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 ファーストプレーで右足を思い切り振り抜いた。3分後に再び右足を一閃した直後には、そのままホームの等々力陸上競技場のピッチに仰向けになって悔しがった。さらに5分後には3度目の正直とばかりに、今度は左足で優しくボールにタッチ。緩やかな放物線を描かせ、ゴールに吸い込ませた。

 清水エスパルスを5-0で一蹴した29日の明治安田生命J1リーグ第13節。左ひざの前十字じん帯損傷の大けがを乗り越えた川崎フロンターレの大黒柱、39歳のMF中村憲剛が301日ぶりにピッチへ帰還。途中出場からわずか8分後の後半40分に、自ら復活を祝う鮮やかなループ弾を決めた。

「ボールが転がってきた瞬間に、それ(ループシュート)は考えました。とにかく今日をけがなく、無事に終えることだけをずっと考えてきたなかで、まさか得点を取れるとは思わなかった。正直、等々力に神様がいたと感じています。等々力じゃなかったら、こうはならなかったんじゃないか、と」

 エスパルスが見せた一瞬の隙とミスを突いて、J1リーグ戦における16シーズン連続ゴールとなる通算73得点目を決めた。右サイドからMF大島僚太が攻め込むもボールがこぼれ、今シーズン初出場を果たしていたエスパルスのキーパー、大久保択生がキャッチした直後だった。
 3点のリードを奪っていても、フロンターレの選手たちは追加点を目指して前線からプレッシャーをかけにいく。まずはルーキーのMF三笘薫(筑波大卒)が、ペナルティーエリア内で大久保からハンドスローでボールを受けた、DF岡崎慎との間合いを詰めてパスコースを限定する。
 ゴールを正面に見てやや左側にポジションを取っていた憲剛は、自分の目の前にいたMF中村慶太へのパスコースを遮断するために、三笘に連動してプレッシャーをかけた。

「多分ですけど、僕の姿がチラッと見えちゃったので、岡崎選手がパスを出そうとした足にボールを当てちゃったのかな、と。それで自分の前にボールが転がってきたので」

 不意に憲剛の姿を視界にとらえたからか。中村へのパスを思いとどまろうとした岡崎だったが、すでにモーションに入っていたこともあって間に合わない。中途半端な形でのパスミスとなり、無造作に転がるボールへグングンと加速しながら、憲剛は冷静沈着に状況を見極めていた。
「キーパーの大久保選手も岡崎選手の真横ぐらいまで出てきていたので、ここはループを打ったら入るんじゃないか、と。試合を通じてみんなが放ったシュートが、ことごとく相手選手やゴールポストに当たっていたし、僕が入って早々に打ったシュートもそうだったので。相手選手に当たらないようにするにはどうしたらいいか、ということを考えたときにもやっぱりループでした」

 ほんの数秒の間に頭脳をフル回転させ、左足で軽やかにボールへワンタッチ。大久保の頭上を越える芸術的なゴールを決めた憲剛は、ピッチに投入されてからわずか15秒後にいきなりシュートを放っている。ゴール右隅を狙った一撃は味方のFW小林悠に当たったものの、手応えは十分だった。

「一発打って吹っ切れたというか、自分のなかでもスイッチが入ったところがあった。チームメイトたちが3点を取ってくれていたこともあるし、自分も攻撃的な姿勢をもちたかったので」

 自身との交代でベンチへ下がった、ルーキーのMF旗手怜央(順天堂大卒)が前半21分と後半29分に連続ゴール。FWレアンドロ・ダミアンも後半6分にゴールで共演するなど、エスパルスの戦意を半ば奪い去り、気負いなく復帰戦のピッチに立てる状況を作ってくれた仲間たちに感謝した憲剛は、相手ディフェンダーにブロックされたものの、後半35分にも強烈なシュートを放っている。

「今日は待ち望んでくれていたすべての方に、自分がサッカーをする姿を見せたいと思っていました。何だかこの10カ月間が早送りみたいに、自分の頭のなかを巡っていった一日でした」

 昨年11月2日に等々力陸上競技場で行われた、サンフレッチェ広島戦の後半に左ひざが悲鳴をあげた。敵陣の深い位置にまでボールを奪いにいった際に、相手選手と激しく接触した。そう簡単には復帰できないけがだと直感でわかりながら、一夜明けた公式ブログでこんな言葉を綴っている。
「正直、この年齢でこのケガをするのは夢にも思いませんでしたが、あのプレーに後悔はないですし、起きてしまったことにあれこれ言ってももうしょうがないので」

 患部の腫れが引くのを待って、11月22日にじん帯の再腱手術を受けた。全治は約7カ月。順調に進んでいたリハビリは、新型コロナウイルス禍による長期中断に入って間もない3月に暗転する。

