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今年1月、満を持して初の海外挑戦を果たした昌子源(しょうじ・げん/フランス・トゥールーズ)。移籍直後からレギュラーを獲得し、毎試合フル出場を続ける日本代表CBは先日、W杯でフランス代表を優勝に導いた"怪童"ムバッペと対峙した。

【写真】コロンビア戦での昌子選手

鹿島アントラーズの番記者として、デビュー当時から追いかけ続ける田中滋氏が現地で直撃!

■春爛漫のトゥールーズで苦悩する昌子

南欧に位置するフランスのトゥールーズは、赤レンガの美しい街並みが特徴だ。日本では「令和」という新たな元号が発表された4月1日。街路樹は柔らかな緑に覆われ、この街にも春が来たことを告げていた。

しかし、そんな季節の変化に取り残されている男がいた。

「どうしたらいいんやろ」

今年になってこの街に来た昌子源は悩んでいた。

この日の対戦相手は、フランスで最も人気のあるクラブのひとつであるパリ・サンジェルマン。普段は空席が目立つトゥールーズのスタジアムにも、多くの観客が詰めかけた。それを見越したクラブは、チケット料金を倍額以上に設定していたが、それでも客足が遠のくことはなかった。

観客のお目当ては、フランス代表のエースを務める快足FWムバッペ。昌子の役目はその世界的ストライカーを抑えることだった。

ところが、最初のマッチアップで突破を許してしまう。昌子は相手のシザーズにバランスを崩され、膝と手をピッチに突いた。幸いシュートは外れたものの、1対1の勝負は相手の完勝だった。

「シザーズからの縦突破はめっちゃ速かった。今シザーズした?ってくらい、ササッときた。一瞬バランスを崩されるだけで、こうも無抵抗になるのかと知りました」

昌子は1対1の対応に自信を持っていた。Jリーグでは背後に広大なスペースがあっても抜かれる恐れはまったくなかった。スピードもパワーも昌子のほうが上であり、専門家が舌を巻くほど柔らかい下半身でボールをからめとる。

ロシアW杯でも唯一のJリーガーとしてピッチに立ち続けた。しかし、フランスではまったく歯が立たなかった。

「日本では絶対に経験できないこのレベルを知ることが海外に来た最大の理由です。リヨンのとき(3月4日)もデンベレにぶっちぎられて5失点しました。でも次の週の試合に向けて切り替える。自信をなくしたらもう終わりです」

自信をなくせば相手FWが怖くなる。相手を怖がるCBに試合に出る資格はない。ただ、タックルしても「岩にぶつかりに行くみたいでびくともしない」相手から、どうやって守ればいいのかは簡単には見えてこなかった。

■中途半端な自分への自覚とSNSでの批判

これまでもふとした瞬間、リヨン戦でデンベレに抜かれた場面が頭をよぎることがあった。これからはムバッペに抜かれた場面も浮かぶだろう。

「今はサッカー選手として超中途半端な感じがする。やっぱりこっちでもしっかり結果を残したいし、自信を失いたくない。でも、ちょっとずつ失ってるのを自分でも感じるんですよ。それを相談できる相手も今はいないから、暇さえあればなんか考える」

自分でもいいパフォーマンスが出せていないことはわかっている。期待が大きかった反動か、昌子のSNSには多くの批判の声が寄せられた。

当然、90分のなかで見れば、昌子がムバッペからボールを奪う場面は何度もあった。少し離れた位置からターンする瞬間にボールをとらえる対応は見事だった。

しかし、最終的にはムバッペが勝負を制する。クロスに対して風のように走り込む動きを繰り返していた"怪童"は、一転してゴール前で立ち止まると、ワントラップから狙い澄ましたシュートをゴール右に流し込んだ。

「ムバッペにぶっちぎられ、リヨンのときもデンベレにぶっちぎられて、言い訳とかないから」

批評や批判に対して気持ちはいら立った。しかし、昌子にできるのは、ふつふつと反骨心をたぎらせることだけ。決してエリートではない昌子にとって、反骨心こそが原動力だった。

ガンバ大阪の下部組織では宇佐美貴史らきら星のごとき才能に出会い、FWとしての能力のなさを痛感。一時はサッカーから足が遠のいた。しかし、高校時代にもう一度サッカーと向き合い、鹿島アントラーズに入団する。

鹿島で背番号3を背負うようになると前任の岩政大樹と比較され、コンビを組んだ植田直通とも比較された。ちょっとミスをすれば、「今のおまえなら植田のほうがいいぞ」と言われたことも一度や二度ではなかった。

