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「最初に『+33』と入っていて、知らない電話番号だったんですよね」

 9月某日、島根県の立正大淞南高校サッカー部を率いる南健司監督のスマートフォンに、メッセージが届いた。開いてみると、動画ファイルが添付されている。

「立正大淞南高校の皆さん、こんにちは。長友佑都です」

『33』はフランスの国番号。長友の専属トレーナーを務める鬼木祐輔氏を通じてマルセイユから届いた動画には、体調への気遣いや誹謗中傷に対する心配、自身の海外でのプレー経験を踏まえた激励の言葉が収録されていた。

 9月には横浜FCの三浦知良からも関係者を通じて激励のメッセージが届いた。カズは自身の公式ホームページに掲載した新聞の連載コラムでも同校の一件を取り上げ、『罵りよりも思いやりを』と訴えている。

 いち早くブラジルから反応したのは、ボタフォゴの本田圭佑。8月12日に自身のツイッターアカウントで「立正大淞南高校、及びサッカー部の皆さん、コロナ感染について謝罪する必要なんてないよ」と呼びかけ、「今はしっかり食べて休んでな。また治ったら夢に向かって頑張れ。非難してる人だけでなく、心配してる人も沢山いることを忘れんといて」とエールを送った。


相次ぐ誹謗中傷、「窓を開けて大丈夫?」
 
 全国大会でも実績を残している強豪で、セレッソ大阪DF松田陸、ヴァンフォーレ甲府FW金園英学、FW松田力など、多くのプロ選手も輩出している同校サッカー部の専用寮で発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)は、学校関係では国内最大規模となった。8月8日に2人の感染が判明したのをきっかけに、最終的に関連も含めて108人まで拡大。だが市中感染には至らず、所在地である松江市の松浦正敬市長は9月10日に収束宣言を出している。

 同校にはクラスター発生直後から批判が殺到。SNSやインターネット上では無関係の生徒の写真が拡散されるなど、誹謗中傷が渦巻いた。換気のために寮の窓を開けているだけで「窓を開けているが、本当に大丈夫なのか」と電話が掛かってきた。


「終わった、と思った」
 
 寮ではクラスター発生前から、文部科学省などの指針に沿って手洗いやうがい、換気などを徹底し、ドアノブやトイレなどの共有スペースは毎日、消毒していた。7月下旬から8月上旬の県外遠征は、サッカー部専用のバスによる日帰りが基本で、移動中も多くの人が利用するサービスエリアには立ち寄っていない。唯一宿泊した大阪府への遠征時も、一般の宿泊施設ではなく、関係者の施設を利用するなど、外部との接触をできるだけ避けていた。

「実際にこうなってしまった以上、どこかに落ち度があったのは間違いありません」と南監督は語り、感染者の数がどんどん増えていった当時を「終わった、と思った」と沈痛の面持ちで振り返る。批判や誹謗中傷は自身にも及んだが、そんなときに希望の光となったのが、次々に寄せられた激励だった。

 冒頭に挙げたようなサッカー界のレジェンドだけではない。各地の高校サッカー部がSNSに激励の動画を投稿し、学校には全国のサッカー関係者や卒業生、学校の地元住民から飲食物や感染予防グッズなど、多くの支援物資が届いた。現在でも残りの一部が校内の一角を占めるほどの莫大な数で、同校の上川慎二教頭は「本当にありがたい限りです」と感謝し、南監督も「皆さんの支援がなかったら、どうなっていたか分かりません」と語る。


寮生活の見直し、班ごとの行動に切り替え
 
 同校は9月7日から通常授業を再開。サッカー部の専用寮は、厚生労働省のクラスター対策班から食堂や浴室の脱衣所の問題などを指摘されたことを受け、感染対策を見直した。122人の寮生を6~7人ずつ18班に分け、登校・下校時も含めて班ごとに行動することを徹底。食事や入浴は時間割を決めて密にならないように実施し、掃除もこれまで以上に入念に行うなど、再発防止に取り組んでいる。


感謝の気持ちを届ける方法は……
 
 生活環境が変化しても、日々の成長に向けて激しくボールを奪い合う練習風景は変わらない。今年度のキャプテン、DF山田和樹は「たくさんの方が、僕たちを信じてくれたことに感謝しています。それに応えるために結果を出したいです」と意気込む。高校サッカー最大のイベントである高校選手権の島根県予選は、10月23日に開幕。同校は5年連続19回目の出場を目指し、24日の2回戦から全国への戦いを始める。

 批判や誹謗中傷だけでなく、人の優しさにも触れた2カ月間を振り返り、南監督は「自分自身も、生徒も、今回のことをこれから先に生かせる人間でなければいけないと考えています」と言葉に力を込める。全国から寄せられた支援は、発送元が分かっていればお礼ができるが、匿名のものも多い。『地元のおばあちゃんより』とだけ書かれ、現金が入った封筒が学校に届いたこともあったという。

 立正大淞南のユニフォームカラーは、鮮やかな黄色。南監督は再スタートとなる選手権予選に向けて、選手たちに語りかけている。

「皆さんからの支援に直接お礼を言うことはできないけれど、感謝の気持ちを届ける方法が、1つだけある。元気な姿を、躍動している黄色のユニフォームを見せることだ」

(「高校サッカーPRESS」石倉利英 = 文)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c7f6677c2ef41feaa11bf0a5c5b24fc995ed39c6?page=1 










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