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娯楽性を重要視。まずはお詫びからスタート
 
 なんと難しいチャレンジだったか。

 正直言って、一番悩んだのは外国籍選手3人だった。レオナルド、ジョルジーニョ、マルキーニョス、ビスマルク、ラモン・ディアス、ピエール・リトバルスキ、サルバトーレ・スキラッチ、アンドレアス・イニエスタなどなど、錚々たる面々から誰を選べばいいのか頭を抱えた。日本人選手も同様である。カズ(三浦知良)、柱谷哲二、ラモス瑠偉、前園真聖、藤田俊哉、中澤佑二、楢崎正剛、中村俊輔、中村憲剛、遠藤保仁、阿部勇樹らを入れるかどうかで最後まで悩んだが、断念するに至ったのだ。

 こうした難易度の高いセレクションに臨むにあたっては、まずお詫びからスタートしなければならない! ご容赦願いたい。

 今回の選考で私がこだわったのは、娯楽性に富んだチームを完成させること。フットボールにはやはり、観ていてドキドキするような感覚が欠かせないからだ。ファンを確実に楽しませることのできるJリーグ・ベスト11が理想形。一方でそのエンターテインメントを実現させるために、チームを安定させ、前線のインスピレーションを促進するような存在も必要だろう。いわば監督になった気分で、そうしたところに留意してみた。

 まずは2トップから行ってみよう。阻止不可能だったパトリック・エムボマは選ばれて然り。サイズがあり、しなやかで、鋭く、なおかつテクニックもずば抜けていた。1997年はエムボマのベストシーズン。Jクラブの守備陣は彼の前になす術なしで、どんな対策を練っても無駄だった。人としても温かくフレンドリーで陽気な人気者。フットボールへの愛情に溢れ、そうしたスタンスがプレーのすべてを輝かせていた。

 パートナーは日本のトップムードメーカー、中山雅史とした。生粋のストライカーであり、可能性が低くとも走ることを止めず、ボールを決して見失わない男だ。エムボマのような身体能力は有していなかったが(誰も持ち合わせていないが)、最終的には確実にゴールを射抜いてみせた。この2トップを止めるのは至難の業だろう。

 まさに日本のジョージ・ベストだったのが若き日の前園。彼をここに入れられなかったのは悔やまれるが、今回はサブに収まってもらうほかない。


破壊的な攻撃を支えるふたりの“完璧主義者”
 
 エムボマと中山の得点力を引き出す攻撃的MFは誰か。私は彼らに、敵守備陣を広げるためのスキルとスリル、ビジョンを求めた。そしてもちろんゴールセンスもだ。

 1998年のデビュー以降、小野伸二は驚異的なプレーを続けた。十代にしてまるでベテラン選手のような振る舞いで、尋常ではない技巧で周囲の選手たちを自在に操った。純粋なテクニックだけで言えば、彼に並び立つ日本人選手を私は知らない(久保建英には可能性があるかもしれない)。全盛時はまさにマジシャンだった。

 ドラガン・ストイコビッチの選出に異論はないはずだ。ピッチ上のすべてを見透かし、両手を縛られて目隠しされても、平然とプレーしてみせただろう。私が観たなかでもっとも情熱的でエクサイティングな選手のひとりである。“ピクシー”のニックネームで親しまれたが、その由来はさておき、まさに神話的で、ときに悪魔的で、キュートで、機敏で、いたずら好きな妖精だった。

 ファンタジー溢れる2列目のコンビは絶対に外せない。そんな彼らをバックアップするのが、ドゥンガと中田英寿だ。どちらも完璧主義者で、粘り強く、常に頭の中がクール。ゲームを見極める目に優れ、彼らのフィジカル、ビジョン、スキルは攻守両面で威力を発揮し、とりわけ波状攻撃を巧みに促進する。ミスはほぼ犯さない。いわゆる万能型で、ワールドカップでも実績を残したコンビは高次元の補完性を披露してくれるだろう。

 ポジション別で言えば、サイドバックが最大の難関だった。レオナルドとジョルジーニョを入れたかったのだ! 小野とレオナルドの左サイド、ストイコビッチとジョルジーニョの右サイドなんて、想像するだけでワクワクしないか? だが、編集部からのオーダーは「外国籍枠は3人まで」。こればかりはしょうがない。泣く泣く選外とした。

 もうひとつの鹿島アントラーズの名セットである、右の名良橋晃と左の相馬直樹にしても良かったが、ここは現日本代表の長友佑都と酒井宏樹を選ばせてもらった。

 長友は弛まぬ努力で身体能力を飛躍的に進化させ、現在の日本フットボールにおいてもっとも“ズル賢さ”を備えた選手のひとり。酒井は日本人サイドバックのなかで最上級のフィジカルを有し、攻撃面での魅力に溢れる。彼らふたりが攻守で絶妙に連動し、チームの娯楽性をよりいっそう高めるだろう。