「ちょっと負荷が強すぎて痛みが生じて、リハビリのメニューがどんどん削られていったときが一番つらかった。その後に緊急事態宣言が出てクラブハウスにも行けなくなったなかで、左ひざの先行きが見えない時期と、国として、Jリーグとして、そしてフロンターレとして先が見えない時期とがちょうど重なってしまい、いろいろなストレスがあったと思うんですけど」

 ステイホームを強いられた憲剛を鼓舞したのが、最愛の家族の存在だった。夫人の加奈子さん、小学校6年生の長男・龍剛くん、4年生の長女・桂奈ちゃん、そして4歳の次女・里衣那ちゃんから日々かけられた、何気ない言葉の数々に「すごく助けられたところがある」と憲剛は感謝する。

「ひざが痛いと言ってもしょうがないよ、みたいな感じで。いつ(緊急事態宣言が)明けるのかもわからないし、とにかくネガティブにならないようにと、子どもたちも小学校や幼稚園に行けないのに声がけをしてくれたなかで、一家の主である僕がそれじゃダメだろうと思うようになりました」

 チームドクターがオンラインで患部の具合を診てくれれば、トレーナーもウェブを介して自宅でできるリハビリメニューを提示してくれた。憲剛をして「僕を一人にしないように、みんなが支えてくれました」と感謝させた周囲の存在もあり、完治に向けた軌跡は再び右肩上がりへと転じはじめた。

「足踏みしたのは、そのときだけですね。それ以降は楽しくリハビリをやれて、どちらかと言えば周りの方が悲壮感を漂わせていた部分もあって、チームから『ちょっと明るすぎる』と怒られました」
 公式戦再開後は破竹の10連勝をマークしたフロンターレだが、第12節で名古屋グランパスに0-1で今シーズン初黒星を喫すると、ヴィッセル神戸との第13節も旗手のリーグ戦初ゴールでかろうじて引き分けた。快進撃にやや陰りが生じていたなかで、大黒柱の復帰がカンフル剤になった。

 憲剛のゴールの2分後には三笘が今シーズン6点目をゲット。3試合ぶりとなる白星に、大量5ゴールをあげて花を添えた。2位のFC東京に勝ち点で10ポイント差をつけて、首位を快走するフロンターレの中心で笑顔を輝かせる憲剛に、鬼木達監督も思わず目を細めている。

「トレーニングのときからいい状態でしたけど、やっぱりもっているんだなと思いますよね」

 10月には40歳になる大黒柱が満を持して復帰し、リーグ全体で群を抜く41得点を叩き出している選手層がますます厚くなる。ここまでフロンターレをけん引してきた後輩たちに割り込むには、まだまだ時間がかかると前を見すえた憲剛は、ピッチに戻ってきた喜びをあらためてかみしめた。

「サッカーは楽しいと、等々力は最高だとかみしめることができたのが一番嬉しい。一日一日を積み重ねながらここまで来られたけど、ピッチに戻ることがゴールではなく、ピッチでチームに貢献することをスタートラインにしなきゃいけないと強く思ってきた。点を取ったことで次節以降のハードルがちょっと上がっちゃいましたけど、それでもいままで積み重ねてきたものを出せたと思っています」

 2シーズンぶり3度目のリーグ戦制覇へ。憲剛の復帰で「完全体」となったフロンターレが心身ともに力をみなぎらせ、J1戦線をフルスロットルで駆け抜けていこうとしている。
 
(文責・藤江直人/スポーツライター)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4cc524ca5b1ab724e6c6e1ca35caf740e7874bf0?page=1 

 

2020/08/30(日) 
憲剛、お帰り!! 約束通り、首位でお待ちしてました。
やっぱり憲剛がいると中盤での安定感はさらに上がり、
相手のハイプレスもいとも簡単にかわせてた。パスの連動性も流石で、
憲剛が持った瞬間に前線の動き出しは見事だった。特に悠、僚太。

2020/08/30(日) 
ゴールも見事でしたが、いつものように的確にパスを散らして周りを使うケンゴさんをみて、やっぱりこれが川崎Fらしいサッカーだなと思いました。頼もしい14番の帰還は嬉しかったというかほっとしたというか、そんな感じ。終盤宮代君をピッチ脇で「指導」してましたが、一体何を指導してたのか?

2020/08/30(日) 
ワンタッチ、ツータッチでボールを繋ぐ姿はケガ前と遜色ないようにみえました。長く一緒にやってる、大島、小林とは分かり合ってる部分があるんでしょうね。
他の若手選手もケンゴに試合中に教えてもらいながらまた成長したらもっと強くなれる。
これからのフロンターレがまた楽しみです。

2020/08/30(日) 
精神的支柱が戻ってきた。
昨日の試合の主役は3点目で試合を決めた2ゴールの旗手でも良かったのに、途中出場の中村憲剛が主役のように全てを攫ってしまったのは長年の活躍もあって、それだけ大きな存在という証だよな…。

2020/08/30(日)  
憲剛がピッチ脇に立った瞬間から等々力の雰囲気が変わった。
ピッチに入った瞬間からチームの雰囲気も変わった。
居るだけで影響を与えられる数少ない選手の1人。
2位東京とはもう勝点10差がある。
いつもと違う変則的な今年のリーグ戦、このまま川崎が突っ走るかもしれない。

2020/08/30(日) 
得点のきっかけは相手のミスからだとしても、あの場所にいて、あの場所であのシュートを打てることが技術、メンタル面で優れていると感じました。特にあのレベルが高いサッカーに復帰明けで合わせて来るあたりがすごい。努力してるんですね。おめでとうございます!