その都度、悔しさをバネに成長を遂げてきたが、どうしても納得できないことがひとつだけあった。
「どうして植田と俺を比べるんですかね。ひとりのあかんところを引き出すのが相方の仕事。互いの長所を引き出して短所を隠すのがCBの仕事やのに、なんでここを天秤(てんびん)にかけるんやろ」

■吉田や冨安が持っていて自分にはないもの

3月、久しぶりに日本代表に復帰した昌子のパフォーマンスは決してよくなかった。コロンビア戦では先発としてピッチに立ったが、コンビを組んだ冨安健洋のほうがずっと安定していた。

「日本人の特性として誰かと誰かを比べるのがすごい好きなんで、今は間違いなく俺とトミ(冨安)、(吉田)麻也くんを比べてるんだろうなと思う。現段階で言ったら、トミのほうがいいプレーをしているし、麻也くんだってずっとプレミアでやっている。

『吉田と冨安のほうがいい』と言われてると思うけど、そんなの全然気にしなくなりました。自分のよさは自分がいちばんよくわかっている。そういう強い気持ちはずっと持っていたい」

批判があることは否定しない。しかし、今そこに引きずられると自信を失うだけでなく、自分自身をも見失いかねなかった。

昌子の身長は182cm。日本人のなかでは小さくないがトゥールーズにいると周りに埋もれてしまう。一方、吉田麻也は189cmあり、冨安健洋も187cmある。ポジションは同じCBだが、前提となる条件がまったく違う。昌子はふたりのことを「うらやましい。やっぱりいいなと思う」と言った。

「この身長、この体形でこっちに来たのは一種の賭けだと思う」

欧州にいれば小さな選手に入る。年齢的にももう若くはない。子供も生まれたばかりだった。それでも海外挑戦へと突き動かしたのは、外国人選手としのぎを削る経験が欲しかったからだ。

デンベレ、ムバッペ相手に手も足も出なかった昌子にとって、そうした経験は初めてではない。実は評価を高めたロシアW杯でも同じような感覚を味わっていた。

「W杯ではマスコミの皆さんからベルギーのルカク(マンチェスター・ユナイテッド)のことを聞かれたけど、僕のなかではセネガルのニヤング(レンヌ)のほうが衝撃的だった。でかいし、強いし、速い。びくともしなかった」

ニヤングとマッチアップしたときには、なるべく飛び込まずに我慢する守備を続けたが、それだけでは止めることができずズルズルと下がっている。そのやり方をフランスに来ても続けていたが、それだけでは守り切れないことに昌子は気づいていた。

■欧州と日本の違い。延長線上ではなく並行にある存在

ムバッペとのマッチアップでは、速い選手への対応のセオリーとして距離を取った。

「ムバッペ相手に縦をクソ空けました(笑)。絶対に中に行かしたらダメと思って。『あんなに縦空ける?』っていうくらい」

どこかのタイミングでスライディングに行こうと間合いを計ったが飛び込めない。逆に一発のフェイントでバランスを崩された。

「日本にいたときにはセルヒオ・ラモス(スペイン代表、レアル・マドリー)とかピケ(スペイン代表、バルセロナ)とか、世界トップ10くらいに入るCBのプレーに納得がいってなかったんですよ。すぐスライディングするし、言うたら軽い。

でも、こっちに来てわかりました。やっぱり彼らはすごい。それこそ、ムバッペ、ネイマール(ブラジル代表、パリ・サンジェルマン)、メッシ(アルゼンチン代表、バルセロナ)クラスの選手と毎試合やってるから、正対のディフェンスだと、いないのと同じ。それだけじゃ守りれない」

フランスに来てわかったことがあった。スライディングでかわされると、日本では「軽い」と言われたが、こちらでは抜いた選手が「うまい」と評価されるのだ。

「フランスに来る前は、日本の延長線上に海外があると思っていました。でも、こっちはまったく違う。完全に別の世界。どっちが上とか下じゃない。横にある感じ」

これは新たな挑戦なのだ。ひと昔前であればファビオ・カンナバーロ(元イタリア代表)やカルレス・プジョル(元スペイン代表)など、昌子よりも小さいCBが欧州チャンピオンズリーグの覇権を争うチームで活躍していた。

しかし近年、選手の大型化は顕著に進んでいる。そのなかで昌子が確かな足跡を海外で残すことができれば、ほかの日本人CBにも新たな道が拓(ひら)ける。

「見本がないんですよね。でも、それをやっていかないといけない世界に来た」

誰も歩いたことがない道を昌子は歩こうとしている。

●昌子源(しょうじ・げん)1992年12月11日生まれ、兵庫県神戸市出身。2011年に鹿島アントラーズへ入団。昨年6月のロシアW杯ではレギュラーで唯一のJリーガーとして活躍し、国内外で評価を高めた。今年1月に満を持してフランス1部・トゥールーズへ移籍

取材・文/田中 滋 写真/アフロ
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190515-01088590-playboyz-socc&p=1



1 2019/05/16(木)
昌子選手の様子がよく伝わる、良記事。
頑張れ昌子!