パンサーのように飛び跳ねた“魅せるGK”
 
 世代の異なる選手同士を比較するのは得てして困難だが、守備センターに関しては、迷わず井原正巳の名を挙げたい。Jリーグ史上最高のDFだと考えている。図抜けたフィジカルと集中力、そして対人プレーの圧倒的な強さ。絶対的な信頼を寄せられる名手だ。

 一方で、センターバックの相棒には破天荒な田中マルクス闘莉王をチョイスしたい。予測不能な攻め上がりで観衆の度肝を抜き、まるでフォワードのように相手DFを戦慄させる彼は、常に私のお気に入りだった。ピッチ外では愛嬌たっぷりに、ピッチ内ではまさに鬼神のごとく仲間を叱咤激励する。実にユニークな存在だったと思う。

 最後にゴールキーパーだが、こちらもエンターテインメイト性を重視した。となれば、川口能活しかいないだろう。パンサーのように飛び跳ね、守備陣を絶えず大声を張り上げて鼓舞し、そして異常なほどのポジティブマインドでチームを奮い立たせる。川口は、もっとも安定感がある日本人GKではなかったかもしれない。だが彼はフットボールという“ショー”にいつも、ベストでスペシャルななにかをもたらしてくれた。

 マイベストプレーヤーはピクシーとしておこう。度重なる怪我から完全復活を遂げた真のワールドクラスを、日本のファンは間近で見ることができた。なんという幸運だろうか!

 アーセン・ヴェンゲルとで悩んだが、監督はオズワルド・オリヴェイラに決めた。鹿島の栄光を盤石のものとした、Jリーグ史に燦然と輝く指揮官である。

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著者プロフィール
マイケル・プラストウ/1959年、英国のサセックス州出身。80年に初来日。91年に英国の老舗サッカー専門誌『ワールドサッカー』の日本担当となり、現在に至る。日本代表やJリーグのみならず、アジアカップやACLも精力的に取材し、アジアを幅広くカバー。常に第一線で活躍してきた名物記者だ。ケンブリッジ大学卒。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200504-00010004-sdigestw-socc

 

1 2020/05/04(月)
海外の記者でこれほどまでにJに精通されている方は他にあまりいない。
このような方が海外にJリーグを発信されていることに感謝したい。

2020/05/04(月)
ベストイレブンでもナインでもフィフティーンでも、ベストを選ぶのは難しいですが、このように娯楽性やドキドキさせるとかの補助線を引いて選ぶしかないでしょう。そういう意味で納得性は高い選出だと思います。

2020/05/04(月)
この企画の、小野選手出現率めっちゃ高い気がする。いつか、この企画で選ばれた回数が多い人を集めた『ベスト11のベスト11』もやって欲しい。

2020/05/04(月)
選手に対する表現力が豊かで素晴らしいです。
中山・小野の件しかり、選出してない前園にもリスペクト感が凄い。
名良橋相馬の鹿島コンビとジョルジーニョレオナルドのブラジルコンビが書いてある所も好きですね。

2020/05/04(月) 
あえてたらればを言うと、アトランタ五輪以降も前園が活躍し続けていたら、日韓以降も名波が代表に選ばれ続けていたら、チームの雰囲気が悪くまとまりきれず、中田が孤立したドイツW杯の時に前園は32歳、名波33歳だったから、中田の理解者としてチームにいたら全く違う結果になっていたんじゃないかな。特に名波なんかは兄貴分でリーダーシップがあるから、いてほしかった。

2020/05/04(月)
井原を選んでくれて嬉しい。
案外、日本人選者が選んでないんだよね。
この方は、Jリーグを最初からしっかり見てくれているんだな。

2020/05/04(月)
この記者本当にJリーグの事をよく知っている上でチョイスしている事がよくわかる。
創成期から現代までの選手が、日本人でも納得できる選手たち。
そして選出理由も、迷い方もJリーグマニアと言っていい位の人だと思う。

2020/05/04(月)
娯楽性に富んだという意味ではすごく納得。
特に中盤は観ていてワクワクさせてくれそうな組み合わせ。
伸二の評価の高さも嬉しいね。

2020/05/04(月)
ベンゲル×ストイコビッチを日本で観られたのは奇跡だ。未だに当時のストイコビッチを超えるプレイヤーを日本で目にする事はない。
ベンゲル監督の下、弱小グランパスを鼓舞し、強豪チームに引き上げた功績も素晴らしい。
見るものを惹きつけ、魅了し続けたプレーは20年以上経った今でも色褪せる事はない。
もちろん、私にとってJ史上NO.1フットボーラーである。

10 2020/05/04(月)
今度は外国籍の選手だけでベスト11組んで見て欲しいな。ビスマルクが大好きだっただけに入れないのは辛い。在籍年数の縛りがないならFWは圧倒的にビジャが好き。

11 2020/05/04(月)
大物外国人は数多来日しているけど、使い物になったのは少数。エムボマ、ピクシー、ドゥンガは確かにベストチョイスかも。ジーコやリネカーを入れないところが忖度無しで素晴らしい!