2020/08/30(日) 
憲剛がいなくなってどうなるかと思ったら、チームも慣れたのか憲剛の無しでも逞しく成長してた。
特に大島は憲剛頼りだった感じからメンタル面で成長したのか責任感というか見ていて頼もしい選手になった。
言い方が悪いが怪我の功名。
試合後に左膝を撫でていたのが印象的だった。

2020/08/30(日) 
安倍さん辞任、コロナ騒動、大統領選挙。大坂なおみ。いろいろ出来事があったのはわかるけど、メディアは全く騒がないね。ここ十年代表や海外組を除くとJリーグナンバーワンMFが靱帯損傷の大怪我をして、辛いリハビリを乗り越えて、復帰一試合でこのゴール。話題性もスター性も全て揃っているのにこの扱い。Jリーグの放映権が既存のメディアにないなどの問題は置いておいて、ここまで無視されるのはおかしい。地上波メディア新聞というのが、私の価値観からは受け入れられない存在になってきてる。

2020/08/30(日) 
定位置だったトップ下が消えてどうなるかなと思っていたけど、さすが憲剛さん。安定感が群を抜いていました。
この状況で憲剛さんが戻ってきたことでさらにフロンターレも勢いが付いていく気がした15分だった!
早く現地で見たい!

2020/08/30(日) 
守田か田中アンカーのインサイド中村、大島は代表の中盤だろ。
そこに脇坂、下田、旗手がいる。
宮代も技術はある。あとはゴールだけ。
マテウスもフィットしてきたし、ポジションに穴がなくなってきたな

2020/08/30(日) 
試合に復帰したゲームを自らのゴールで祝う。
しかも、怪我した"左足"で。
膝に負担をかけない"ループ"で。

あんた、やっぱり、最高だよ

2020/08/30(日) 
もう日本代表は全員川崎でよくね?足りない部分だけ欧州組を起用すれば良い。スタジアムも等々力で

2020/08/30(日) 
今の所でも十分選手層は厚いけど、これでルヴァンカップとの過密日程を見越した中盤のやり繰りはいい意味での悩みになる。

2020/08/30(日) 
岡崎のプレゼントパスは実に見事だった
エスパルスサポーターが富士山の大噴火の如く憤激させた見事なパスだった。

あのパスを見て長谷川健太が岡崎のレンタルバックを取り止めたのは間違いだろう。

2020/08/30(日) 
前十字靭帯断裂して300日で復帰するって普通ありえないけどね。最先端の医療とリハビリ、そして中村選手が強メンタルだからできたこと。
私は1年経っても全力で走るのが痛かったです。

2020/08/30(日) 
コンサドーレのファンだけど中村選手が復活して良かったです、コンサドーレとの対決楽しみにしてます

2020/08/30(日) 
やっぱり長く活躍してる選手は違うよな。
サッカー脳が高すぎる。
次のルヴァンも期待してます!

2020/08/30(日)  
ほんとはファーストタッチが、入るはずだったんだよー
悠にブロックされるというwww

でも、神様がいたからループシュートをプレゼントしてくれたのかな

ケンゴおかえり

2020/08/30(日) 
清水に、今シーズン、ミスしかしない疫病神岡崎がいたから、それだけ。

他のチームには、あれほど酷い選手はいないので、今シーズン唯一のゴールとなるだろう。

2020/08/30(日) 
相変わらずのコメント力。
そして、素晴らしい復帰戦のパフォーマンスでした

2020/08/30(日) 
川崎はプレースタイルも選手もユニも全部かっこいい。

2020/08/30(日) 
おかえりなさい!

おめでとう!

なぜ決めれたのかって理由あるの?

実力と努力と感覚じゃないの。

2020/08/30(日) 
清水が弱いから。
神様がいたとしたら、復帰戦が清水戦だった巡り合わせ。

2020/08/30(日) 
清水は、技術が無いのに繋ごうなんで無理。

点数をプレゼントし過ぎで勝てるわけない。

2020/08/30(日) 
観てないけど清水のザル守備が一番の要因でしょうか。

2020/08/30(日) 
怪我に気をつけてサッカーしてください。応援しております。

2020/08/30(日) 
清水は予想通り、格好のゴールラッシュだったね。

2020/08/30(日) 
チームにこういう選手がいるのは羨ましい

2020/08/30(日) 
監督の言う通り。
持ってるね!

2020/08/30(日)  
清水は降格があるんなら、筆頭候補だったな。











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