2 2019/05/16(木)
昌子はこの壁にぶち当たる為に海外に来たみたいやしこれでいいやろ。
それに彼なら確実に乗り越えてもっとスゴい選手になってくれるはずや。
批判もあると思うけどより厳しい環境に身を置いて頑張る彼は応援したくなる。

3 2019/05/16(木)
昌子のこの分析力はスゴイと思う。
まったくもって、その通りで酒井宏もまったく同じではないけど、ニュアンスが似てる言い方をしてる。
『当初はいかに抜かせないかと自問自答して考えてたけど、それ以前にいかに前を向かせないか、ボールをもらおうとしてる相手にいかに早くプレスをかけて前をむかせないかに重点を置く。スライディングもその方法の1つ。前を向かせると、このレベルになると相手の方が確実に有利だから』
この言葉と昌子の言う客観的に見てた時のラモスやピケ達のプレーに繋がるんだと思う。世界最高峰のDF達もいかに早くボールを刈れるか、相手を自由にさせなくできるかになるんだと思う。ラモスとかは相手より確実に早く動くのがよく分かる。スライディングの使い方の賛否はあるけど、見極めはスゴイと思う。

5 2019/05/16(木)
運が良かったとは言っても、毎試合リーグ・アンで試合に出られてるのは凄いと思う。
通用しない部分も多くあるだろうし、ここまで分析をして、戦おうとする姿勢はとても尊敬出来る。
代表は確かに今は吉田と冨安がファーストチョイスに近いのは事実だと思うけど、昌子が代表レベルなのも事実。
CB争いは激化してきてるけど、頑張って欲しい。

6 2019/05/16(木)
センターバックやディフェンスで
悩んでいる人は必見の記事。
ベルギーで活躍した人が、これだけ自分を追い込んで苦しんでいる。鹿島で数年やることだって出来たのに。んーチャレンジというよりは
自分を信じる気持ちが強いんだと思う。上手くいってもいかなくても、全てのことが後々プラスに働く、そう信じているように感じました。がんばれ!というより自分も頑張らないと と反省しました。

7 2019/05/16(木)
日本人はどうしてもフィジカル的に欧米より劣ってしまいますからね。サイドの選手ならMF、DFの連携で奪ったりスペースを消すことが出来るでしょうがCBはどうしても一対一の局面が多くなりますからね。
個での勝負でフィジカル的にも劣るならクレバーな対応で頭脳的な守備をしていくしかないでしょう。特に4バック3バックを取り入れてるクラブなら尚更ですね。
昌子選手の分析力は素晴らしいですし、アジリティの高さを活かして頭脳派CBとして成長してもらいたいです。

9 2019/05/16(木)
海外に行ったから成長するをじゃなくて、海外での経験を糧に成長していけるかもしれない、て事だよな
海外でたからと行って勝手に上手くなるわけでもないし、個人を見つめ直す地味で過酷な作業なんだろうね
日本の延長線上ではなく横にある感じってのが経験した人間しかわからない、見てる我々ではなかなか実感しにくい部分でそれがわかりやすく書いてある良い記事だと思う

10 2019/05/16(木)
結局、最後は自分との戦いなんだろうな。特にチャレンジーは、孤独と戦いながら、自分を信じきることでしかないんだろうね。
別の人だが宇佐美選手も、これに懲りず再々チャレンジをしてほしいな。
選手としての大成もあるけど、
同時にアスリートは生き方を示してくれる応援の仕方があるなと思うね。
例えばカズ選手とか。
11 2019/05/16(木)

海の向こうでたくさん学べる良い機会なので、さらに成長してほしい

12 2019/05/16(木)
日本は決定力不足をよく言われるけど、DFのボール奪取も課題だと思う。
記事の通り、自陣ゴール前では、相手のボールホルダーに対して
距離を取って正対してシュートコースを消す守備が多いけど、
それでは結局能力の高い相手だとチャンスを与えるだけ。
日本ではFWでもDFでも少年サッカーの指導者の問題も大きいと思う。

14 2019/05/16(木)
壁に当たるたびに成長するって事は影での努力や研究、分析は凄いんだろうな。吉田や冨安にあって昌子に無いものも有るかも知れないが、昌子にあって吉田や冨安に無いものもたくさんある。その最たるものはベルギー戦での最後のカウンターの悔しさ。それを忘れなければまだまだ成長出来るだろうしフランスでも代表でもやって行けると思う。頑張れ昌子っ!!

