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『やべっちF.C.』(テレビ朝日)が9月27日で終了することになった。

 2002年から18年半続く番組の終了が報道されたのは7月だった。その際、多くのサッカー選手がSNS上でツイートし、番組存続を願った。そして今回、正式に番組終了が発表され、惜しむ声がサッカー界やファンから広がった。

サッカー選手にとって『徹子の部屋』のような存在だった
 槙野智章は「寂しいなぁ…でも感謝しかない! この番組を見てサッカー選手になりたいと思った。この番組に出たいと思って頑張った! この番組のお陰で成長できた! 本当にありがとうございました」と感謝の言葉を述べ、中村憲剛は「プロになった時『やべっちF.C.』に取り上げてもらうことが目標でした。矢部さん、スタッフのみなさん本当にお疲れ様でした!!」とねぎらいの言葉を贈っている。それだけ、彼ら現役のプロサッカー選手を始め、多くのサッカー選手やサッカーファンが『やべっちF.C.』を楽しみにしており、その番組を見て育ってきたことが分かる。

「やべっちF.C.に出たい」

 現に、そう語るサッカー選手が非常に多かった。『やべっちF.C.』はサッカー選手にとって報道番組とは異なり、一度は出演したい番組であり、サッカー選手にとっては『徹子の部屋』のような存在だった。
 

MC・矢部浩之が貫いた、選手へのリスペクトとサッカー愛
 
 それは、矢部浩之さんのキャラクターに因るところがすごく大きかったと思う。

 矢部さんは「お笑い芸人」として成功し、その業界では大物的な存在であるが、以前取材をした番組のプロデューサーを長年務めているテレ朝・中野達朗氏は「決して出しゃばらない、バランス感覚に優れた人」と語っていた。スタジオはもちろん、ロケでも選手に対していつも気遣いを怠らない。自身がサッカーをしていたこともあり、「サッカーでプロになるのはすごいこと」と、サッカー選手をリスペクトする姿勢を終始貫いた。それが選手に伝わったのだろう。「試合後のミックスゾーンに矢部さんが立つと選手が来てくれる」とも、中野氏は語っていた。

 出演した選手たちも矢部さんにイジられると、みなちょっとうれしそうな表情を浮かべていたのも印象的だ。サッカー選手に芸人みたいなことをさせるなという声もあったが、ここまでMCとサッカー選手が深い信頼関係で結ばれた番組は記憶にない。
 

やべっち、選手、クラブが三位一体となったユニークな企画
 
 矢部さんの存在とともに、『やべっちF.C.』がここまで支持されたのは、番組の企画にユニークなものが多く、魅力的だったことも大きい。

 シーズン前に放映される「デジっちが行く!」は、各クラブと選手のいろんな表情を捉えた冬の風物詩、名物企画になった。中村憲剛がそのシーズンのゴールパフォーマンスをお披露目したり、食事会場や部屋で主力選手の試合とは異なる表情や芸を見ることができた。また、知名度のない選手がネタを見せることで人気者になるケースもあった。「デジっち」を見て、その選手のファンになり、気になってスタジアムに足を運び、サッカーファンになった人も多いのだ。最近は、かなり凝った作りになり、クラブ対抗のネタ見せ企画のようになっていたが、この企画の影響力、期待感は大きかった。他にもリフティングの「宿題」、鍋を囲んでトークする「鍋っち」など多くのユニークな企画を生み出し、コアなサッカーファンだけではなく、小学生や若い女性などあらゆる層に響き、サッカーファンを増やしていった。

 こうした取り組みがJリーグに評価され、2013年にはついに「デジっち」がJリーグ公認企画に。コロナ禍の時には逆にクラブの方から「やれることがあれば、なんでも言ってください」という連絡が入ったという。やべっち、選手、クラブが三位一体となり、サッカー界を盛り上げていこうという姿勢が視聴者に伝わり、共感を得たのも番組が長く支持された要因のひとつだろう。

 それだけに、なぜ今、という思いもある。テレビ朝日は、「総合的な判断」ということで番組終了を発表している。
 

2020年で終了する「AFCとの放映権契約」を更新できなかった
 
 理由を考えてみると、たしかにここ数年、番組の視聴率が低調で苦戦を強いられていた。コロナ禍の影響で東京五輪が1年延期になり、スポンサー収入が減少したことも要因としてあるだろう。ただ、今回の番組終了の背景にあるのは、2020年で終了するAFC(アジアサッカー連盟)との契約を更新できなかったことが大きいのかもしれない。

 2001年にテレビ朝日はAFCと放映権の契約を結び、ワールドカップアジア予選、五輪予選などの試合を独占的に放送する権利を得た。その優良物件を有効活用するために、『やべっちF.C.』が生まれたともいわれている。実際に番組がスタートしたのは、翌年の2002年。日本代表を軸とした番組構成で他局との差別化を進め、テレビ朝日の「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」というコピーとともに番組を盛り上げることができたのも、この契約あってのことだったのだ。

 だがスポーツ関連の放映権料が高騰し続け、ついに今年、テレビ朝日はAFCとの契約更新を断念。AFCは、来年から香港にあるスイスと中国の合弁企業「DDMCフォルティス」と推定総額20億ドル(約2100億円)で8年契約を結んだ。テレビ朝日とAFCの契約は4年間で約170億円程度。今回の契約が8年とはいえ、あまりにも高額すぎてテレビ朝日だけで対応できる額ではなかったのだ。

 その結果、やべっちは、日本代表の試合という優良物件を優先的に使えなくなってしまった。また、スタート時からのスポンサー収入で高額な放映権料を回収するプランも成り立たなくなってしまった。Jリーグや世界のサッカーをメインに構成ができるのではないかという声もあるが、スタートした経緯を考えるとAFCとの契約終了が節目となり、やべっちはその役割を終えたのだろう。


サッカー界の裾野を広げてきた『やべっちF.C.』
 
 18年半続いた『やべっちF.C.』貢献とは、何だろうか。

 試合映像やいろんな企画で選手の顔と名前を世間に広め、その人間性を含めた魅力を披露し、総体的にサッカーファンを増やしたことだろう。今の時代は、ネットで自分の好きなものだけを見る傾向にある。動画の作り手は、視聴率を気にせず、自分の作りたいものだけを作り、配信する。コアな偏食が増え、幕の内が減る。

『やべっちF.C.』の終了は、その方向性が加速している現実を表しているようでもある。だが、サッカーを知らない、興味がなかった層にもその魅力を伝え、サッカー界の裾野を広げてきた幕の内的な『やべっちF.C.』は、今だからこそ逆に大事にすべき番組ではなかっただろうか。

 矢部さんと番組スタッフは、今ここで終わることに残念な思いもあるだろうが、長きにわたり、よくボールを蹴り続けてくれたと思う。

 18年半のサッカー界への貢献度は、まさにMVPに値する。

(「話が終わったらボールを蹴ろう」佐藤俊 = 文)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b251cf44944970c759c239e440913b5af8f0b8bf?page=1 










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