人間性"も大切なんだと感じました。
いつかクロップ監督に日本代表監督をやってほしいです。

2020/12/21(月)
自分はどちらかと言うと南野選手には否定的な立場(と言うより無理やり持ち上げるメディアに辟易)ですが、パレス戦での南野選手は本当に素晴らしかったと思います。
得点シーンは勿論ですが、後半のクロスのシーンやフィルミーノの2点目の際のDFを引き付ける囮の動きが特に素晴らしかったです。
2点目に迫ったシーンも、シュート精度以外は文句無しだったので、あれなら次のゴールも時間の問題だと思える内容でした。
ジョタまで離脱している今、フロント3のバックアッパーが務まる選手は本当に貴重です。
今後も期待しています。

2020/12/21(月)
クロップの様な監督に出会えたことはきっと選手として幸せな事だろうね。
リバプールにいる事を考えると南野選手の状況は当たり前の事なんだろう。
それでも、クロップが監督でなければ出場機会を求めて移籍を考えたかもしれないが、南野選手のモチベーションの管理をクロップがしているのならここで全力を尽くすという考え方になるのだろうな。

2020/12/21(月) 
南野の練習での継続性などももちろん賞賛に値すると思うけど、それ以上にクロップの偉大さが改めて際立つような記事ですね。これからも間違いなく出番はあるでしょうし、チームの勝利に貢献してほしいです。

2020/12/21(月)
クロップがリバプールの監督に就任するのが決まった時、一番盛り上がっていたのが選手たち。

能力と人間性が高次元でバランスしている監督なんてなかなかいないでしょ。

2020/12/21(月) 
サラー、フィルミーニョの決定力が凄い。技術はすぐ向上するものではないが、南野も得点を重ねることでペナルティエリア内での精度をさらに上げてほしい

2020/12/21(月)
試合は選手がやるものとは言えやはり監督の存在は大きいと思います。
日本代表もクロップのように素晴らしい監督がきてくれる事を願ってます。

2020/12/21(月)
3点目の動きは良かった。南野の動きに3人引き連れて後ろからやってきたフィルミーノが決めるという。あれ決めたフィルミーノのトラップとシュートもすごいけど。

2020/12/21(月)
リバプールくらいの強豪となれば、数か月くらい結果が出なければ見切られても
おかしくない。
そこを使い続けてくれたクロップに恩返ししてほしいなあ。

2020/12/21(月)
監督がクロップで良かったよね。
彼はどのチームも強くするけど、同時にどの選手への信頼も怠らない。

2020/12/21(月) 
不器用な選手だから気をかけたくなるし、かわいいんだろうなあ。生意気なやつは嫌いなんだよ。ジョッタも今はゴールできてるけど、クロップに嫌われたらパフォーマンスも悪くなるんだよ。南野は今は悪い状況だけど、結果次第でいくらでも挽回できるような体制が整っているね。

2020/12/21(月)
これだけ結果が出ない選手を辛抱して使い続けて励まして結果を出させるだけでなく、チームとしてもしっかりと結果を残しているクロップの手腕たるや…

2020/12/21(月)
理想の上司だよなぁ。
協会は何億積んででも日本代表の監督に指名していただきたいものです。

2020/12/21(月)
チャンピオンチームのサブメンバーって事だけで、充分に胸を張れる状況だと思う。
期待はするけど、トップチームは移籍金100億レベルの攻撃陣やしね。

2020/12/21(月)
やっぱり香川真司との関係性のおかげやろうね
シンジがドルトムントで頑張ってくれたからクロップも日本人にいいイメージを持って対応してくれている。
日本人プレイヤーの扱いを良くわかってる

2020/12/21(月) 
ジョタに序列で抜かれ?ジョタは加入時すでに南野より2ランクは評価が高い選手だったんだが。なぜライバル設定に?

2020/12/21(月)
クロップで本当によかった。モウだったら今頃アンダーのチームに行かせられた

2020/12/21(月)
クロップとリバプールというクラブの相性が抜群。
こんな最高の監督だったらついていきたいし、やってやるって思うだろうな。

2020/12/21(月)
見えない所ではなくて、クロップはそこを重視しているようだ。守備陣が不安定な中、ゲーゲンプレスが命綱になるのだから。

2020/12/21(月)
エメリ「まだ足りんから使えない!」
日本代表「選手が自主的にやらんから・・」
いつの日か、クロップが日本代表を見てくれますように!











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