16 2019/05/16(木)
心が折れそうになることもあるだろう。
でも、この壁を乗り越えたら絶対化ける!
自分を信じて怪我に気を付けて頑張ってください。
応援しています。

18 2019/05/16(木)
昌子は自身にダメ出ししてるけど、外国人助っ人としての監督からの期待に応えられてなければ使ってもらえないはず。スタメンキープできてるってことは通用してることの方が多いということ。
デンベレやムパッペにやられない、つまり試合で何もさせないっていうのはかなり高い目標だと思う。それこそラモスやピケレベルのね。

19 2019/05/16(木)
世界トップのDFってスライディングがクッソ上手いよな。やられる時は清々しい程抜かれる事もあるけど。
リトリートするか、タックルで潰すか、そもそもボールを持たれる前にカットに行くか、タイミングが全然違うのにコンマ数秒ずれると抜かれるから一瞬の判断力、いや、決断力が必要。迷いはタイミングのずれを生む。

20 2019/05/16(木)
昌子の挑戦にはロマンが有る、そして日本人の永遠のテーマである体格の壁をどう超えるかという大きなテーマが有る。昌子の後に道が出来るようなキャリアになる事を願います。

23 2019/05/16(木)
日本ではDFはコースを切ったり抜かれない事を前提に守備をするが海外では奪う守備を求められる。

24 2019/05/16(木)
昌司は言いたい事を色々な表現で伝えてくれるので記事を見るのが面白い。サッカーはゴールに近いFWやMFが注目を浴びがちだけどDFにはこういう世界があるのかと新たな発見がある。

25 2019/05/16(木)
腐らずに結果だけを追い求めてくれ。そうすれば自然と代表も定着するだろうし、クラブでもいい結果が残せるよ

27 2019/05/16(木)
良い記事でした
頑張って昌子
応援してる
( ̄ー ̄ゞ-☆

28 2019/05/16(木)
早い段階で昌子選手を追いかけてただけあって,非常に分かりやすくて良い記事でした!昌子選手の葛藤が述べられていますが,リーグアンで出続けていることは,普通に凄い!本当に,頑張って欲しい!!

31 2019/05/16(木)
>どっちが上とか下じゃない
ここまで記事読んだ限りじゃ、全然そういう感覚を共有できなかった。欧州はJリーグの遥か上にありすぎて、代表クラスの日本人選手の成長にとって、Jリーグとはむしろ足枷になっているのだとしか思えなかった。
今後はJリーグを経ずに、欧州へと選手を送り出す筋道が必要になってくると思う。
 
32 2019/05/16(木)
日本のDFが主役になる日も近いと思いました。
DFの強い日本代表はとても楽しみ。
昌子選手がんばってください。

33 2019/05/16(木)
経験からの努力に勝るものはないんですね。

35 2019/05/16(木)
昌子がいないと日本代表のCBは、ままならないのが現実。富安を発掘できたのは大きな功績だが、昌子の成長を期待するしかない。

37 2019/05/16(木)
昌子も凡人ではなく、日本人としてはとてもサッカーの上手い人なのだからさらに成長してぜひ世界でも上手い人になって欲しいですね。
頑張って!

38 2019/05/16(木)
アジアじゃ経験できない。
この経験って次にいきますよ。
吉田も年齢を重ねレベルが落ちるだろうし
海外挑戦する若手は、
大歓迎

40 2019/05/16(木)
確かにカンナバーロとプジョルは凄かったなぁ!昌子もあのレベルになることを期待してる!
 
42 2019/05/16(木)
見本はないと言うがカンナバーロやプジョルがいるだろう。彼らも上背が大きいわけではなかったが強烈なフィジカルは持っていた。昌子はまだ細すぎる。筋骨隆々にあと一年でならないとおそい。岡崎もプレミア行って一気に体を太くしたし、フィジカルでの成長は必要。

43 2019/05/16(木)
昌子も凄いけど、こういう記事を書いてくれる記者が素晴らしい。
過去のコメントの整理や継続的な取材、さらに、取材に基づく見解も的確。
読んでいてとても納得できて、想いの伝わる記事でした。

44 2019/05/16(木)
あのワールドカップで1番忘れられないシーンが昌子が膝をつき悔し泣きしながらピッチ叩いてるところ。
海外で強くなって帰ってきてリベンジして欲しい。












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