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“その時”

“その時”(C)MutsuFOTOGRAFIA

時間の問題というやつだ。ただ、静観していればいい。素晴らしい物語というものは、落ち着いて待っていさえすれば、その素晴らしさを実感する時が必ずやって来る。今季レアル・マドリーからのレンタルでビジャレアルに加入した久保建英の“その時”は、10月22日、欧州カップのデビュー戦で訪れた。

久保の同世代は怪物だらけ!既にCL・ELで活躍するトッププレイヤーたち

久保は2カ月の間チャンスを待ち続け、自分にとって偉大な夜にしなければならないとの使命とともにピッチに立った。それは日本だけでなく、スペインの多くの人々が、彼が出場する度に期待していたことである――。たった19歳でそんな期待を背負うなど本当に異常なことだが、彼という大器の宿命としか言いようがない。

久保はビジャレアルの公式戦7試合目にして手にした初の先発のチャンスを、しっかりと物にした。1-4-2-3-1のトップ下で出場した彼は、試合開始から20分の間にビジャレアルの先制点を記録したほか、カルロス・バッカの追加点をアシスト。攻撃面ではチームメートとしっかりと連係が取れ、ほぼすべてのプレーが正確で、2点目を決めるチャンスさえも迎えている。久保が輝いている時は、ビジャレアルにとって幸せな時間だった。ただ試合は流れが変わっていき、スイヴァススポルに同点に追いつかれてハーフタイムを迎え、勝利するためには途中出場のパコ・アルカセルの得点力に頼らなければならなかった。

成長の日々

エメリの指示を聞く久保(C)MutsuFOTOGRAFIA

選手の成功は多くの要因に依存するが、その一つが現状を受け入れて、あらゆる経験を吸収していくこととなる。まだ19歳の久保に輝かしい未来が待ち受けているであろうことは、誰にも否定できない。しかしながら将来的にマドリーのスターになりたいのであれば、今季は多くのことを学び、そこから結果を出す日々と捉えるべきだろう。

指揮官ウナイ・エメリは、日本が初めて手にするであろう未来のトップ・オブ・トップの選手が現状学ぶべきこととして、守備はもちろんのこと、攻撃の最終フェーズに移行するまでのプレー判断、それに伴うフィニッシュプレーの確度の向上を挙げていた。

確かにスイヴァススポル戦前までのラ・リーガの試合では、最終的に取り消された退場のプレーを最たる例として不用意にボールを失う場面が目立ち、その考えにも頷くことができる。ビジャレアル加入時の久保は即戦力の怪物選手と見られ、今なおその基準から物を言われているが、私はエメリが言う通り、彼がさらなる成長を果たすべきだと思っている。

物語の主人公

物語の主人公(C)MutsuFOTOGRAFIA

ここ数週間、私たちはスペインの首都で張られたキャンペーンに付き合わされることになった。そのキャンペーンとは、マドリーが久保を常時スタメンで使うようビジャレアルとエメリに求めている、というものである(まったく、ビジャレアルの現レギュラーたちに敬意を欠いている)。しかし肝に銘じておくべきは、マドリー寄りのメディアがラ・リーガ1部でわずかしか出場経験のなかったヘセ、ロビーニョ、またはイスコを将来のバロンドール候補として祭り上げてきたことだ。

そのように扱われた大多数の選手が結局“壊れたおもちゃ”となってしまい、報じてきたメディア自体に批判され、忘れ去られてきた。だからこそ、久保は賢くなければならない。彼のことを誰よりも理解する周囲の人々の意見を聞き、地に足をつけ続ける必要がある。

しつこいようだが、彼はまだ19歳なのだ。いつの日かマドリーで成功したいならば、まずビジャレアルでその価値があることを示さなくてはいけない。マドリーというクラブは、どれだけ名を馳せるスター選手でも決して活躍が保証されるわけではない巨大過ぎる存在である。しかし、いずれにしてもマドリー級と形容される立場、実力、結果は獲得しなければならない。無論、マドリー側の操作ではなく、自らの手によって、だ。

次の日曜のカディス戦は、久保にとって新たなチャンスになるのかもしれない。たとえ、そうならなくても、彼は次のチャンスをつかむために努力をし続けなければならない。その努力は、いつの日か必ず報われるのだから。

素晴らしい物語というものは、落ち着いて待っていさえすれば、その素晴らしさを実感する時が必ずやって来るのだ。新たな“その時”は、間違いなく、訪れることになる。この物語の主人公は、タケ・クボなのだから。

文=ビクトール・フランク/スペイン『オンダ・セロ』『マルカ』ビジャレアル番(ツイッター:@VictorFranch)
翻訳=江間慎一郎(ツイッター:@ema1108madrid)


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