12 2020/05/04(月)
なかなかピクシーを選ぶ人はいなかったが、間違いなく世界レベルの技を日本でたくさん見せてくれたピクシーは外せないと思う。

13 2020/05/04(月)
どの人のベストイレブンを見ても、小野は別格と評価されていることに感動する。
レッズサポとして、それをあんなに間近でれずっと見てられたのだから、ホントに幸せだった!

14 2020/05/04(月)
謝るところから入るのが、妙に日本人臭い。この手の他の外国人の人選でも闘争心や体の強い、戦えるプレイヤーを選んでる気がする。そこは俺も同感。世界レベルで戦っていく場合はそこが非常に大切だと感じる。テクニックがあるけど大舞台で急に大人しくなる選手を見るとやるせなくなる。

15 2020/05/04(月) 
こういうのは個人の感性で選べばいいからね。
難しいなら、もう1チーム選んで戦わせればいい!

16 2020/05/04(月) 
代表どうしが対戦したら今の日本代表のほうが強いかも知れないが、2000年前後のほうが個性的で面白い。

17 2020/05/04(月)
今考えると小野伸二の守備でサイドやボランチは怖い

当時は3バックだったので目立たなかったが
小野伸二や香川真司などのタイプは結構使いづらい

18 2020/05/04(月)
概ね異論はない選手選択です。
ひとつだけあえて難を言うなら、Jリーグのベストイレブンなら、若い時にちょっとだけ在籍していた当時のヒデよりも憲剛か遠藤かな。

19 2020/05/04(月) 
中田はJリーガーのイメージがない。
ここは遠藤で良かったんじゃないだろうか。

外国人枠三人が結構きついね。

20 2020/05/04(月)
シンジオノを選ぶ人の多いことだ。

あとはキーパー川口選手、DF闘莉王選ぶ人も多いな。

21 2020/05/04(月)
よく考えられた内容で、概ね賛成。

小野や中田が全盛期だった2006年の惨敗がかえすがえすも悔やまれる。

前園もあのまま延びていれば。

22 2020/05/04(月)
川口か楢崎かで分かれるよなぁ。
地味だけど安定でいうなら楢崎、この記者も言ってるショーのようでワクワクするのは川口。

23 2020/05/04(月)
最高ですね!ほぼほぼ同じですが、エムボマの所に高原えお入れて欲しかった。中山さんとのコンビネーションも抜群だし単独でも点を獲れる、小野との相性もいいしね。

24 2020/05/04(月)
前園は本当に日本の宝だった
だがヴェルディに移籍したころからあっという間に転落して、
輝きが戻ることは無かった
CM出たりとか、芸能事務所と契約したんだっけ?
そんなことあったせいか、1,2年で代表から消えた

25 2020/05/04(月)
中田は日本の伝説だし、長友も歴代で一番世界で活躍したサイドバックだけど、Jの歴代に入るかというと、違うと思う。
そのポジションは、遠藤と相馬だろう。

26 2020/05/04(月)
やはり人それぞれ選出に個性や思い入れがでるなぁ。しかし、ベストイレブンはほんとに難しい(笑)そして選んでいる時がほんとにたのしい( 〃▽〃)

27 2020/05/04(月)
Jの創設当初から現在まで満遍なく選んでるとこが通ですね。(どちらかって言うと90年代~00年代寄りかな)
「エムボマのような身体能力は有していなかったが(誰も持ち合わせていないが)」ってのは誰もが納得(笑)

28 2020/05/04(月)
思い込みが激しいのかもしれないが、小野伸二のセンス、テクニック(ボールコンタクト)は図抜けている。自分はすでにアラ還のオッサンだが、自分の見た中で小野より上手いと言える選手はマラドーナしか知らない。

29 2020/05/04(月)
前園さんはサッカー選手として大成功していたら、今のポジションはなかっただろうな・・・

30 2020/05/04(月)
この外国人記者さんの知識は凄いね。
この企画の中で1番の好みスタメン。
あとは井原さんに替わってボンバー中澤さん。
川口さんに替わって楢崎さんかな。











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